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感染症対策なら補助率アップ|コロナ時代に利用したいIT補助金2021の概要

中小・小規模企業のIT導入を支援する「IT導入補助金」の申請受付が2021年3月から始まっています。
2020年にも実施された補助金制度ですが、2021年は従来の「通常枠」に加え、感染症対策のためのIT導入費用も補助の対象になっています。

中小企業、小規模事業の経営者にとっては、
「ノートパソコンの購入でも補助金が出るのか?」
といった切実な疑問も寄せられているようですが、その実態はどのようなものなのでしょうか。

感染症の影響がいつまで続くのか見通せない中、上手に利用するためにもぜひ概要を押さえて下さい。

目次

IT導入補助金・対象と金額

新型コロナウイルスとIT導入

IT補助金の利用事例

今変わらなければ先は危うい

IT導入補助金・対象と金額

IT導入補助金は、導入するITツールの種類と目的・金額によって4種類に分かれています。

2020年にも設定されていた「通常枠(A・B類型)」は、中小企業・小規模事業者が業務効率化や売上向上のためにITツールを導入する場合に経費の一部が補助されるというもので、2021年も引き続き実施されます。

そして、2021年に新設されたのが「低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)」です。

業務上で対人・対面の機会を減らすためのITツールを導入する場合、費用の最大3分の2を補助するというものです(図1)。

図1 IT導入補助金の種類と補助対象
(出所:「IT導入補助金について」IT導入補助金2021)
https://www.it-hojo.jp/first-one/

何を導入すると補助される?
「IT導入」というと大がかりなものを想像してしまうかもしれませんがそうではなく、例えばこれまで書類や手入力で行っていた勤務管理や会計処理を自動化するシステムの導入や、生産管理や売上管理システムを導入して利益向上をはかる、といった場面でも利用できます。

また、低感染リスク型ビジネス枠では、テレワークの導入やそのためのセキュリティ向上などにかかる費用などが考えられるほか、IT導入にあたってのコンサルティング費用も補助の対象になります。

なお、補助の対象になるのは、「IT導入支援事業者」として事務局に審査・認可を受けている企業の特定の商品やサービスです。全国大小のITサービス会社が登録されています*1。

登録されているツールには以下のカテゴリーがあります。

・カテゴリー1:単体ソフトウェア
・カテゴリー2:連携型ソフトウェア
・カテゴリー3:拡張機能
・カテゴリー4:データ連携ツール
・カテゴリー5:セキュリティ
・カテゴリー6:導入コンサルティング
・カテゴリー7:導入設定、マニュアル作成、導入研修
・カテゴリー8:保守サポート(導入から最大1年分)
・カテゴリー9:ハードウェアレンタル

IT導入の基礎に関するものは一通り網羅されていると考えて良いでしょう。

新型コロナウイルスとIT導入

コロナ以降、IT導入に対する企業の意識や一般消費者の行動には変化が生じています。

テレワークの導入状況
内閣府が2020年12月に公表している統計では、テレワークのための職場の改善状況は下のようになっています(図2)。

図2 テレワークのための職場の改善の程度
(出所:「第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」内閣府)
https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/future2/20210119/shiryou3-1.pdf p7

企業規模別で改善の度合いが異なっているのがわかります。

実際、中小企業・小規模事業者の場合はテレワークができない仕事やそれまでの慣習といった事情もあることでしょう。

しかし一方でテレワークに限らず、感染症流行によってITツールに関する中小企業の関心が高まっているのも事実です(図3)。

図3 感染症流行後のITツール・クラウドサービスの問い合わせ件数
(出所:「2021年版中小企業白書」中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap2_web.pdf p322

経済産業省が情報処理支援企業として認定している情報処理技術企業に対し、ITツールやクラウドサービスについての問い合わせがどのくらい増加したかを示したのが上の図2です。
感染症流行後、約3分の2の認定企業で、問い合わせが増加していることがわかります。

また、感染症を機に、企業が事業継続力のうえでITやデジタルの導入を重要と考える度合いも高まっています(図4)。

図4 感染症を踏まえたデジタル化の重要性への意識変化
(出所:「2021年版中小企業白書」中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap2_web.pdf p322

ITやデジタルの導入は、いまは「事業継続力」に関わるものだと捉える傾向が高くなっていると言えるでしょう。

通販事業の展開
また、打撃を受けた飲食店や小売店で通販事業に乗り出したり強化したりする企業が、筆者の周辺でも多く見られます。

実際、コロナ以降、一般消費者のネット通販への支出額は増えています(図5)。

図5 ネットショッピングの支出額の推移
(出所:「新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング-家計消費状況調査の結果から-」総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/info/today/162.html

今回のIT補助金の対象に認定されているITツールの中には、ネットショップ開業のサポートソフトもあります。

ネットショッピングの利用や支出は今後も伸びると考えられますので、これを機に非接触での商品販路を確保するためのネット通販を本格的に考えてみるのも良いでしょう。

IT補助金の利用事例

過去のIT補助金利用事例としては、以下のようなものが紹介されています。企業によって経営課題も異なれば、利用の仕方も様々です。

まず、岩手県の建設業者の場合、「原価管理」が会社の課題でしたが、原価明細などをデータ化し管理するところからITツールの導入を始めました。

その後、見積もりや職人の労務管理、請求書の発行などを自動化して経営合理化をはかり、結果として売上を26.6%伸ばしたという実績を出しています*2。

また、横浜市の介護サービス事業者では、それまで紙ベースでヘルパーの活動状況を管理している状況でした。
そこに、スマートフォンなどを利用してヘルパーの訪問状況やサービス時間を自動で把握するツールを導入し事務作業を大幅に短縮したほか、介護保険請求業務の効率化をはかっています*3。

書類作業の軽減をITによって実現するのは、感染症流行下で事業を続けていくにあたっても大きなカギになりそうです。

 

今変わらなければ先は危うい

経済産業省は2020年に公表した「DXレポート2 中間とりまとめ」の中で、コロナとIT化についてこのように指摘しています。

一方、2020年に猛威を振るった新型コロナウイルスの影響により、企業は事業継続の危機にさらされた。企業がこの危機に対応するなかで、テレワークをはじめとした社内のITインフラや就業に関するルールを迅速かつ柔軟に変更して環境変化に対応できた企業と、対応できなかった企業の差が拡大している。押印、客先常駐、対面販売など、これまで疑問を持たなかった企業文化、商習慣、決済プロセス等の変革に踏み込むことができたか否かが、その分かれ目となっており、デジタル競争における勝者と敗者の明暗がさらに明確になっていくことになろう。

<引用「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation_kasoku/pdf/20201228_2.pdf p3

これまでは「働き方改革」「生産性向上」といった側面でIT化は注目されてきました。
しかしコロナ禍によって企業のIT化の度合いや格差が明らかになり、それは今後にも影響していくだろうという経済産業省の見通しです。

現在は未曾有の非常事態と呼べるかもしれませんが、特に自然災害の多い日本の場合、このような「未曾有の」事態は次にいつ発生してもおかしくありません。

今回の感染症対策を機に、ITに見合う業務のあり方や企業のあり方にシフトチェンジすることは、将来にわたって企業と従業員を守り続けるためにも重要な一歩になるでしょう。

なお、自社の課題はどのようなツールを利用すれば解決できるのかわからない、という場合も、商工会などで相談できるようになっています(図6)。

図6 IT補助金の申請から導入まで
(出所:「IT導入補助金について」IT導入補助金2021)
https://www.it-hojo.jp/first-one/

事務局のホームページに詳細な情報が掲載されていますので参考にしてください。

IT導入補助金2021:https://www.it-hojo.jp/

 

*1「IT導入支援事業者・ITツール検索」IT導入補助金2021
https://www.it-hojo.jp/applicant/vendorlist.html

*2「ITツール活用事例」IT導入補助金2021
https://www.it-hojo.jp/h29/doc/pdf/h29_construction_nana-home.pdf

*3「ITツール活用事例」IT導入補助金2021
https://www.it-hojo.jp/h30/doc/pdf/h30_care_aozora.pdf

 

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
https://twitter.com/M6Sayaka

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