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食中毒対策はどうする?加熱の方法は?安全管理の基本を健康管理を含め看護師が解説

飲食店の経営で、非常に気を遣うのが食中毒への対策です。
万が一食中毒が起きたら、店舗の営業ができなくなるだけでなく、イメージダウンによる収益の減少や損害賠償など、経済的損失がはかり知れません。

日頃から食品管理や衛生面の対策を行っている店舗は多いと思いますが、スタッフの体調管理はいかがでしょうか?
もしスタッフが食中毒になり菌やウイルスを持ち込んでしまうと、食中毒の原因になります。

コロナ禍で感染予防への意識が高まっている今、食中毒への対策を見直してみませんか?

今回は、食中毒の原因や対策など、食中毒を防ぐために知っておきたいポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

目次

飲食店での食中毒は多い?店舗に与える影響とは

食中毒の原因とは?細菌やウイルスだけでない

食中毒が起こりやすい状況とタイミング

もしかして食中毒?疑うべき症状があったときの対応とは

飲食店で食中毒を防ぐための対策とは

まとめ

飲食店での食中毒は多い?店舗に与える影響とは

厚生労働省によると、平成30年の食中毒事件数は1,330件でした。
下記のグラフの通り、平成11年から比べると減少傾向にあるものの、近年は横ばいです。
患者数は17,282人で、減少傾向にあります。*1

引用)厚生労働省 「平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000488491.pdf p4

次に、食中毒がどの場面で発生しているのか見てみましょう。
平成30年の原因施設別事件数は、飲食店が54.3%で最多でした。*2
全体の半数以上を占めていることから、飲食店では食中毒の発生リスクが高いと考えられます。

引用)厚生労働省 「平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000488491.pdf p11

万が一飲食店で食中毒が発生すると、保健所による立ち入り検査が行われます。
その結果、行政指導や行政処分を受けることになります。

食中毒が飲食店に与える影響ははかり知れません。
お客さんに健康被害がおこり、多大な迷惑をかけてしまいます。
それだけでなく、
・お客さんから賠償請求をされる
・従業員が食中毒になると仕事を休まなければならず、労働力が低下する
・店舗のイメージダウン、保健所の指示での営業停止による経済的な損失
などが起こる可能性があります。

このように、食中毒は飲食店の存続を揺るがす重大な問題です。

 

食中毒の原因とは?細菌やウイルスだけでない

食中毒の原因には、
・細菌
・ウイルス
・動物性自然毒(フグや二枚貝など)
・植物性自然毒(毒性のあるきのこやスイセンなど)
・寄生虫(アニサキスが代表的)
などがあります。

厚生労働省によると、平成30年の病因物質別事件数はカンピロバクターが最も多く、次いでノロウイルス、病原大腸菌でした。

引用)厚生労働省 「平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000488491.pdf p19

それぞれの特徴を説明します。

・カンピロバクター
生や半生状態の鶏肉に多く見られる細菌です。
しっかり加熱すれば死滅します。
多くの場合軽症で済みますが、子どもや高齢者など免疫力が低い方は重症化する可能性があります。
感染後数週間でギラン・バレー症候群を発症することもあり、そうすると手足のしびれや顔面神経麻痺などの症状が出ます。

・ノロウイルス
ノロウイルスは感染力が強く、集団感染を引き起こしやすいウイルスのひとつです。
ノロウイルスによる食中毒の約7割は、11月~2月に発生します。*4
感染者の便や吐物にウイルスが多く含まれるため、トイレ後の手洗いや吐物の処理に注意する必要があります。

・病原大腸菌
大腸菌は人間の腸にもともと存在していますが、5種類の病原大腸菌は食中毒の原因になります。
特に、腸管出血性大腸菌(O157が代表的)は病原性が強いとされており、重症化すると死亡する可能性もあります。
食肉の不十分な加熱や汚染された生野菜などが原因です。

 

食中毒が起こりやすい状況とタイミング

食中毒が起こりやすい状況やタイミングは、大まかに分けると3つあります。

①食品の問題
・食品の不十分な加熱
・食品の不十分な洗浄
・食品の温度管理不足
食品を十分に加熱しないまま食べると、食中毒が起こりやすいというのはイメージしやすいと思います。
しかし、加熱しても全ての細菌が死滅するわけではなく、セレウス菌やウェルシュ菌などは残ってしまうため、調理前の洗浄や適切な温度管理で細菌を増やさないことが大切です。

②環境の問題
・調理器具の汚染
・調理施設の清掃が不十分
調理器具や調理施設が汚染されている場合、調理の過程で食品に細菌やウイルスが付着し、食中毒の原因になります。

③調理者の問題
・調理者の体調不良
・調理者の手洗い不足
調理者の健康管理も欠かせません。
調理者が食中毒になっていたり、手洗いを十分にしていなかったりすると、細菌やウイルスが料理に混入してしまいます。

 

もしかして食中毒?疑うべき症状があったときの対応とは

平成26年に厚生労働省から出された
「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)の改正について」
では、
「以下の症状があった場合、責任者に報告のうえ食品の取扱作業に従事させないようにするとともに、医師の診断を受けさせる。」
と定めています。

① 黄疸:肝臓や胆管などに異常があり血液中のビリルビンが増加、皮膚が黄色くなる。
② 下痢
③ 腹痛
④ 発熱
⑤ 発熱をともなう喉の痛み
⑥ 皮膚の外傷のうち感染が疑われるもの(やけど、切り傷等)
⑦ 耳、目又は鼻からの分泌(病的なものに限る)
⑧ 吐き気、おう吐 *5

特に、②③④⑧は食中毒に比較的多く見られやすい症状です。

発症までの期間は食中毒の原因によってさまざまで、最短で食べた直後、長いと1週間程度です。
食べた直後に症状があれば食中毒を疑うことができますが、1週間だと何が原因か分からず気づくのが遅くなる可能性もあります。

また、症状が軽度だと気のせいと思い、適切な治療が遅れる原因になります。
例えば、軽度の嘔吐や下痢があった場合、市販薬を服用する人もいるでしょう。
もしそれが食中毒だった場合、原因となる細菌やウイルスを体の外に出す必要があるため、安易に止めない方がいいのです。

食中毒を疑う症状があるときは、以下のポイントを意識しましょう。

・店舗の責任者に報告する
・調理や配膳など、食品を扱う業務を行わない
・早めに病院を受診する

 

飲食店で食中毒を防ぐための対策とは

まず、食中毒予防の原則を確認しましょう。
・食中毒の原因菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」
・原因ウイルスを「持ち込まない」「ひろげない」「つけない」「やっつける」
※ウイルスは食品中では増えないため、「増やさない」が入っていません。

この原則をもとに、飲食店で食中毒を防ぐための具体的な対策を紹介します。

①食品や環境を清潔に保つ
細菌やウイルスを食品につけないためには、以下のポイントで清潔を維持しましょう。
・調理前後、トイレ後の手洗い
・食品、調理器具の洗浄
・店舗の清掃
また、細菌を食品中で増やさないためには
・適切な保管方法(温度、湿度に気を付ける)
・消費期限、賞味期限が切れていないかチェック
・作り置きに注意(調理してから提供するまでの時間を短くする)
ことが大切です。

②食品を十分に加熱する
上記でも触れましたが、十分に加熱すれば絶対に食中毒が起こらないわけではありません。
しかし、加熱することで死滅するものもあるので、調理の際に意識しましょう。
厚生労働省によると、中心部が 75℃で1分間以上、二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85℃で1分間以上、又はこれと同等以上まで加熱されていることを確認するとされています。*6

③スタッフの身だしなみと体調管理
スタッフが食中毒の原因を持ち込まないために、
・身だしなみを整える(爪を短く切る、髪が長い場合は結ぶなど)
・体調を整える(こまめな手洗い、十分に加熱したものを食べるなど)
ことをスタッフに共有しましょう。

また、体調不良を申告しやすい雰囲気づくりも大切です。
特に症状が軽度の場合、スタッフからの申告がなければ気づかないことも多くあります。
日頃からスタッフと良好な関係を築き、無理せず休める体制を整えましょう。

 

まとめ

飲食店での食中毒は、お客さんへの損害だけでなく店舗の存続にも関わる重大な問題です。
食中毒を防ぐため、日頃からしっかり対策を行っていきましょう。

さらに、スタッフの体調不良は、本人からの申告がないと気づけない場合も多いものです。
報告しやすい関係性や休みやすい雰囲気づくりを行い、食中毒から店舗・お客さん・スタッフを守っていきましょう。

*1
参考)厚生労働省 「平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000488491.pdf p4

*2
参考)厚生労働省 「平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000488491.pdf p11

*3
参考)厚生労働省 「平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000488491.pdf p19

*4
参考)厚生労働省 「食中毒の原因(細菌以外)ノロウイルス」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/03.html

*5
参考)厚生労働省「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000084849.pdf p6

*6
参考)厚生労働省 「4 食事の提供における食中毒予防のための衛生管理」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0331-10a-011.pdf p1

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・著者:浅野すずか
・プロフィール:フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。

 

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