全世界で猛威を奮っている、新型コロナウイルス感染症。その影響は大きく、感染拡大防止策を目的とした緊急事態宣言によって他人との接触のある場への外出自粛が呼びかけられました。そのため、日本経済も大きな打撃を受けました。国民の消費活動は鈍化し、その結果、売り上げの激減や業績の悪化を経験する企業・店舗が増えました。このような経済活動への影響の結果は、当然の如く雇用面にも現れています。今回は、この未曾有の感染症の影響が日本の経済、特に求人市場に及ぼした影響について見ていきます。
目次
有効求人倍率の推移
結論から述べると、新型コロナウイルス感染症とそれに伴う活動自粛の影響が見られる期間について、日本国内の有効求人倍率は前年同月比較で減少しています。こちらは、該当期間の有効求人倍率の動きを示したグラフです。
※全体=新規学卒者を除きパートタイムを含む
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」を加工
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00037.html
日本における有効求人倍率はここ数年上昇傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染症が国内で初めて確認された1月以降、減少に転じていることがわかります。これは、全体・パートタイムに共通して言える傾向で、雇用形態に関わらず、今回の活動自粛の影響が色濃く出ているものと考えられます。
参考に、リーマンショックの影響で有効求人倍率が減少した年の推移と比較してみます。
※全体=新規学卒者を除きパートタイムを含む
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」を加工
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/ippan/2009/09/index.html
リーマンショックが生じた9月以降有効求人倍率は同じく減少していますが、この年はそれまでも緩やかな減少傾向にあったことに加え、減少幅についても新型コロナウイルスによる影響時の方が大きいことがわかります。こちらは同様のグラフですが、さらに推移を細かく見るためにクローズアップしたグラフです。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」を加工
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00037.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/ippan/2009/09/index.html
リーマンショック後のパートタイム有効求人倍率の変動は9月から12月の4ヶ月間で0.13ポイント低下(1.2倍→1.07倍)しているのに対し、新型コロナウイルスの影響による変化は1月から4月の4ヶ月間で0.19ポイントの低下(1.63倍→1.44倍)でした。この数字からも、今回の新型コロナウイルス感染症による経済・求人への影響はかなり大きいということがわかります。
産業別新規求人数
新型コロナウイルス感染症対策の経済への影響は多分野に広がっていますが、その影響の大きさは産業や分野別に特徴が見られます。
次のグラフは、新規求人数の前年同月比を産業分野別に集計したものです。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」を加工
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00034.html
このグラフを見ると、調査対象のほとんどの分野で新規求人数は前年同月比マイナスに落ち込んでおり、今回の影響が広い分野の経済に渡っていることがわかります。中でも製造業の減少幅が大きく、宿泊・飲食業、サービス業も続いています。
今回の新型コロナウイルス感染症の影響は世界中に及んだため、結果世界的に製品需要の減少が起きました。その影響を受け、世界中の製造業は生産調整がおこなわれ、製造業全体として減収傾向となっていることが考えられます。また、アジアなど影響の大きかった地域の工場が閉鎖・休止し、ラインが減少したことも要因の一つとなっている可能性があります。
一方、宿泊・飲食業の新規求人数が落ち込んでいるのは、日本国内だけを見ても分かるように、感染症の拡大防止のため、外出や他県への移動の自粛要請を受け、外食や旅行の需要が減少したためでしょう。また、同様の流れは世界的に見られており、加えて日本国政府の方針として渡航者の制限や渡航者に対する自主隔離の要請もあり、訪日外国人数も大きく減少しました。このような流れの影響が日本国内の宿泊・飲食業を直撃し、今回の結果につながったと考えられます。
都道府県別有効求人倍率数
日本全国に緊急事態宣言が出されるなど、全国的に影響を与えた新型コロナウイルス感染症ですが、経済活動への影響は地域差も見られました。こちらは、都道府県別に見た有効求人倍率のグラフです。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」を加工
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html
有効求人倍率のグラフは青色が濃い地域は有効求人倍率が高く、グレーの地域は低くなっており、前年同月比のグラフはオレンジ色が濃い地域がマイナス幅が大きく、グレーの地域は小さくなっています。
地域別に見ると、東海・中部地域と中国地方を中心に、前月同月比の減少幅が大きく、北海道、福島県や茨城県では他地域に比べると影響が少ないようです。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の影響で、全国的・他業種にわたり経済的な影響が大きく、その結果とし有効求人倍率が下がったことがわかりました。これは、感染症拡大防止に向けた政策が経済活動の鈍化につながったためと考えることができます。
今回、全国的に緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動が戻りつつあります。今後は、これまで自粛・休止していた店舗や企業が営業再開、あるいは営業範囲を広げていくと考えらます。少しずつ経済活動が戻るにつれ、企業活動は活発化し、求人・採用活動も以前の水準へ戻っていくことでしょう。一方で、採用活動がまだ緩やかな今が、企業にとっては狙い目の時期ということもできます。
近々採用活動の再開を検討している場合、有効求人倍率が戻りきらないうちに他社に先駆けいち早く再開することで、優秀な人材を獲得できる可能性があります。
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