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「ハロー効果」「ホーン効果」とは?意識のバイアスで優秀な人材を逃さないために

アルバイトの面接や評価にあたって、相手の第一印象や雰囲気を大事にする経営者は多いことでしょう。また、バイトリーダーを選ぶに当たっても、印象を大切にする経営者は少なくありません。

しかし、なるべく公平に・客観的に相手を見ようとしても、人間が人間を評価する限り、どこかで「バイアス」がかかってしまいます。
その結果、「最初の印象は良かったのに仕事をさせてみたらイマイチだった」ということが起こりがちです。

そうならないために、面接担当者が無意識に陥りがちな「認知のバイアス」についていくつかご紹介します。

目次

米陸軍で起きた人事問題

重視された「バイアス除去」

ハロー効果、ホーン効果

その他のバイアス

最もやっかいな存在、「バイアス盲点」

オンライン時代ならではの「バイアス」の怖さ

 

米陸軍で起きた人事問題

突然ではありますが、アメリカの陸軍で起きた出来事を紹介しようと思います。
陸軍では2018年の法改正によって、大隊長の選抜方法が変更されました。

実は、それまで、大きな問題を抱えていたのです。
法改正前は、人事は形式的に行われていました。すると、2009年から2010年にかけて2万2000人の兵士を対象に調査を実施した結果、2割が上司について「有害なリーダー」だと回答したというのです*1。

それだけではありません。

別の調査では、軍隊が最も優れたリーダーを昇進させていると答えたのは、少佐の50%に満たなかった(企業社会の状況も同様に厳しい。ある研究では、上級幹部の半数がリーダーとしての役割を果たしていないと推測され、また別の研究では、マネジャーの16%が「有害」であり、20%が能力不足であるとされた)。

<引用:ハーバード・ビジネス・レビュー 2021年2月号 p103>

このような調査結果もあり、陸軍は人事制度の抜本改革を迫られていたのです。

 

重視された「バイアス除去」

大隊長選抜にあたっては様々な新しい方法が導入されましたが、そのうちのひとつが「バイアス」の除去です。

面接委員は、面接の最中に起こりがちなバイアスを防ぐための方法を教えられた。
例えば、第一印象バイアス(第一印象に気を取られる)、対比バイアス(候補者を共通の基準に照らし合わせるのではなく、候補者同士を比較する)、ハロー効果やホーン効果(一つのよい特性、あるいは悪い特性に引きずられ、他のすべてが見えなくなる)、ステレオタイプ化バイアス、「私に似ている」バイアスなどである。

<引用:ハーバード・ビジネス・レビュー 2021年2月号 p107>

ずいぶん多くの「バイアス」があるようです。その代表的なものを紹介していきます。

■ ハロー効果、ホーン効果

まず、「ハロー効果(ポジティブ・ハロー効果)」です。「ハロー」とは「後光」の意味で、何かひとつでも印象が良いことがあるとすべてが良く見えてしまう現象です。

学歴や経歴はその典型でしょう。しかし、「学歴」=「頭がいい」=「優秀」かというとそうでもないことがあります。例えば、知識は豊富でも接客が苦手、そんな人は沢山います。
また、嫌な言い方をすれば、性格の善し悪しは学歴とは関係ありません。

次に、「ホーン効果(ネガティブ・ハロー効果とも呼ばれる)」です。
こちらは逆に、何か一つでもネガティブな印象の出来事があると全てが悪く見えてしまう現象です。
例えば、面接の時に声が小さかった。
それは緊張していただけで本来の能力は高い可能性があるのに、その一点だけで「消極的な人間なんだ」と思い込み、その後何を聞いてもネガティブに捉えてしまう現象です。

筆者が最近読んだ漫画の中に、このようなくだりがありました。

裕福そうに見える人がニセモノのブランド腕時計をつけていると、周囲はそれを本物と感じる、一方で貧乏そうな学生が一生懸命にお金を貯めて本物を買っても、周囲はそれをニセモノだと感じてしまう。

まさにこれがハロー効果、ホーン効果という矛盾を言い表しています。

その他のバイアス

他にも、バイアスは多数あります。
例えば、上記にある「ステレオタイプ化バイアス」とは、相手を自分の考えのクセの中に当てはめてしまう行為です。男性らしい/女性らしい、血液型や年齢による性格の個人的な認識がそれにあたります。
そして、「私に似ているバイアス」は文字通り、自分に似ていると会話もスムーズで気分が良いため、その人の本質に迫ることなく高評価を与えてしまうケースです。

他にもたくさんあります。

・寛大化傾向=実際よりも甘い評価をしてしまう。例えば「大きな問題もなかったんだから『良好』にしておこう」「高い評価をつけていれば文句を言われないだろう」といった具合です。

・中心化傾向、極端化傾向=評価段階の両極端を意識しすぎるあまり、「とりあえずB評価」としてしまったり、逆に「SかDか」に当てはめたくなるという評価者の事情で相手の位置づけを決めてしまう。

これについては筆者も経験があります。会社員時代に採用の面接官をしたことがありますが、どうしても「採るか採らないのか」を考えてしまったり、みんなを「△」にしてしまいたくなったり、という具合です。

面接時間が限られている割には人数が多すぎたというのも原因のひとつと今振り返って思います。「マルかバツか」ではなく、「点数」を記載できたらもっと気楽だったかもしれません。

■ 最もやっかいな存在、「バイアス盲点」

このように、どうしても私たちが抱えてしまうバイアスはたくさんありますが、最もやっかいなのは「バイアス盲点」です。

「他の人にはバイアスがかかってるかもしれないが、自分は大丈夫」と思い込んでしまうことです。

米陸軍の場合、面接委員に上級心理学者を1人迎えました。心理学者は投票権は持たないものの、他の面接官にバイアス盲点について教えるという体制を取りました。そして、委員たちは毎朝のミーティングを欠かさなかったということです。

 

オンライン時代ならではの「バイアス」の怖さ

さて、コロナ下においては、オンライン面接も少なくありません。

しかし大きな問題が浮上しています。「替え玉受検」です。
新卒採用の段階で、特にWeb適性検査での替え玉は、業者すら存在するのだといいます*2。

アルバイトの場合、Web試験を設けることは多くはないと思いますが、オンラインでは注意すべき点がいくつか考えられます。

過去に、ある料亭が不祥事を起こし、しかし記者会見場では隣に座っていた関係者がどう答えるかを吹き込み続けたということがありました。
このようなことが起きてもおかしくないということです。

面接を受けながら同時に誰かがスマートフォンで答え方を指示している可能性もありますし、実際に画面外に誰かがいる可能性もあります。かつ、マスクをしているとしゃべり方も不明瞭です。
このような不自由な状態では、バイアスが先走りしてもおかしくありません。

もちろん、あまり相手を疑いながらの面接などはしたくないものですが、ミスマッチの連続はコスト上の問題を生んでしまいます。

そのためにも、面接の質問には多様性を持たせる必要がありそうです。
形式張ったやりとりでは面接する側のバイアスも染みついてしまいますし、表面上の対策はあっさりと取られてしまいます。

「人間性」を引き出す想定外の質問や、経歴などにとらわれない「人間同士の本気の会話」が面接では求められる時代ではないでしょうか。

 

*1
「ハーバード・ビジネス・レビュー」2021年2月号 p103

*2
「就活『替え玉受検』『ウェブテスト代行』の実態」NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211019/k10013311631000.html

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
https://twitter.com/M6Sayaka

 

 

 

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