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厚生労働省が再就職を支援 就職氷河期世代の採用で利用できる助成金とは

バブル経済の崩壊後に就職活動にあたった、いわゆる「就職氷河期」世代の雇用に対し、厚生労働省が支援に乗り出しました。

現在30代後半~50代前半かけての氷河期世代では、現在も不安定な就労状態にあったり、長期にわたって無職の状態にある人が少なくありません。
この氷河期世代の就労を促進するため、厚生労働省が企業に対する助成金制度を設けています。

氷河期世代の現状と、企業が利用できる助成金などについて紹介します。

目次

就職氷河期世代の現状

厚生労働省の支援・助成金制度

就職氷河期世代の就労意識

人手不足をどう補うか

就職氷河期世代の現状

政策的な意味合いでは、就職氷河期とは1993年〜2004年に卒業を迎えた人をさしています*1。
時代としてはバブル経済が崩壊し、景気の冷え込みで企業には人員余剰感が出て、一気に新卒採用が控えられた頃にあたります。

大学卒の正社員就職率を見ても、この時期には50〜60%と低い水準にあったことがわかります(図1)。

図1 大学卒の正社員就職率(出典「『就職氷河期世代』の現在」労働政策研究・研修機構)
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2019/05/pdf/017-027.pdf p21

その就職氷河期世代の現在の就労状況はこのようになっています(図2)。

図2 就職氷河期世代の就労状況
(出所:「就職氷河期世代支援プログラム関連参考資料」内閣府)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/0611/shiryo_01.pdf p1

非正規社員・従業員が371万人、そのうち正社員を希望しながらかなっていない人が50万人にのぼります。
また、就職を希望しながら求職活動をできていない無職の人の数は40万人です。

厳しい時期にあった最初の就職活動でつまずき、その経歴が不利になり続け正規雇用に至っていない、あるいは就職を諦めかけている人もいると考えられます。
段階的なキャリア形成も難しかったという環境もあるでしょう。
中には、長期にわたって無職となり、そのまま社会とのつながりが保てなくなった「ひきこもり」状態にある人も少なくないと考えられます。

厚生労働省は、不安定な就労状態や無職状態にある人についてこのように考察しています。

・学卒時に不安定な就労、無業に移行したことや、就職できても本来の希望業種・企業以外での就職を余儀なくされたことによる早期離転職等により、概して能力開発機会が少なく、企業に評価される職務経歴も積めていない。

・また、加齢(特に35歳以降)に伴い企業側の人事・採用慣行等により、安定した職業に転職する機会が制約されやすい。

・不安定な就労状態にあるため、収入が低く、将来にわたる生活基盤やセーフティネットが脆弱。

といった課題を抱えられていると考えられる。

<引用:「厚生労働省就職氷河期世代活躍支援プラン 」厚生労働省>
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000513529.pdf p1

就職氷河期と「8050問題」
就職氷河期世代については、「8050問題」というものも存在しています。

無職状態やひきこもりが長期化し、もうすぐ「80代の親が50代の子どもを抱える」という状態です。
就職氷河期世代は現在30代後半~50代前半になっていますから、数年後以降、こうした世帯が急増すると考えられます。

経済的に困窮することはもちろん、社会的に孤立する危険性もあります。また、介護の問題も同時に抱えることになります。

2040年には少子高齢化がピークに
また、2040年には少子高齢化がピークに達し、社会保障費負担が大幅に増加することになります*2。
一方で無職状態の人が多いままでは、社会保障の担い手である若い世代に、重い負担が集中することになります。

また、企業にとっては、少子高齢化がピークを迎えると、現在すでに顕在化している人手不足の問題がさらに深刻化することも考えられます。

厚生労働省の支援・助成金制度

こうした背景から、厚生労働省は2019年に氷河期世代の集中支援を盛り込んだ社会保障改革案をまとめました。
そして、不安定な就業状態にある人の雇用にあたって、助成金の利用を呼びかけています。

企業への助成金
企業に対する助成金制度では、年齢を就職氷河期に限らず、育児などで離職し安定した就業ができていない人で、上限を55歳まで拡大しています。
主に4種類があります。

①トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
安定的な就職が困難な求職者を一定期間(原則3か月)試行的に雇用する場合に受けられる助成金で、条件は以下のようになっています(図3)。

図3 トライアル雇用助成金の条件
(出所:「『就職氷河期世代活躍支援』のご案内」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000578714.pdf

②特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
就職氷河期世代を中心に、正社員経験がない、もしくは浅い人を正社員として雇い入れる場合に企業が受けられる助成金です。条件は以下のようなものです(図4)。

図4 特定求職者雇用開発助成金の条件
(出所:「『就職氷河期世代活躍支援』のご案内」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000578714.pdf

③人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)
現在非正規にある人を、正規雇用に転換する目的で雇用型訓練を実施する場合に受け取ることができる助成金です。訓練経費や時間中の賃金の一部を補うものです(図5)。

図5 特定求職者雇用開発助成金の条件
(出所:「『就職氷河期世代活躍支援』のご案内」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000578714.pdf

④キャリアアップ助成金(正社員化コース)
企業内の非正規雇用労働者を正社員などに転換させた場合に受けられる助成金です(図6)。

図6 キャリアアップ助成金の条件
(出所:「『就職氷河期世代活躍支援』のご案内」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000578714.pdf

この他、ハローワークで氷河期世代を対象とした求人の申込みが可能になりました。また、氷河期世代の採用についての相談窓口がハローワークに設けられています。

求職者の資格取得などへの助成金
一方、求職者側も無料の職業訓練を受けられるようになりました。正社員就職につながる資格や技能の習得を目指したものです(図7)。35歳〜55歳の求職者を対象としています。

図7 就職氷河期世代向けの短期資格取得コース事業
(出所:「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12131.html

厚生労働省は、令和4年度までに1万人以上に訓練を実施できるよう計画しています*3。

よって、正社員就労の経験がなかったり浅かったりする人の場合も、この制度を利用すれば有資格の状態で求職できるので、企業にとっては資格取得の経費を出さずに済むというメリットもあります。

 

IT系エンジニアや、小型クレーン、フォークリフト、安全講習、各種自動車運転免許などの資格が例として挙げられています*4。

 

就職氷河期世代の就労意識

マイナビが実施した調査では、就職氷河期世代のフリーター・無職の人がその状態になったきっかけについて次のような結果が得られています(図8)。

図8 フリーター・無職になったきっかけ
(出所:「『フリーターの意識・就労実態調査』を発表」株式会社マイナビ)
https://www.mynavi.jp/news/2019/10/post_21515.html

35〜44歳の氷河期世代では他の世代に比べ、
「正社員として雇ってくれるところがなかった」
「家庭の事情のため」
「正社員としての仕事がなかった」
「会社を退職・離職したため」
といった回答の割合が高くなっています。

また、このうち就労意向はありながらも求職活動に至っていない人は、その理由として以下のようなものを挙げています(図9)。

図9 求職活動をしていない理由
(出所:「『フリーターの意識・就労実態調査』を発表」株式会社マイナビ)
https://www.mynavi.jp/news/2019/10/post_21515.html

「希望する仕事がありそうにないから」
「家族の介護・看護が必要だから」
という事情が他の世代より目立って多くなっています。

収入が不安定なまま家族の介護が必要になるという、生活の苦しさもうかがえます。

 

人手不足をどう補うか

企業の人手不足はこれからも続くことでしょう。

高齢者雇用安定法改正によって70歳までの就労機会確保が義務づけられましたが、将来的には団塊ジュニアの大量退職時期がやってくることは避けられません。

また、就職氷河期の次の世代以降の人口は急減しています(図10)。

図10 人口ピラミッド(2020年)
(出所:「人口ピラミッド 2020年の画像」国立社会保障・人口問題研究所)
http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/2020.png

団塊ジュニアの次にあたる就職氷河期世代の労働力が大きく抜けてしまうと、あとは減少の一途をたどることになります。

氷河期世代には、本人の能力に関係なく時代に翻弄され続けた結果が今の状況という人も多くいます。
景気が戻った頃には若い人の採用が優先され、正規就職のタイミングから丸ごと置き去りにされてきた世代とも言えます。

政府の求職者支援や助成金をきっかけに、就職氷河期世代の労働力に目を向けてみるのも人手確保のひとつの方法になるでしょう。

 

*1 「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状 」労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/documents/217.pdf p1

*2「氷河期世代を重点支援 厚労省、2040年見据え社会保障改革案」日本経済新聞 2019年5月29日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45414590Z20C19A5EE8000/

*3「就職氷河期世代の方向けの『短期資格等習得コース』事業を開始します」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12700.html

*4「就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コースの創設」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000653925.pdf

 

著者:清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
https://twitter.com/M6Sayaka

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