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「限定正社員」とは|正社員との違いやメリット・デメリットを厚生労働省の調査を基に再確認しよう

企業は優秀な人材の確保や定着を望んでいます。
ところが、そのために従業員を非正規雇用から正社員に転換しようとしたとき、安定した雇用を望みながらもそれに応えられない従業員もいます。様々な事情を抱え、フルタイムで働くのは厳しい、転勤はできないという従業員もいるでしょう。
そこで、注目されているのが「限定正社員」。
労使双方にとって望ましい働き方・雇用といわれる「限定正社員」についてわかりやすく解説します。

目次

限定正社員とは

限定正社員のメリットとデメリット

導入のシミュレーション

おわりに

限定正社員とは

~正社員との違い~ *1
まず、限定正社員とはどのような働き方なのか、正社員との違いを押さえておきましょう。
一般的に正社員とは、以下のような働き方・雇用を指します *1:p.2。

① 労働契約の期間の定めがない
② 所定労働時間がフルタイムである
③ 直接雇用である

それに対して限定正社員は、配置転換や転勤、仕事内容や勤務時間などの範囲が限定されている正社員のことで、以下のような例が挙げられます。

・全国転勤のない営業職
・限定された店舗で働く販売スタッフ
・ディーラーなど、特定の職務のスペシャリスト
・短時間勤務(1日6時間程度)の事務職

限定正社員のうち、最近よく聞かれるようになった「エリア限定職」とは、決められたエリアで働くことを前提とした職種です *2。
これは基本的に転居や転勤がないという条件で正規雇用される制度で、呼び方は「地域限定職」や「エリア総合職」「特定総合職」「特定職」「準総合職」と様々です。

~限定正社員が注目される背景~
限定正社員の導入が進んでいる背景には、ワーク・ライフ・バランスや働き方の多様化、女性の社会進出が謳われる現在、優秀な人材を確保・活用したいと考える企業が多いという状況があります(図1)

図1 多様な正社員の制度を設けている、設けたいと考えている企業の目的
出典:*1 厚生労働省「勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて」 p.2
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/file/01-270227.pdf

この図をみると、「優秀な人材を確保するため」や「従業員の定着を図るため」「仕事と育児や介護の両立(ワーク・ライフ・バランス)支援のため」という目的の割合が高いことがわかります。

また、正規雇用と非正規雇用という働き方の二極化を緩和しようとする狙いもあり、これらが相まって、労使双方にとって望ましい多元的な働き方を実現するといわれています *1:p.1。

~導入割合と導入が進んでいる分野~
厚生労働省の行った企業アンケート調査によると、限定正社員を導入している企業は全体の約5割を占めます。
そのうち、 職種限定区分が9割、勤務地限定区分が4割、 労働時間限定区分が1~2割で、これらを複数組み合わせて、例えば、「職種と勤務地を同時に限定する正社員」を設けている企業もあります *3:p.1。

先ほどみた「エリア限定職」は、以下のような企業・分野で導入が進んでいます *2。

・全国各地に支社・支店を持つ大手企業
・銀行、証券会社、保険会社などの金融業界
・建設業やメーカー・小売業

 

限定正社員のメリットとデメリット

では、限定正社員にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

~メリット~
まず、メリットから考えてみましょう *1:p.3。
企業側のメリットは、大きく分けて以下の4点です。

・優秀な人材の確保・定着
・多様な人材の活用
・技能の蓄積・承継
・地域に根ざした事業展開

次に、労働側のメリットも押さえておきましょう。

・ワーク・ライフ・バランスの実現
・雇用の安定・処遇の改善
・キャリア形成
・キャリア・アップの実現

従業員の立場から考えてみましょう。
ライフステージによって人生・生活の優先事項は変化していきますから、仕事と私生活との比重をそのときどきで調整しながら取り組める限定正社員に魅力を感じる人は多いでしょう。
例えば、その是非はともかく、育児や介護を担うことが多い女性には生活を最優先しなければならない時期があります。
そのようなとき、限定正社員として働くことができれば、勤務地や残業時間をコントロールできるようになり、ワーク・ ライフ・バランスの実現が可能となります。
非正規ではない安定した雇用のもとで、自身の能力を発揮することができるようになりますから、モチベーションも高まるでしょう。
その結果、キャリア形成を見据えたスキルアップが可能になりますし、特定の職務に継続的に取り組むことによって、スペシャリストとしてのキャリア・アップも可能となります。

企業側からみても、限定正社員を導入すれば、家庭の事情で転勤やフルタイム勤務が困難なため辞めざるを得ない、優秀な従業員の離職を防止することができます。
また、地元に定着した就業を希望する優秀な人材を呼び込むこともできます。

このように、勤務地や職務が限定された多様な正社員の雇用は、労働力の安定的な確保や人材の活用を促し、企業に必要な人材の育成、技能の蓄積・承継を可能とします。
また、地域限定の正社員を雇えば、地域のニーズに合った地域密着型のサービスを提供することができるため、地元の顧客確保にも有益です。

このように、限定正社員は企業側にも従業員側にも多くのメリットをもたらす雇用形態であり働き方なのです。

~デメリット~
次に限定正社員のデメリットをみていきましょう。

厚生労働省の資料によると、デメリットとして、まず挙げられているのは、以下の3点です *3:p.10。

・いわゆる正社員と多様な形態による正社員間の業務内容や処遇差
・勤務地限定区分の運用
・多様な形態による正社員の評価、賃金や昇進機会

このことに関連して、企業へのヒアリングによって明らかになったのは、以下のようなことです *4:pp.7-8。

まず、賃金についてみていきましょう。
限定正社員に対して正社員と異なる賃金体系を適用する企業が多いのですが、 正社員と同じ賃金体系を適用しながら、正社員に対しては転居を伴う異動が発生する可能性に対して手当を支給することで、正社員と限定正社員の賃金に差をつけている企業があります。

このような場合、実際には正社員の中に転勤しない人がいる場合や、限定正社員の職務内容が 正社員とあまり変わらない場合、限定正社員は賃金について不満を持ちます。
その一方で、海外転勤などで正社員の負担が大きい場合は、限定正社員との賃金水準の差が小さいと、正社員に不満が生じます。

次に昇進スピードや上限に関しても留意が必要です。
転勤の有無による経験の差や勤務地限定正社員の所属する地域や事業所でのポストの状況などによって、正社員と限定正社員の間で昇進スピードや上限に差を設けている企業があります。
また、限定正社員が正社員に転換した場合には、昇進の上限を撤廃する企業や、昇進スピードや上限を正社員と同一にする企業もあります。

正社員と限定正社員の処遇の差に関しては、双方から不満が生じるおそれがあり、慎重に公正な制度設計をする必要があります。

この他、企業側のデメリットとして、以下のようなことも挙げられています *3:p.10

従業員の区分転換の希望と人員計画のミスマッチが生じる場合がある
無期契約やステップアップを望まず、アルバイトのよ うに、好きなときに働いて、好きなときに辞める、という働き方を希望する従業員への対応が難しい
一定水準以上のステップアップを望まない労働者が特定の職階に固定化し、組織が硬直化する
勤務地限定や職種限定の場合、事業所閉鎖、事業縮小等の場合の雇用の確保が難しい

導入する際には以上のようなデメリットを押さえた上で、必要な対策を講じることが重要です。

 

導入のシミュレーション

最後に、ケース毎に、どのように限定を設けるのかマッチングしてみましょう。

表1 ケース別 限定の種類
参考:*1 厚生労働省「勤務地などを限定した『多様な正社員』の円滑な導入・運用に向けて」 p.4を参考にして筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/file/01-270227.pdf

以上のように、企業側・従業員側の目的と希望を考慮し、それぞれにふさわしい限定を設けることで、企業・従業員の双方にとって有益な雇用・働き方の実現が期待できます。

 

おわりに

せっかく優秀な人材を確保しても、様々な事情による離職を防ぐことができなければ大きな損害です。
職務、勤務地、労働時間を限定する「限定正社員」の導入は、労働者1人ひとりのワーク・ライフ・バランスを実現するとともに、企業にとっても優秀な人材の確保や定着を可能にし、労使双方にとって望ましい働き方につながります。

「限定正社員」の導入・運営は従来の人事労務管理とは異なる面があり、困難や試行錯誤が伴いますが、それらを押さえた上で、柔軟で多様な「限定正社員」という選択にも目を向けてみたらいかがでしょうか。

 

*1
厚生労働省「勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/file/01-270227.pdf
*2
マイナビ2020(2021)「エリア限定職」
https://job.mynavi.jp/conts/2022/area/limited/
*3
厚生労働省「多様な正社員の導入状況」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000036346.pdf
*4
厚生労働省(2014)「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会 報告書」(2014年7月)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000052523.pdf

 

横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。
Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

Twitter:https://twitter.com/mibogon

 

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