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2020年度最低賃金引き上げ額から見えること

厚生労働省は、2020年度の最低賃金改定を発表しました。最低賃金は、労働者の生活の安定を目的に、不当に低い賃金で働かされることがないように定められた制度です。最低賃金の金額は都道府県毎に定められています。その金額の決定においては、(1)労働者の生計費(2)労働者の賃金(3)通常の事業の賃金支払い能力の3点を総合的に勘案し、決定するものとされています。つまり、労働者がその地域において健康で文化的な最低限度の生活を営むことができる金額、そして、事業の存続において負担とならない金額であることが基準となっていると考えられます。

社会全体として物価が上昇すれば最低賃金は上がりますが、経済が低迷し企業の生産性が低下すると最低賃金の上がり幅が小さくなる、あるいは下がるということです。つまり、最低賃金の金額には、社会全体の経済状況が色濃く反映されていると見ることができます。2020年度はコロナ禍が深刻化して初めての最低賃金改定ということで、その影響が注目を集めていました。今回は、2020年度の最低賃金改定額や前年度比など、最新の情報を紹介します。

目次

2020年度の最低賃金改定は0〜3円引き上げにとどまる

都道府県別の変化

まとめ

2020年度の最低賃金改定は0〜3円引き上げにとどまる

2020年度は新型コロナウイルスによる景気の低迷を受け、引き上げ額の目安が発表されませんでした。これは、リーマンショックの影響を受けた2009年度以来のことで、実に11年ぶりでした。(※1)次のグラフは2000年以降の最低賃金(全国平均)の引き上げ額の推移をまとめたものです。

※出典:厚生労働省「令和2年度 地域別最低賃金 答申状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13061.html

「平成14年度から令和元年度までの地域別最低賃金改定状況」を加工して引用
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000541154.pdf

最低賃金の金額はほぼ毎年引き上げられており、特に2016年度以降は毎年20円以上となっていました。対して2020年度の引き上げ額は+1円でした。かろうじて引き上げ傾向は維持されましたが、賃上げのペースは大きく落ちる結果となりました。

2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う外出自粛の影響があり、経済は低迷傾向にあります。今回の最低賃金については、そのような社会的情勢や経済状況の影響が反映された結果と考えられます。今年度の賃金変更については、この最低賃金の金額をもとに検討される企業も多いでしょう。今回の結果を受け、社会全体の賃金水準に大きな影響を与えることは間違いないと考えられます。その結果労働力や企業の生産性、社会全体の経済にどのような影響が生じるのか、丁寧に見ていく必要がありそうです。

都道府県別の変化

最低賃金は都道府県別に設定されます。そのため、対前年度比較や地域差を見ることで、地域毎の状況を追う手がかりともなります。2020年度の各都道府県別最低賃金額は次の通りとなりました。

※出典:厚生労働省「令和2年度 地域別最低賃金 答申状況」を加工して引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13061.html

改定後の最低賃金額全国平均は902円でした。昨年度は901円でしたから、全国平均の引き上げ額は+1円ということになります。

40県において最低賃金は引き上げとなりました。引き上げ額は1円が17県、2円が14県、3円が9県でした。残りの7都道府県では金額は据え置きであり、引き下げとなった地域はありませんでした。据え置きとなった都道府県は北海道・東京都・京都府・大阪府・広島県・山口県、静岡県でした。宮城県や愛知県、福岡県などでも+1円の引き上げとなっており、全体として首都圏や地方都市圏において据え置き、あるいは控えめな引き上げとなっていることがわかります。このことから、都市圏において特に新型コロナウイルス感染症の影響による経済自粛の影響が大きく生じたと考えることができます。

全国の中で最高額は東京都の1,013円(前年度と同額)、最低額は秋田県・鳥取県・島根県・高知県・佐賀県・大分県・沖縄県の7県同額で、792円(いずれも前年度は790円)でした。最高額と最低額の金額差は221円となりました。昨年度は223円でしたので、地域毎の差は縮まった形となります。最高額に対する最低額の比率は78.2%(昨年度は78.0%)でした。

まとめ

最低賃金は、その年の経済活動の状況や労働者の置かれている経済水準を反映すると考えられています。リーマンショックのような社会的に大きな影響を生じさせる出来事があった年には、例年に比べて大きな変化が見られることがあります。

2020年度においては、新型コロナウイルス感染症が世界経済に膨大な影響を与えたことが最も大きなトピックとなることは間違いありません。日本においてもその影響は大きく、様々な数値や傾向として現れています。今回発表された最低賃金の金額、引き上げ額の縮小も、この影響を大きく受けています。ここで注意しておきたいのは、今回最低賃金の引き上げ幅が大きく下がったことは、日本全体の経済の低迷による影響であると考えられるということです。物価が下がったわけではないため、日常生活を送るために必要な生計費は変わっていません。自社における従業員一人ひとりの生活を守ることも必要な視点のひとつでしょう。今回発表された最低賃金の金額についてはひとつの目安として活用しつつ、労働者の生活の状況も勘案し、全ての関係者にとって良いと言える賃金改定を目指すことが大切です。

※1
参考:厚生労働省:平成21年度の地域別最低賃金改正の答申状況について
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/09/h0901-1.html

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