採用課題
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ビジネスの新常識・Web面接 どう進める? 注意事項やコツを再確認しよう

コロナ禍でビジネスシーンにも多くの変化が訪れています。
そのひとつが、面接。

現在ではウイズコロナ、あるいはアフターコロナを見据えた動きも出てきています。
そのような状況の中、今後、Web面接が普及していく可能性が見えてきました。

でも、初めての経験で、その進め方や注意点に戸惑う採用担当者もいらっしゃるでしょう。
Web面接にはさまざまなメリットがありますが、一方で思わぬ危険性も潜んでいます。

そこで、本稿では、採用面接の基本を押さえた上で、Web面接ならではの注意点やノウハウについて最新情報を提供したいと思います。

目次

採用面接の基本

Web面接の特徴とその対策

Web面接のノウハウ

おわりに

採用面接の基本

Web面接について考える前に、まず採用面接の基本的な考え方を押さえておきましょう *1、*2。

公正な採用選考のためには、どのようなことに留意したらいいのでしょうか。

~応募者の適性・能力以外のことに関する質問はしないこと~
本来、採用選考に関係のないことを尋ねるのはタブーです。
社会的差別の原因になり得る個人情報の収集は職業安定法で禁じられています。

以下の表1は面接の主なNG質問事項です。
うっかり質問してしまわないよう注意しましょう。

表1 就職差別につながるおそれのあるNG事項

出典:*3 厚生労働省「就職差別につながるおそれがある 14事項<公正な採用選考をめざして」より筆者、抜粋して加工
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html

次に、以下の図1は、「本人の適性・能力」以外に質問された事項の割合です。

図1 「本人の適性・能力」以外に質問された事項の割合(2018年度、ハローワーク調べ)
出典:*3 厚生労働省「就職差別につながるおそれがある 14事項<公正な採用選考をめざして」
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html

特に家族に関することはつい訊いてしまいがちなので、注意が必要です。

~マイノリティを排除しないこと~
障がい者や難病の人、LGBTQなど性的マイノリティを排除しないことが必要です。
採用選考の担当者のうちのたった1人でも、就職差別につながるような不適切な対応を行えば、企業全体が社会的信頼を失う事態を招きかねません。

国からの助成金など公的な制度の活用も視野に入れ* 4、マイノリティを排除せずに、応募者に広く門戸を開くことが必要です。

~面接前の心構えと体制作り~
これまでみてきたように、面接で不用意なことを訊くと、場合によっては法に触れるおそれもあります。
したがって、場当たり的な対応はタブーです。
面接に先立ち、社内体制を整えておきましょう。

まず、マニュアルやガイドラインを策定、あるいは見直し、全担当者への周知を徹底することが大切です。
必要なのは、「適性・能力のみを客観的に評価する面接方法」の構築です。

質問事項はあらかじめ決めておくのが鉄則です。
応募者の属性ではなく、あくまで本人の適性・能力にフォーカスすることで、応募者の潜在能力も把握できるような方向性がベストです。
質問事項については担当者間で確認し、意思統一を徹底することがリスク回避につながります。

できるだけ客観的かつ公平に評価するために、応募者に対する評価基準を明確にしておくことも必要です。

 

Web面接の特徴とその対策

ここからは、Web面接に絞って、その特徴と対策を考えていきたいと思います。

~Web面接のメリット~
まず、Web面接のメリットについて考えてみましょう。

Web面接のメリットは、次の2つに集約できます。

まず、応募者に移動の負担を与えずに行える点です。
そのため、応募者は時間と交通費が節約できます。
天候や交通トラブルの影響を受けることもありません。

2つ目のメリットは、会社や店舗から遠隔地にいる人も対象にできるということです。
例えば、アルバイト候補者が遠方から転居してくる場合、Web面接なら転居前に自宅で面接をすませ、採用が決まれば、転居してすぐにタイムロスなく新しいアルバイトを始めることができ、効率的です。

~Web面接のデメリットと対処法~
次にデメリットとそれに伴う対処法を考えてみましょう。

デメリットは物理的な問題とコミュニケーションの問題に分けられます。
まず、物理的な問題についてみていきましょう。

筆者も現在、仕事で大学の授業や他の組織でのミーティングなどをほぼ毎日オンラインで行っていますが、これまで様々なトラブルを経験しました。

例えば、インターネット接続が悪くて参加できない人がいたり、途中で接続が維持できなくなってしまうケースもあります。
また、ビデオあるいはマイクがどうしてもオンにならない場合もあります。
ビデオと音声にタイムラグが生じてしまうこともあります。

大切なのは、そうしたトラブルをあらかじめ想定し、トラブルが生じた場合にはどうするかを応募者と共有しておくことです。

次に、コミュニケーション上の問題について考えてみましょう。
画面に相手の姿が見えているとしても、オンライン・コミュニケーションは、対面コミュニケーションとは勝手が違います。

オンライン・コミュニケーションでは、どうしてもタイムラグが生じます。
また、双方の音声がかぶると、聞き取りにくくなってしまうため、聞き手は相手が話している間はミュートにしておくのがマナーです。

そのため、対面コミュニケーションのような双方向性が失われ、一問一答的なコミュニケーションになりやすいというデメリットがあります。
ただし、そのことによって、質問にも回答にも、より集中できるという側面もあります。

もうひとつのデメリットは、ミスコミュニケーションが生じやすいことです。
先ほどお話ししたように、タイムラグが生じるため、口を開くタイミングを失ってしまうことがあります。
また、同時に話し始めてしまい、譲り合っているうちに、大切なことを言いそびれてしまうこともあります。
対面コミュニケーションでは気軽に話せることが言いにくい場合もあります。
さらに、相手の相づちが聞こえず、不安になることもあります。

このように、オンライン上のコミュニケーションには難しい点もありますが、経験的にいえるのは、慣れも大きいということです。
Web面接をすることが決まったら、できるだけオンライン・コミュニケーションの経験を積み、慣れておくことをお勧めします。

~デメリットをメリットに転換する姿勢~
以上、Web面接のメリットとデメリットを考えてきましたが、大切なのは、デメリットをメリットに転換していく発想ではないでしょうか。

Web面接では、トラブルに見舞われる可能性も、ミスコミュニケーションが生じる可能性もあります。
でも、だからこそ、応募者の判断力や適応能力、コミュニケーション能力をより的確に把握することができるという側面もあります。

Web面接のノウハウ

最後に、Web面接に関するノウハウについてお話ししたいと思います。

~ツールの選択と機能の把握~
まず、ツールの選択について考えてみましょう。

現在、Web面接のルーツとして使える、いわゆるオンラインコミュニケーションツールにはさまざまなものがあります。

ツールを選ぶ際に注意しなければならないのは、応募者がどのようなデバイスを使うかです。
現在、スマートフォンは普及が進んでいますが、パソコンを持っていない人は案外いるものです。
したがって、一番、安全なのは、多様なデバイスで使えるツールを選ぶことです。

ツールを選択したら、そのツールの機能を十分に把握しておくことが大切です。

先日、知人のAさんからこんな話を聞きました。
アルバイト先を探していた彼は、ある日、応募した店舗から連絡を受け、急遽、Web面接を受けることになりました。

初めてのWeb面接で緊張していたものの、幸いネット環境に問題なく、心配していたトラブルも起きずに、いい雰囲気で面接が進んでいきました。

ところが、そのうち、Aさんのパソコンのモニターに急にチャット画面が現れました。
そのやりとりは、以下のようなものだったそうです。

「この子、髪が長いけど、大丈夫かなあ」
「どうですかね、ちょっと自覚が足りないかもしれませんね」
「気になるなあ」
「でも人当たりはいいですから、髪を切ってもらえばイケるんじゃないでしょうか」

どうやら、彼には見えないと思って、面接官同士がチャットで感想を述べ合っていたようです。

Aさんは実は髪が伸びかけたまま面接を受けることを大変、気にしていました。
コロナ禍の自粛生活で理容院に行くのを躊躇しているうちに、急遽、面接が決まってしまったのです。

採用担当者はAさんがチャットを見ているとは思っていないようでしたので、Aさんはそうした事情を伝えることもできず、ただ気まずい思いをしていたといいます。

幸いAさんは採用されましたが、心にわだかまりを抱いたままアルバイトを始めることになってしまいました。

このようにツール機能の把握は、スムーズな面接を実現するだけでなく、リスクマネジメント上も重要です。

~セッティングの留意点~
次はセッティングについてです *5。
ポイント別に考えてみましょう。

● 場所
注意点は2つ。
ひとつ目は、インターネット環境が安定している場所であることです。
LANケーブルで接続できる場所がベストですが、もしそれが無理なら、ルーターの近くが安心です。

2つ目は、不必要な音を拾わない個室であることです。
小さな音でも拾ってしまう可能性がありますから、できるだけ静かな部屋を選びましょう。

● カメラとマイク
まず、カメラは角度に注意しましょう。

先日、海外の要人の写真がインターネット上で拡散されました。
彼の服装は、ジャケットにネクタイ。
そこまではよかったのですが、問題は、下半身。
なんと下着姿がカメラに映りこんでしまっていました。

広角レンズは思わぬところまで鮮明に写します。
特に背景は、企業イメージを左右する要素です。
必要なら企業イメージがアップするようなバーチャル壁紙を設定するのもひとつの方法です。

また、レンズと視線の位置関係も大切です。
それによって顔の印象がガラリと変わります。
レンズと視線がまっすぐになるように調整しましょう。

次に、マイクの留意点です。
最近のマイクはデバイスに関わらず性能がいいので、そのままでも問題ない場合が多いのですが、もし聞こえが悪いようなら、ヘッドセット(マイク付きヘッドホン)を使うと安心です。

● デバイスの設定と操作
意外とうっかりしてしまうのが、デバイスの設定と操作です。

まず、面接に使用するデバイスは、ツール以外の音が鳴らないように、ツール以外のウインドウをすべて閉じておきましょう。

使用しないデバイスの管理も大切です。
筆者はパソコンを使ってのオンライン・ミーティングの最中に、スマホのライン通知音が鳴ってしまい、慌てたことがあります。

オンライン・コミュニケーションでは、使用するデバイスにばかり注意が集中してしまいがちですが、他のデバイスの管理も重要です。
    
~面接中の留意点~
面接中は、視線が大切です。
つい画面を見てしまいがちですが、そうすると、相手と視線が合いません。
画面ではなく、カメラを見ながら話しましょう。

さきほどお話ししたように、オンライン・コミュニケーションでは、音声トラブルも珍しくありません。
応募者にこちらの音声がきちんと届いているか、相手の様子をよく観察して確認することが大切です。

 

おわりに

以上、採用面接の基本を押さえた上でWeb面接の特徴や留意点、ノウハウについてみてきました。

Web面接では、対面面接以上に、体制を整え、準備しておくことが大切です。
そして、リスク回避のためには、オンライン・コミュニケーションの経験を積み、起こり得るトラブルを想定してそれらの対処法を想定しておくことが有益です。

Web面接は、応募者の移動に伴う負担がなく、効率的な面接方法です。
優秀な人材を獲得するためにも、Web面接について理解し、前向きに取り組むことが必要ではないでしょうか。

出典元
【以下の閲覧日:2020年7月10日】
*1
厚生労働省「公正な採用選考の基本」
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
*2
厚生労働省「Q&Aよくあるご質問<公正な採用選考をめざして」
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/question.html
*3
厚生労働省「就職差別につながるおそれがある 14事項<公正な採用選考をめざして」
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html#care-14
*4
厚生労働省「障害者を雇い入れた場合などの助成」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/intro-joseikin.html
*5
マイナビ転職「【WEB面接対策】キャリアアドバイザーから聞いた! WEB面接[スカイプ面接]本当にあった失敗話」
https://tenshoku.mynavi.jp/global/z/skype-web-interview

プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。面接官としての経験も豊富。

 

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