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アルバイトの職場環境における心理的安全性の高め方

近年、よく聞くようになった「心理的安全性」。

社員のマネジメントの文脈で語られることの多い心理的安全性という言葉ですが、実はアルバイトの職場環境においても、非常に重要な意味を持ちます。

本記事では「アルバイトと心理的安全性」にスポットを当て、基礎知識から心理的安全性を高める方法まで、見ていくことにしましょう。

目次

心理的安全性とは何か

心理的安全性を高めるためにすべき3つのこと

さいごに

心理的安全性とは何か

まず心理的安全性の基礎知識から解説します。

■心理的安全性とは

心理的安全性とは、簡単にいえば「対人的な不安や恐れがなく、自分らしくいられるかどうか」を示す指標です。

ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソンが提唱した概念で、エドモンドソン教授は以下のように述べています。

心理的安全性とは、大まかに言えば「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」のことだ。より具体的に言うなら、職場に心理的安全性があれば皆、恥ずかしい思いをするんじゃないか、仕返しされるんじゃないかといった不安なしに、懸念や間違いを話すことができる。考えを率直に述べても、恥をかくことも無視されることも非難されることもないと確信している。わからないことがあれば質問できると承知しているし、たいてい同僚を信頼し尊敬している。
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心理的安全性が高い環境であれば、「上司や同僚からネガティブに思われるのでは?」という不安や恐れで萎縮することなく、本来の自分の能力を発揮できるというわけです。

この心理的安全性が注目されるようになったきっかけは、Google社です。

Google社は“効果的なチーム”を作るために圧倒的に重要な要素として「心理的安全性」を挙げ、心理的安全性を高める取り組みを実践しています。

※Google社の取り組みは、以下のページで公開されています。
Google re:Work – ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る

■心理的安全性に関するよくある勘違い

心理的安全性に関しては、あらかじめ注意すべき点があります。

「心理的安全性」を、その言葉のイメージから単に「心理的に安心できる状態」と解釈しているケースが散見されますが、これは間違いです。

間違った言葉の解釈は勘違いを生みます。

▼ 心理的安全性のよくある勘違い
アルバイトに厳しく指導してはいけない
アルバイトに高い目標を与えてはいけない
楽しく和気あいあいとした雰囲気を作らなければならない

心理的安全性の概念で重要なのは、「率直に発言しても、対人関係のリスクを恐れる必要がないという安心」を作ることです。

例えば、マネジャーが間違った指示をしたとしましょう。心理的安全性の高い職場では、マネジャーに意見することに不安や恐れがありません。アルバイトは率直にその場で間違いを指摘できます。

一方、心理的安全性の低い職場では、「意見を言ったら嫌な目に遭うかもしれない」という恐れがあります。アルバイトは意見できず間違った指示に従います。

これは逆もまたしかりです。

どういうことかといえば、心理的安全性が高い職場であれば、たとえアルバイトに厳しく指導したり高い目標を与えたりしたとしても、アルバイトの心が折れることはありません。

“厳しい指導や高い目標で、自分が対人関係のリスクにさらされる”という恐れがないために、厳しい指導や高い目標を受け入れ、前向きに働くことができるのです。

■心理的安全性の低い職場で働くアルバイトのエピソード

ここで、筆者の体験談をひとつお話しましょう。

お昼時、混み合ったハンバーガーショップに入りました。カウンターでレジを担当するのは若い女性で、高校生に見えます。

長蛇の列に彼女は焦った様子で、こちらにも緊張感が伝わってくるほどです。

案の定、注文したハンバーガーをトレーに乗せるタイミングで手がすべり、ハンバーガーを床に落としてしまいました。

客である私は、目の前でその様子を目撃しています。彼女はどう対応したでしょうか。

客に謝って新しいハンバーガーに取り替える——のではなく、慌てて後ろ(厨房側)を振り返り、社員が見ていないことを確認してから、床に落ちたハンバーガーを拾ってトレーに乗せました。

……これが、心理的安全性の低い職場で日常的に起きている実態です。

私は、床に落ちたハンバーガーを、そのまま提供した彼女を責める気にはなれませんでした。

床にハンバーガーを落としたと報告して、厨房に作り直しを依頼することは、強い恐怖が伴うからできなかったのです。

お客様へベクトルを向けて働くべきところ、社員の機嫌を損ねないよう社員を見て働いている。相当に心理的安全性の低い職場なのだろうと、気の毒にさえ思いました。

 

心理的安全性を高めるためにすべき3つのこと

心理的安全性が低いまま放置していれば、トラブルが起きたときに発覚が遅れる・顧客満足度が下がるといった問題が露呈します。

では、心理的安全性を高めるためには、何をすれば良いのでしょうか。

社員のマネジメントでは、定期的な1on1(1対1のミーティング)で信頼関係を築く手法などが知られていますが、時間に制限のあるアルバイトでは、“アルバイト管理者の日常的なあり方”が鍵を握ります。

具体的に3つのポイントをご紹介しましょう。

(1)悪い報告を喜んで聞く
(2)アルバイトから意見やアイデアを聞く
(3)自分の弱みを見せる

(1)悪い報告を喜んで聞く

まず、悪い報告を喜んで聞く姿勢を徹底してください。具体的には以下の実践が効果的です。

・普段から「悪い報告(トラブル、ミス)はすぐに欲しい」と繰り返し伝える
・悪い報告を受けたときに、険しい表情・不機嫌な顔をしない
・悪い報告によって心が乱されたとしても、その感情をアルバイトには一切見せない
・悪い報告は穏やかにじっくりよく話を聞く
・悪い報告をしれてくれたアルバイトにお礼を言って感謝を表す

アルバイトの心理的安全性が低くなりやすいのは、
「ミスやトラブルがバレると、ひどい目に遭う」
という状況です。

ここを是正しなければ、ミスやトラブルは減るどころか、隠蔽されて増えていきます。やがて取り返しのつかない大問題に発展しかねません。

アルバイトにとって、
「ミスやトラブルが起きたとき、すぐ報告すれば、対人関係のリスクにさらされる心配はない」
と感じられることが重要です。

 

(2)アルバイトから意見やアイデアを聞く

次に、アルバイトから意見やアイデアを募りましょう。

業務フローを変えたいとき、お店の新しいメニュー、職場をより良くするための意見——など、積極的にアルバイトの声を聞く機会を作ってください。

意見やアイデアを出してもらうこと自体も有益ですが、それ以上に、アルバイトの声を聞くことが、
「あなたの存在を承認して、考え方を尊重し、信頼していますよ」
というメッセージになるのです。

“この場所で、私は人として受け入れられている”という実感は、アルバイトの心理的安全性を高めます。

 

(3)自分の弱みを見せる

最後に、アルバイトの管理者である社員や店長自身が、“自分の弱みを見せる”ことも大切です。

というのは、弱みを見せない完璧主義のリーダーのもとでは、アルバイトの緊張感が強くなり、心理的安全性が低くなりやすいためです。

逆に、自分の弱さをさらけ出してくれるリーダーに対しては、
「自分も弱さをさらけ出して大丈夫だ」
と安心感を抱き、のびのびと高いパフォーマンスを発揮できます。

「アルバイトになめられてはいけない」
と強気に出るより、自分の失敗談や抱えている悩みなど、“弱さ”をフランクに打ち明けた方が、実は効果的なのです。

 

さいごに

心理的安全性の話をするとき、いつも思い出すのが、ハンバーガーショップの女性アルバイトの怯えた表情と、床に落ちたハンバーガーの味です。

アルバイトを威圧的に管理しようとすれば、その歪みは必ず出てきます。

では、“ゆるい・ぬるい職場”ではなく、締めるところは締めつつもアルバイトがやりがいを持って働ける職場を作るためには、どうすれば良いか。そのヒントが「心理的安全性」にあります。

心理的安全性への取り組みを通じて、より良い環境づくりに取り組んでいきましょう。

 

【著者プロフィール】

 

三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

 

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