組織・チーム
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グローバル人材の採用に不可欠な「CQ(文化的知能指数)」って何?

少子化で、今後人口が減っていくと言われる日本市場。

人材不足に悩むIT企業や、地方のメーカーなどでも、スタッフに外国人を入れるケースが増えているようです。国内でもグローバル対応が始まっています。

さらには製造業におけるコンテナリゼーションによるグローバル化もあり、「グローバルに対応した人材を欲しい」と考える企業が増えてきました。

企業が新たに人を採用する場合、気をつけたいポイントがあります。

「英語力など語学力が高ければ良いのでは」と思われるかもしれません。
しかし、実は国際チームでスムーズに業務を遂行する能力は少し異なります。
それは大学名やIQだけでは測れないというのです。

「文化的知能(CQ)」が重要になる時代

それでは、海外で活躍してほしい人材・グローバルなチームを率いてほしい人材には、何が必要なのでしょうか。

シンガポールの南洋理工大学の経営学教授、スーン・アン氏によると、それは文化的な柔軟性、もっと言えば、「異質なものに対する柔軟性」です。
グローバルなチームでの仕事では「文化的ギャップ」と言われるものが発生します。このギャップを埋めるのに、必須とも言われる能力です。

「 The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ) なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか」
に出てくるスーン・アン氏のエピソードをご紹介します。

複数の多国籍企業から要請を受けて、「Y2K問題」に対処するためさまざまな国のプログラマーを集めたチームを編成したそうです。
しかし「ただ英語ができる優秀なプログラマー」を集めただけではうまく行きません。

プログラマーたちは間違いなく知的で経験豊富だったが、協調性はがっかりするほど低かった。たとえばインドとフィリピン出身のプログラマーが問題の解決策で合意しても、他のメンバーがそれとは異なる、両立できないかたちで実装する、といった具合に。全員が同じ言語を話しているのに、文化的ギャップを埋め、異なる仕事のスタイルを理解するのに苦労していた。(*1)

こうした問題に対しては、実は英語などの語学だけでは不十分。
「CQ」つまり、文化的知能と言われるものが重要になるというのです。

さまざまな成功と結びつくCQ

「文化的知能(CQ)」とはなんでしょうか。

一部のヨーロッパの国では、直接本題に入るほうが好ましいが、インドでは関係構築に時間をかけることが重視される。文化的知能が高い人なら、その事実に気づくだろう。(*2)

つまり、相手によって文化背景が違うことを理解し、柔軟に対応できる能力のことのようです。
欧米の人々が日本人に対するときの例も本書に出てきます。

イギリス人やアメリカ人は、自らの考えを日本人の同僚に伝えたとしても、相手が沈黙したままなので驚くかもしれない。文化的知能が低い人なら、日本人の反応を無関心の表れと受け取る。一方、文化的知能が高い人なら、日本では相手から反応を得るためには、はっきりとフィードバックを求めることが必要なのだと理解する。(*3)

確かに、日本人は相手から意見を求められない限り黙っていることが多いようです。それを良しとする文化があるかもしれません。けれど、それは決して「無関心」なわけではありません。

こんな風に誤解されてしまうと、ビジネスは難しくなるでしょう。

そして、このサインを読み取る能力が一貫して他者より高い人がいることにシンガポールのアン教授は気づいたのです。そして開発したのが「文化的知能(CQ)」です。
CQとは、異なる文化的規範に対する感受性を測るための評価基準です。

「 The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ) なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか」の著者であるBBC Futureの元シニア・ジャーナリストのデビッド・ロブソンは、「賢く」いるために、文化的知能(CQ)が重要だと言います。

そして今このCQが、さまざまな成功の指標と結びついていることが明らかになりつつあるといいます。
海外に派遣された社員が新たな生活に適応する速さ、国際的な営業チームの成績、参加者の交渉力、海外に留学する学生、災害地域に派遣されるボランティア、インターナショナルスクールの教師、などにも影響するそうです。

外資系企業で働いている人なら、この文章が意味するところに気づくかもしれません。

私がかつて働いていたマレーシアの営業チームには世界各国のお客様がいました(マレーシア自体が多民族国家です)。
そのため、お客様の文化に合わせて対応を変えることが重要視されました。

例えば、イスラムの戒律が厳しい国から来た顧客に対しては、できるだけ同性スタッフが対応する、異性スタッフは握手は避けるーーみたいなことです。
別に知識が豊富でなくても良いのです。未知の文化圏の方もいますから、お客様に教えてもらいながら対応を変えるのです。

また、海外のインターナショナル・スクールでは、グローバルに対応するため、オープンマインドであることを目標の一つにしていることが多いです。

自分が習った知識に固執しすぎないことも重要

こう書くと、「海外についての知識を覚えたらいいのでしょう?」と思うかもしれません。
ところが本書にはこうあります。

重要なのは、文化的知能の評価基準が、特定の文化に関する知識だけでなく、未知の国々で誤解が起こりやすい分野に対する感受性や適応力も測ろうとしていることだ。(*4)

重要なのは、決して「知識の差」ではなく、未知の文化についても対応力が発揮されることです。
どちらかと言えば、知識そのものよりも「柔軟性」が大事なのかもしれません。知識を知っている人は「知っている知識」に固執してしまうからです。

例えば、「日本人が礼儀正しい」という先入観に強く囚われている外国人がいます。

こういった考えに染まった外国人の中には、日本に強く憧れて住んでみたのに、「あまりに理想と違ってがっかりした」と語る人たちがいます。
彼らは、あまりにその先入観にこだわるために、ステレオタイプから外れた日本人、例えば人前で誰かを怒鳴ったり、挨拶をしない日本人を見ると、ショックを受けてしまうのです。

同様に「イスラム教徒はこういうものだ」と固定した考えを持った日本人も同様です。イスラム教徒にも、戒律に厳しい東海岸の人々から、モダン・ムスリムと言われる都会の人々までさまざまな人がいます。
実際に生活してみると、単純化された人種のステレオタイプが全ての人に当てはまることはほとんどないことに気づくのです。

異文化の人と対応するには、文化に対する知識だけではなく、未知のものへの開放性・オープンマインドが重要なのです。それは生来のIQなどの賢さというよりは、「柔軟性」に近いものだと思います。

そしてそれは、誰もが国外につながる可能性がある時代、身につけておくべきものになっていくのかもしれません。

(出典)

(*1)-(*4)
デビッド・ロブソン「The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ) なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか (Japanese Edition)」

 

 


【著者プロフィール】

のもときょうこ 

早稲田大学法学部卒業。損保会社を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者、「マレーシアマガジン」編集長などを歴任。著書に「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。編集に松井博氏「僕がアップルで学んだこと」ほか。

 

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