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コロナ禍で伸びるネット通販と「越境EC」 補助制度も有効活用し海外進出を!

コロナ禍で多くの中小企業が苦難を強いられる中、活況を呈している分野があります。
越境EC=国をまたいだネットショッピングです。
巣ごもり生活を強いられているのは日本だけではなく、海外も同じです。
そのため、質の高い日本の製品を家庭用に購入しようという動きが広がっているのです。

少子高齢化による国内市場の今後の縮小も考えると、日本企業の海外進出は生き残りのための大きな選択肢となるでしょう。
そこで今回は、海外のEC事情や、海外進出を考える企業が利用できる補助金などについてご紹介します。

 

旅行できなくても続く中国の「爆買い」

新型コロナの流行以来、長きにわたって苦しい状況にあった航空会社ですが、2021年4月〜6月期の決算を見てみると、回復の兆しが見えています。
なかでもANAは国際貨物の伸びが大きく、貨物専用機については最大限の運航を回復するまでになりました*1。

その他、中国の物流大手企業の日本法人である「順豊エクスプレス」では、2020年の越境ECの取り扱い額が5割増加し、特に日中間の貨物全体の取り扱い量は2倍以上になったといいます*2。

日本の街中からは中国人観光客の姿は消えたものの、目に見えぬところで爆買いは続いているのです。

■中国の消費者の7割が越境ECで日本製品購入

もともと、中国は日本にとって輸出の最大のお客さん、とも言える存在です。

JETRO(=日本貿易振興機構)の統計によると、越境ECで日本からの輸入品を購入したことがあるという人は2018年で7割近くにのぼっています*3。

購入した者として多いのは、基礎化粧品、メイク化粧品、食品、漫画・アニメ、フェイスケア用品、衣料品・ファッション、医薬品、デジカメといった具合です*4。

岐阜県の美容機器メーカーで、2020年の越境ECの販売額は19年から5割以上伸びたというところもあります*5。
コロナ下にあってもネット戦略が功を奏し、需要の多いところに効率的に商品を売り込んだ結果です。

■「デジタル大国」中国の驚くべき通販事情

日本でも、コロナ禍で通販の需要は伸びましたが、中国はそれ以前からデジタル大国としての通販の広がりがすさまじい国でもあります。

2020年の11月11日0時に始まった中国最大のネット通販セール「独身の日」では、ピーク時の注文件数が1秒当たり58.3万件にのぼりました*6。
特に若者は、いわゆる「インフルエンサー」の影響を強く受けるほか、動画共有サイトTikTokで流れる短い動画の間に購入を決めてしまうという勢いです。

コロナ禍をものともしなかった購買意欲の旺盛さは魅力ではないでしょうか。

 

進出を応援する各種公的事業

さて、中国に限らず、海外進出の足がかりとして比較的ハードルの低い越境ECについては、各種支援事業があります。

■海外のECバイヤーと日本製品のマッチング〜JETRO

ひとつはJETRO(=日本貿易振興機構)が実施している「ジャパンモール事業」です。
世界60以上のECバイヤーに商品を紹介するというもので、企業が自社商品を登録することで、海外のバイヤーとマッチングする場所をオンライン上に設けるというものです。

商談が持ちかけられた場合や、商社探しのサポートも受けられます(図1)。

 

図1 ジャパンモール事業の流れ
(出所:「海外におけるEC販売プロジェクト JAPAN MALL」JETRO)
https://www.jetro.go.jp/services/japan_mall/

これまでに、陶器メーカーや菓子・食品メーカー、化粧品メーカーや刃物メーカーなどがアジアを中心に世界進出を果たし、さらなる販路拡大を目指しています*7。

特定の国や地域のバイヤーからは引き合いを受けないようにする、といったことも可能です。まずは小ロットでの発注が多い傾向もあるようですが、これはむしろ中小企業の場合、足がかりとしては好ましい場合も多いことでしょう。

■JAPANブランド育成支援事業〜中小企業庁

もうひとつは、中小企業庁が実施している「JAPANブランド育成事業」というのがあります。
こちらは、一社だけでは海外展開が難しい場合に、それぞれに特技を持つ複数の中小企業がグループになることで海外へ進出していくことに対し、最大200万円の補助金を拠出するというものです*8。

こちらは越境ECに限られたものではありません。ブランドコンセプトや基本戦略を固めるための専門家の招聘、市場調査などに利用できます。

これまでには、各工程に強みを持つ企業が集まりひとつの家具ブランドを立ち上げ、海外のバイヤーから評価を受けた富山県の協同組合設立の事例、、鹿児島産の食材を香港、上海、台湾を中心にしたアジアに売り込んだ事例などがあります*9。

 

デジタル時代の海外進出にECという選択肢

「海外進出」と言っても、何から始めて良いかわからないという事業者がほとんどでしょう。
しかし越境ECという形であれば、これら補助事業を利用することで大がかりな先行投資を避けることができます。

なによりも、展示会出展などバイヤーをも見つけるという最初のステップに踏み出しやすくなります。

なお、マレーシアとシンガポールのサイトで甘酒や日本酒販売をしている酒造会社は、「販路拡大の手段として越境ECは取り組みやすい」と話しています*10。

「Made In Japan」が世界での輝きを保っているうちに、将来的な販路維持のための方法として、これらの公的事情にアクセスしてみると、生き残りに必要なのは何なのかが見えてくることでしょう。

 

*1
「2022年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」ANAホールディングス
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9202/tdnet/2006212/00.pdf p4

*2、5
「中国の消費者、ネットで日本製品爆買い 航空貨物も活況」朝日新聞デジタル 2021年5月16日
https://digital.asahi.com/articles/ASP5H6GYKP5DULFA03L.html

*3、4
「中国の消費者の日本製品等意識調査」JETRO
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/820261128897b417/20180028.pdf p57、p58

*6
「デジタル大国中国」東洋経済 2020年11月21日号 p29

*7「海外におけるEC販売プロジェクト JAPAN MALL」JETRO
https://www.jetro.go.jp/services/japan_mall/

*8、9
「JAPANブランド育成支援事業について」中小企業庁
https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/chiiki/japan_brand/2018/180618global3.pdf p1、2

*10「越境EC、コロナ下活況 『巣ごもり』で急伸 輸出拡大の次の一手」日本農業新聞 2021年9月20日
https://www.agrinews.co.jp/news/index/26747


【著者プロフィール】

清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。

ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。

https://twitter.com/M6Sayaka 

 

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