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経済産業省が推奨するダイバーシティ―経営の「3拍子」とは?|事例企業を含めてわかりやすく解説

社会は様々な人々で構成されています。その中にはマジョリティーといわれる多数派もいますし、マイノリティーと呼ばれる少数派もいます。
これまでビジネスは主に若い男性が担ってきたという状況があり、それがビジネスにおけるマジョリティーでした。
しかし、現在は多様な人々の社会参加を前提としたダイバーシティ経営が推進されつつあります。

ダイバーシティ経営とはどのようなものでしょうか。
経済産業省が推奨する「3拍子」を軸にして、ダイバーシティ経営について考えてみたいと思います。

 

ダイバーシティ経営の必要性

~ダイバーシティ経営の定義~
まず、定義を押さえておきましょう。
経済産業省は、ダイバーシティ経営を以下のように定義しています *1:p.4。

「多様な人材(注1)を活かし、その能力(注2)が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、 価値創造につなげている経営(注3)」

(注1)「多様な人材」とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性も含みます。
(注2)「能力」には、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性なども含みます。
(注3)「イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」とは、組織内の個々の人材がその特性をいかし、いきいきと働くことの出来る環境を整えることによって、「自由な発想」が生まれ、生産性を向上し、自社の競争力強化につながる、といった一連の流れを生み出しうる経営のことです。

この定義をみると、「多様な人材」には実に様々な人が含まれていることがわかります。
私たちの社会には元々こうした多様性があり、様々な人々で成り立っていたにも拘わらず、それが見えにくかったということでもあります。

ダイバーシティ経営は社会に暮らす全ての人々に焦点を当て、どのような人であっても生き生きと働けるような環境整備を整えることを前提にしています。
第一義的にはこのこと自体が重要ですが、それが生産性向上や競争力強化にもつながる―それはどういうことなのでしょうか。

~ダイバーシティ経営の成果~
以下の図1は、経産省の「ダイバーシティ経営企業100選」を受賞した企業と受賞したことがない企業の成果を比べたものです。

図1 ダイバーシティ経営を行う中堅・中小企業とそうではない企業の経営成果
出典:*2 経済産業省(2021)「~3拍子で取り組む!~ 多様な人材の活躍を実現するために」 p.1
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/2021_03_diversityleaflet.pdf

人材の採用や定着、売上高・営業利益など、主な経営成果のすべての項目において、ダイバーシティ経営に取り組む中堅・中小企業は、そうでない企業と比べて成果が上がっています。
このことから、人材の多様化は企業の生産性を向上させ、人手不足解消につながることがわかります。

それだけではありません。
ダイバーシティ経営はイノベーションの創出を促し、顧客満足度・社会的認知度の向上など外部評価を高めるといわれています *1:p.4

 

ダイバーシティ経営の「3拍子」とは

ただ、闇雲に取り組むのは危険です。
経営環境を整えない状態で人材の多様性を高めるだけではかえって生産性を低下させかねない事態を招くおそれがあります *2:p.2。
では、効果的にダイバーシティ経営をするにはどのようなことに留意すればいいのでしょうか。

~「インクルージョン風土」~
それにはまず、組織風土が大切です。
最近、インクルージョンあるいはインクルーシブという言葉がよく聞かれるようになってきました。
インクルージョンとは、

「一人ひとりが『職場で尊重されたメンバーとして扱われている』と認識している状態」

です *1:p.6。

多様な人材を職場に迎えるだけでは不十分です。
多様な人材が能力を発揮できる「インクルージョン風土」がなければ、ダイバーシティ経営は実現しません。

例えば、筆者は長年、外国人の就労支援に関わってきましたが、外国人が能力を発揮できるような職場ばかりではないことを見聞きし、大変残念に思ってきました。
せっかく多様な人材を迎えてもその能力が存分に発揮できる職場環境を整えなければ意味がありません。

~ダイバーシティ経営の「3拍子」~
より具体的なポイントをみていきましょう。
経済産業省はダイバーシティ経営を実現していくにあたって、次の「3拍子」を揃えることが大切だと唱えています *2:p.3。

図2 ダイバーシティ経営の「3拍子」
出典:*2 経済産業省(2021)「~3拍子で取り組む!~ 多様な人材の活躍を実現するために」 p.3
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/2021_03_diversityleaflet.pdf

先ほど、ダイバーシティ経営をしている企業としていない企業の成果を比較しましたが、今度は、「3拍子」の揃った中堅・中小企業とそうでない企業とを比べてみましょう *2:p.3。

 

図3 「3拍子」揃った中堅・中小企業とそうでない企業の経営成果
出典:*2 経済産業省(2021)「~3拍子で取り組む!~ 多様な人材の活躍を実現するために」 p.3
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/2021_03_diversityleaflet.pdf

図3をみると、「3拍子」揃った中堅・中小企業は、先ほどみた図1と同じように、人材の採用や定着、売上高・営業利益などの主な経営成果のすべての項目において、そうでない企業より成果が上がっていることがわかります。

経済産業省は、 Excel上で質問に答えると自社の「3拍子」の状況が簡単に診断できる「改訂版 ダイバーシティ経営診断シート」を提供しています *3。
このツールを使って、まずは自社の状況を把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

ダイバーシティ経営の事例

では、実際にダイバーシティ経営をしている企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか。
ここでは、経済産業省が「令和2年度 100選プライム」に選定した企業についてみたいと思います。

~日本ユニシス株式会社のインパーソナル・ダイバーシティ~
情報通信業大手の日本ユニシス株式会社は、ダイバーシティ経営のためにさまざまな取り組みをしていますが、本稿ではその中の「インパーソナル・ダイバーシティ(個々人の多様化)」に注目したいと思います。

「役割葛藤」という言葉をご存じでしょうか。「役割葛藤」とは、複数の役割からくる期待が異なったり対立したりしてジレンマを起こすことです。
例えば、会社では「仕事役割」を担いますが、幼い子どもを育てている人は家庭では「親」としての役割も担っています。
仕事役割からは完成度の高い仕事をすることを期待されますが、もし子どもが熱を出したらどうでしょう。親としての役割からは仕事を早退して子どもを病院へ連れて行ったり看病したりすることが求められ、この2つの役割が葛藤をもたらします。
これは多くの人、特に働く女性が経験する葛藤ではないでしょうか。筆者もこの葛藤にはずいぶん悩まされました。

しかし、「役割葛藤」にもプラス面があります。
それは、この葛藤の調整や解消のために努力をすると、そのことが内省を促し、他者の多様な価値観を理解し受容できる自己形成につながるという側面です。
それがダイバーシティの実現に寄与するのです *4:p.1。
そのため、企業としては、社員が会社外でも多様な役割を担い、それぞれの役割に積極的に関与し、「イントラパーソナル・ダイバーシティ」を実現できるように支援することが大切です。

そこで、日本ユニシスでは、このイントラパーソナル・ダイバーシティを推進し、社員をポートフォリオ化する取組を進めています *4:p.16。

図4  イントラパーソナル・ダイバーシティの概念図
出典:*4 経済産業省(2021)「令和2年度 新・ダイバーシティ経営企業100選 100選プライム 100選 ベストプラクティス集」 p.16
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/r2besupura.pdf

図4から、個人のもつ様々な役割が個人に視点や視座、視野、考え方、価値観などをもたらすと同時に、様々なコンピテンシー(実践能力)の向上につながることがイメージできます。

同社のポートフォリオ化は、個人が持つ属性だけではなく、例えば「育児」や「ボランティア」などの役割や経験の多様性、さらにそれらがもたらす「決断力」「適応力」などのコンピテンシーや「考え方」、「価値観」などを可視化することを目標として、2020年時点では、データベース化の設計段階にありました。
こうしたコンピテン シーや観点は、仕事上の役割と紐づけられ、人材マネジメントの改革と連動するように設計されています。

 

おわりに

現在、ビジネスを取り巻く環境変化はスピード感を増し、不確実で不透明な状況の下、企業はこれまで経験しなかった様々な課題を抱えています。
そうした課題を解決し新たな価値を産み出していくためには、これまでとは異なる人材を活用し、これまでにない視点を生かして戦略を練る必要があります。

多様な人材の能力や特性を最大限に活かす「ダイバーシティ経営」の前提は、先にみたとおり、誰もが生き生きと働ける職場環境を整えることです。
それは、働くことで生じる個人の様々な葛藤や課題の解消に向けて、企業が社員を支援することにも通じます。

ダイバーシティ経営の浸透は、企業にとっても社員にとっても望ましい社会の実現につながるのではないでしょうか。

 

*1
経済産業省(2021)【改訂版】ダイバーシティ経営診断シートの手引き 多様な個を活かす経営へ ~ダイバーシティ経営への第一歩~」(2021年3月)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/turutebiki.pdf
*2
経済産業省(2021)「~3拍子で取り組む!~ 多様な人材の活躍を実現するために」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/2021_03_diversityleaflet.pdf
*3
経済産業省(2021)「【改訂版】ダイバーシティ経営診断シート」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/turusimenban.pdf
*4
経済産業省(2021)「令和2年度 新・ダイバーシティ経営企業100選 100選プライム 100選 ベストプラクティス集」(2021年3月)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/r2besupura.pdf

 

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