空いた時間にネットやアプリで仕事を探し、単発で仕事を受け付けて働く「ギグワーカー」が注目されています。
典型的なものはUber Eatsなどの料理の宅配でしょう。
ギグワーカーは空いた時間にアプリで配達の仕事を探し、近くにあれば店舗に行って商品を受け取り、自転車やバイクなどで客先に届けるというものです。
コロナウイルス蔓延の中でこうしたサービスを利用する飲食店は増えています。
ギグワーカーとアルバイトの違いや、ギグワーカーを利用するに当たっての注意点を解説します。
目次
ギグワーカーとアルバイトの違い
ギグワーカーはネット等を介して単発の仕事をする人たちで、クラウドワーカーとも言えます。
クラウドワーカーと企業の関係はこのようになっています(図1)。
図1 クラウドソーシング・ギグワーカーの仕組み
(出所:「シェアリング・エコノミー,ギグ・エコノミーの発達と税制の課題」財務省資料)
https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/r143/r143_01.pdf p12
アルバイトとの最大の違いは、マッチングの場所を提供する紹介役の企業(プラットフォーマー)の存在があることです。
企業はこのプラットフォーマーに仕事をしてくれる人を紹介してもらう手数料を支払い、ギグワーカーの給料はプラットフォーマーを経由して支払われる、という形です。
かといって、ギグワーカーはこうしたプラットフォーマーに雇用されているわけではありません。
企業から見れば、その時、必要なことをしてくれる人を見つける場所。
ギグワーカーから見れば、自分の都合の良い時間・場所でできる仕事をみつけるだけの場所です。
逆に言えば、プラットフォーマーの役割はそれだけです。
ギグワーカーの具体例
ギグワーカーの名前の由来は、音楽用語の「ギグ(=単発のバンドセッション)」から来ています*1。
ギグワーカーで最も目にするのが、料理の宅配サービスでしょう。
Uber Eatsや出前館など、料理の宅配注文があれば、その時近くにいる配達員が店舗に向かい、商品を受け取って自転車やバイクで客先に届けるという形式です。
筆者もこうしたサービスをしばしば利用しますが、ネットの宅配サービスを利用できる飲食店の新規登録が、コロナの影響でしょうか、増えています。
飲食店の店舗経営が難しくなっている中で、手数料を支払ってこうしたプラットフォームを利用していると考えられます。
飲食店のカウンターにも、特にお昼時になると大きなリュックを抱えた配達員が、料理の完成を待っている姿を目にします。また、駅前など飲食店の集中する場所で配達員が待機している姿も見られます。
また、宅配だけではなく、ランサーズやクラウドワークスといったプラットフォームを介して、デザインやライティング、事務、エンジニアの仕事を単発で受注している人もギグワーカーにあたります。
ギグワーカーの属性、フリーランスとの違い
ギグワーカーには、あるところでアルバイトなどとして雇用されながら空き時間で単発の仕事を引き受ける「副業型」と、単発の仕事の積み重ねを本業としている「本業型」があります。
フリーランスと呼ぶこともできます。
労働政策・研修機構の試算では、企業相手のギグワーカーを含むフリーランス(副業・本業合計)は国内に2019年時点で約170万人います(図2)。
図2 日本国内のフリーランスの人数
(出所:「雇用類似の働き方の者に関する調査・試算結果等(速報)」厚生労働省資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000501194.pdf?fbclid=IwAR1s0mvHJigtl7rrIo9esunaTxx2JkvuGH656QGFyiVH7uaQ9hAlAIFzfvA p1
ただ、「フリーランス」といっても様々な人がいます(図3)。
図3 フリーランスの仕事受注方法
(出所:「マッチング支援-第9回 雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会 資料」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000500920.pdf p3
インターネットを介さず1社または複数の企業から業務委託を受けたり、企業と一定の期間を設けた契約を結ぶフリーランスの人もいれば、インターネットを通じて単発の仕事をする人もいます。ギグワーカーは後者にあたります。
ギグワーカーを利用するメリットとデメリット
ギグワーカーは「柔軟な働き方」の最たるものとも言えるでしょう。
では、企業がギグワーカーを利用すると、どのようなメリットとデメリットがあるでしょうか。
ギグワーカーのメリット
企業からみたギグワーカーのメリットは、ひとり雇うまでもないけれど必要なときだけ必要なことをしてくれる、といった存在になることです。
雇用関係にはありませんので、保険なども考えると人件費の削減につながります。
また、特定の仕事の経験豊富な人もいるため、うまくいけば専門知識やスキルを持ったギグワーカーに出会える場所になるということです。この場合は教育費用の削減につながります。自分たちで求人を出す手間も省けますし、働く側もネットやアプリで楽に仕事探しができます。
デスクワーク系など、職種によっては多様な人が集まることで、新しいアイデアが生まれるということもあるでしょう。
ギグワーカーのデメリット
デメリットとしては、ひとつには人材マッチングの場になるプラットフォーマーへの手数料がかかることです。
また、良いギグワーカーに仕事をしてもらったとしても、いつも同じ人に頼めるとは限りません。募集のたびに人選をしなければならない、あるいは誰が担当になるかわからないという側面があります。飲食店の場合、稼働している配達員がいない時間帯もあることを考慮しなければなりません。
相手を選べない、直接管理できないという特徴もあります。
筆者が一度経験したのは、あるところに食事の宅配を頼んだところ、料理が極端に傾いた状態で型崩れして運ばれてきたことです。
しかしこの店と配達員は直接の雇用関係にあるわけではないので管理はできません。
店として過失はなくても、クレームが入る可能性があります。
ギグワーカー利用での注意点
メリット、デメリットの双方があり、職種や仕事内容、手数料に照らして利用するのが望ましいというのがギグワーカーのひとつの特徴ですが、トラブル防止のために、他にも知っておきたい注意点があります。
まず、事前面談ができないケースが多いということです。
仲介役になるプラットフォーム側も、面談を実施してから登録を許可しているというわけではありません。契約前に、企業とワーカーが面接することを禁じているプラットフォームもあります。
どのような人物かは、実際に仕事をしてみないとわかりにくい部分があります。
また、配達の場合は、登録すればすぐに仕事を始められるというシステムがメインです。
そのため、店頭に来るまでどんな人が来るかわからないという事情もあります。
指名はできないと考えて良いでしょう。
次に、保険についてです。
ギグワーカー、例えば配達員の場合、仲介プラットフォーム側が事故に関する保険を掛けている場合と、そのような制度がなく個人の自転車保険などだけで働いている人がいます。
よって、配達中の事故、特に企業に対して配達員が損害賠償を負う事態になったとき、保険の内容によっては保険金が下りず、高額の請求をしにくくなります。
場合によっては配達員を特定できないということもあります。
まとめ〜契約内容をしっかり確認
自由な働き方を求める人が増えているところにコロナ禍での雇用不安が相まって、ギグワーカーへの関心は高まっています。
企業から見ても、人材確保の方法のひとつになっているのも事実です。
利用を考える際には、まずは仲介役であるプラットフォーム企業の信頼度を見極めることが大切です。
また、契約の形と事故や金銭トラブルなどの場合どのような対応をしてくれるのか、どのようなシステムになっているのかをしっかり確認しましょう。責任の所在を明確にしておくことです。
費用との兼ね合いも検討しておきましょう。
売上や認知度の向上のためには手数料を支払ってこうしたプラットフォームを利用するのも手段です。
ただし、手数料の負担が大きすぎる場合は慎重に考えてみましょう。
*1「ギグワーカーとは ネット経由で単発の仕事請け負う」日本経済新聞 2021年3月3日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODC027I30S1A300C2000000/
<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
https://twitter.com/M6Sayaka
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