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バイトテロの傾向と対策。悪ふざけのつもりが刑事事件・民事事件に発展すること

イマドキの若者アルバイトは、幼少期から生活環境にインターネットがあり、デジタルメディアを使うことが当たり前の世代です。そんな彼らは、通称「デジタルネイティブ」と呼ばれます。主に、30代より下の世代を指し、「デジタルネイティブ世代はスマホやSNSがデフォルトである環境に生きている。コミュニティはリアル社会だけではなくデジタルにも拡大しており、どちらも切り離せない“リアル”だ」*1という考え方が特徴です。

日常生活で「身近なインターネット接続機器」と言えば、「スマートフォン」が代表格ですが、このスマートフォンによるインターネット利用時間は年々増加傾向にあり、平日一日あたりの利用時間は、10代で143分、20代で129分という調査結果が出ています*2。

そして、スマートフォンの普及をたどるかのように、SNSの利用割合も上昇しています*3。

図1は、代表的なSNSの利用率の推移を、年代別に表したグラフです。就労形態としてアルバイトが多い、10代、20代、30代の、2016年を比較してみると、「何らかのSNSを利用している(赤色の棒グラフ)」の割合が、10代で81.4%、20代で97.7%、30代で92.1%を占めており、ほとんどのデジタルネイティブが「何らかのSNS」を利用していることが分かります。

図1:総務省/平成29年版情報通信白書第1部第1章第1節「スマートフォン社会の到来」p7
代表的SNSの利用率の推移(年代別)より抜粋
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/pdf/n1100000.pdf

オンライン/オフラインを問わず、複数のコミュニティに属することが当たり前であるデジタルネイティブ世代は、「周囲からどう見られているかを意識している」という特徴があり、「自分らしさは周囲が決めるもの」だと考えています*1。

しかし、時として、SNSを通じて「周囲からどう見られるか、どう見られたいか」にこだわりすぎたため、知らぬ間に罪を犯す可能性があることを理解しなければならない世代でもあります。

 

実際に起きた「バイトテロ」による事件

「バイトテロ」とは、勤務先でアルバイトスタッフが不適切な動画を撮影しSNSに投稿する行為を指します。その結果、企業は社会的信用を失い、時には株価暴落や倒産に追い込まれることもあります。

一つの事例を見てみましょう。

アルバイトAが、食材をごみ箱に捨てた後、再びまな板に置く様子を、アルバイトBが携帯電話で撮影し、のちに、Bの友人CがSNSに投稿し拡散され、当該企業へ批判が殺到。これを受け、AとBは退職処分となり、さらにBとCは「偽計業務妨害」、Aは「偽計業務妨害ほう助」の容疑で書類送検される事件がありました。

法的措置について補足すると、一般的に、バイトテロを起こしたアルバイトは、刑事と民事の両方で法的責任を問われる可能性があります。

刑事上の責任としては、先の「偽計業務妨害罪(刑法第233条)」のほか、店の商品や備品を傷つけたり壊したりした場合に「器物損壊罪(刑法第261条)」が成立する可能性があります。
過去には「料理店の食器に放尿した行為」について、器物損壊罪の適用が認められたケースがあります。これは「一度尿の付いた食器は、誰も使いたがらない=本来あるべき効用を失った」という理由から適用されました。

これら刑事上の罪により起訴され、有罪判決が確定すると、バイトテロを起こしたアルバイトは「犯罪者」となります。

民事上の責任としては、民法第709条に基づく「不法行為責任」、あるいは、民法第415条に基づく「債務不履行責任」が発生し、これらの責任を追及する法的措置がとられる可能性があります。
前者は、アルバイトが行った違法性のある行為により、店側が損害を被ったことに対する賠償責任を意味します。
後者は、アルバイトが労働契約に基づく義務に違反したため、店側が損害を被ったことに対する賠償責任を意味します。

アルバイトA、Bともに当時10代の若者でした。ほんの悪ふざけのつもりが、企業に多大な被害を与え、自分自身の将来へも暗い影を落とすことになるとは、当人たちは知る由もなかったでしょう。

 

優良アルバイトがおこしたSNS上での情報流出

筆者の顧問先でも、これも「バイトテロ」に当たると思われる事例があるので紹介します。必ずしも「悪ふざけ」だけでなく、「わざと、企業の価値や評判を貶めるような行為」も、立派な違法行為となるため見逃すことはできません。

小売店を営む顧問先のX社へ、アルバイトとして入社してきたYは、勤務態度も真面目な優良アルバイトでした。Yの提案で酒類の販売に力を入れるようになり、アルバイトながらもYが酒類全般を取り仕切るようになりました。

Yが入社して2か月経過した頃、X社の社長から電話がありました。
「先生、Yは非常に優秀でよく働いてくれています。ちょっと変わった行動もありますが…」
その言葉が気になり、追及してみると「バイト中にしょっちゅう店内を撮影している」ということでした。これは何かあるな、と疑いましたが、Yに対する社長の人望は厚く、それ以上詮索することはありませんでした。

そして入社から4か月ほど過ぎた時、Yが突然、退職を申し出てきました。その直後、SNS上の掲示板サイトに、Yが匿名でX社に関する様々な情報を流出させていたことが発覚しました。そこで初めて、「店内を撮影していた」理由につながりました。投稿していた内容も、X社を「ブラック企業である」と名指しで批判したり、Yが一任されていた酒類について「期限切れの商品を無理矢理陳列させられている」などと、虚偽の事実を発信したりしていました。即刻、全ての投稿を削除させたため、大事には至りませんでした。

なぜこのような投稿をしたのかYに尋ねると、一言、「SNSで炎上させてみたかった」と。
社長も筆者も言葉を失いました。

 

バイトテロを未然に防ぐために

この事例を受けて、X社では、社員アルバイトを問わず、一人の労働者に作業を一任することを見直しました。バイトテロに限らず、一人の労働者が特定の業務に就くことは、リスクの温床になりかねません。また、アルバイトは労働時間や勤務日数が少ないため、責任者の目が行き届かないことも考えられます。日頃からアルバイトとのコミュニケーションを積極的に行い、気になる行動・言動を初期段階で察知することが、リスクマネジメントの基本となります。

また、社内ルールを作り、「就業中に個人携帯端末を使用しないこと」や「就業中に個人的なSNSの利用(投稿、閲覧)を行わないこと」を規定し、違反した場合は懲戒処分の対象となることも明記しました。

同時に、過去の事例をもとに、バイトテロを起こした本人たちが、その後どのような社会的制裁を受けたのか、法律上どのような不法行為に当たるのか、など、現実を直視させるための研修も実施しました。

バイトテロを起こす従業員は、得てして「ソーシャルリスク」を考えずに投稿しています。情報リテラシーの低さも原因の一つにありますが、いわゆるデジタルネイティブたちにとって、「リアルな社会とデジタルの社会との境界線が不明瞭ゆえの落とし穴」なのではないかと感じています。

 

おわりに

バイトテロにより企業が被る被害は、経済的な損失だけでなく、社会的信用の失墜、株価下落など計り知れません。インターネット上に拡散されてしまった投稿は、一生、消えることなく漂い続けます。そして何より、バイトテロは犯罪である可能性が高いのです。企業が受けるダメージ然り、大切なアルバイトが犯罪者になることも避けなければなりません。
SNSの利用方法に特化した社内教育や研修を充実させ、「悪ふざけ」が発端で「犯罪者」にならぬ(させぬ)よう、社内全体の意識改革を推進しましょう。

 

*1引用:ITSearch徹底した調査で若者の実態に迫る!SHIBUYA109リアル×デジタル戦略
https://news.mynavi.jp/itsearch/article/marketing/4794
*2参考:総務省/平成29年版情報通信白書第1部第1章第1節「スマートフォン社会の到来」p5
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/pdf/n1100000.pdf
*3参考:総務省/平成29年版情報通信白書第1部第1章第1節「スマートフォン社会の到来」p6
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/pdf/n1100000.pdf

 

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特定社会保険労務士
浦辺里香 (うらべりか)
早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞で勤務。社労士試験に合格後、事務所を開業し独立。その翌年、紛争解決手続代理業務試験に合格し、特定付記。

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