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「リアリティ・ショック」の時代こそ、正社員候補を確保するチャンス

現在、そして将来の人手不足を考えると、せっかく採用したアルバイトには長く働いてもらい、かつ優秀な従業員は先々正社員として戦力になってほしいものです。

実際、学生側もアルバイトの経験は金銭的報酬だけでなく、社会人になる前のマナー学習や仕事経験を積む場所として捉える傾向があり、この考え方をうまくすくい上げることができれば、Win-Winの人材確保に繋がるでしょう。

 

就職を意識しつつも、働きたいバイト先はない

マイナビが2019年に、アルバイトをしている学生を対象におこなった調査があります。
大学生のアルバイトの目的で「最も当てはまる」のはやはり、「趣味や交際費用のため」(41.8%)が最も多く、ついで「自分の生活費のため」(33.7%)、「貯金をするため」(12.8%)と続いています*1。

そして、アルバイトと就職活動の関係についても調査しています。
「アルバイト探しをする際、就職活動を意識していますか」との問いに、「意識している」「少しは意識している」と答えた学生の割合は、合わせて3割ほどになります(図1)。

アルバイト探しにおける就職活動の意義図1 就活意識の有無(マイナビ株式会社「大学生アルバイト調査」2019年)
https://www.mynavi.jp/news/2019/04/post_19843.html

特徴的なのは、就職活動を直前に控えた大学2年生と大学3年生で就職活動を意識している割合が多くなっていますが、就職活動を終えた4年生になるとその割合が大きく減少していることです。

また、アルバイト探しで就職活動を意識している大学生のうち、重視している点を調査した結果が図2です。

就職活動意識者の重要視するポイント図2 就職活動意識者の重要視するポイント(マイナビ株式会社「大学生アルバイト調査」2019年)
https://www.mynavi.jp/news/2019/04/post_19843.html

突出して多いのが「マナーが身に付く(60.7%)」で、他には「人脈が広がる(27.3%)」「専門性が高められる(27.0%)」といったもので、就職活動に役立つ要素を求めていることがわかります。
「面接対策などの就職支援をしてもらえる(8.6%)」「より正社員に近い仕事ができる(8.5%)」「社員登用がある仕事(3.3%)」と、就職活動そのものを兼ねている大学生も存在していますが、多いとは言えません。

企業としてはこのような意識があり、かつ優秀な学生であれば、正社員候補として確保したいところですが、その対象は少数という厳しい状況です。

さらに、このような現実も明らかになっています。
就職先候補にしたいアルバイト先はあったか、という質問に対しては8割以上の学生が「就職先候補にしたいアルバイトは無い」と回答しています(図3)。
図3 就職先候補の有無とその理由(マイナビ株式会社「大学生アルバイト調査」2019年)
https://www.mynavi.jp/news/2019/04/post_19843.html

「就職先にしたいと思わない」理由は様々なのでしょうが、アルバイトを正社員に登用したいと考える場合、企業側の努力が必要なところです。なお、「就職先にしたいアルバイト先があった」と答えた人を対象に「なぜ就職先にしたいか」を質問したところ、「仕事内容」「職場の雰囲気」「職場の上司・先輩の印象・対応」といった項目が上位に挙がっています(図3)。

ここで、学生の就職について、一つの傾向をご紹介したいと思います。

近年の研究対象として注目を集めている「リアリティ・ショック」という現象です。
ほとんどの若者が、就職直後に、この「リアリティ・ショック」を経験しています。
正社員として採用した企業にとっては頭を抱える問題なのですが、アルバイトから正社員を登用するにあたっては、参考にしたいところであり、かつ、逆にチャンスとして捉えたい現象でもあるのです。

 

イマドキの新入社員を襲う「リアリティ・ショック」

近年の若者は「成長志向」が非常に強く、仕事にあたっても「成長」「やりがい」を求める傾向にあります。

しかし、社会人になってから「こんなはずじゃなかった」と多くの新入社員が感じてしまい、モチベーションの低下や早期退職に繋がってしまうのです。
事前に抱いていた期待と現実との間にネガティブなギャップを感じるこの現象は「リアリティ・ショック」と呼ばれています。

売り手市場にあることも、早期退職を加速していると考えられます。
実際、新入社員が早期退職する理由は以下のようなものです。

 

【「初めての正社員勤務先」を離職した理由(複数回答可、性別、新卒3年以内離職者)】

<男性>

<女性>

図4 「初めての正社員勤務先」を離職した理由(労働政策研究所・研修機構の調査より作成)
https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/documents/164_05.pdf p90

労働条件や賃金といった部分では、企業の説明がどれくらい明確であったか、学生側がどのくらい理解していたか、というコミュニケーションのあり方も影響していると考えられます。一方、「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」「仕事が上手くできず自信を失った」「ノルマや責任が重すぎた」というのは、リアリティ・ショックを象徴する回答と言えるでしょう。

中には「もっと責任のある仕事ができると思っていた」というように、逆に厳しさを求める新入社員もいるようです。
この「リアリティ・ショック」が起きる原因の一つとして、「将来やりたいこと」の決定の遅さがあると考えられています。

自分がやりたい仕事について何らかのイメージがある割合

図6 やりたい仕事についてのイメージ(マイナビ株式会社「大学生低学年のキャリア意識調査」2019年)
https://www.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/03/%E3%80%90%E8%B3%87%E6%96%99%E3%80%912019%E5%B9%B4%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%93%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E7%94%9F%E4%BD%8E%E5%AD%A6%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%84%8F%E8%AD%98%E8%AA%BF%E6%9F%BB.pdf

 

図6は、マイナビが大学1,2年の低学年生を対象にした調査結果です。

自分がやりたい仕事について、何らかのイメージはあるとしながらも、この段階では具体的なビジョンではなく「ぼんやりとしたイメージ」にとどまっている学生が多いことがわかります。

そして、やりたい仕事や就職したい会社が具体化するのは、大学3年生以降、実際に就職活動を始めてからなのです。
事前のインターンシップなどで具体的なイメージを持てる学生もいますが、そうでない場合、比較的短い期間で「やりたいこと」から探さなければなりません。

結果、仕事に対する具体的なイメージや自分の適性などを分析できないまま「なんとなく」入社先を決めてしまう学生も少なからずいて、入社後に「こんなはずじゃなかった」となってしまうのです。

 

就活前に会社を見せる絶好のチャンス

アルバイトで「就活で役に立つことを身につけたい」としながらも、将来やりたい仕事が具体的にあるわけではない。
このような学生がいる現状も浮かび上がります。

しかし裏を返せば、こうした現状は正社員候補のアルバイトを確保する最大のチャンスでもあると言えます。
彼らの「やりたいこと」が定まっていないうちに会社の魅力をアピールし、印象付けることも可能だからです。
そして、「アルバイトの時の経験が就職後にそのまま活きる」環境を構築できれば、企業、学生双方にとってWin-Winの採用となるでしょう。
「この仕事を続けたい、この会社で仕事を続けるとこんな生活が待っているのか」、という具体的なイメージを与えられれば、登用後の「リアリティ・ショック」の緩和にもなり、「こんなはずじゃなかった」と早期退職されるリスクも減少します。

筆者が「アルバイト」というと昔の話になってしまいますが、筆者も就職について深く考えることのない、「自分のやりたい仕事がよくわからない」大学生でした。
それが、アルバイトを通じて放送業界への就職を希望するようになりました。
仕事内容は、報道現場でのカメラ助手です。
機材を担いでカメラマンと現場に同行し、三脚や脚立の移動といったものから、レンズの種類を覚えたり、マイクの設置をしたりするのも仕事で、知識も身につけなければなりませんでした。
学生にとっては未知の世界で、刺激的な現場ばかりでした。
もちろん、大事件が起きれば仕事はハードになり、深夜早朝の勤務も珍しくありません。

しかし、大変な現場で社員がどう働いているかも見た上で、「この業界に入りたい」、中でも報道の現場で仕事をしたい、と具体的な希望を持つようになりました。
社員に相談して就職活動のアドバイスをもらったり、他の現場でADとして働く機会を作ってもらったりと経験を積むことができた上、社員が休日をどんな風に過ごしているのかを垣間見ることも多々あり、生活面のイメージも具体的なものになりました。
晴れて同業他社に就職し、正社員となると責任の重さこそ大きく変わりますが、ハードな業界でも「リアリティ・ショック」はほとんどありませんでした。

規模は違えど、「社員と同じ時間を過ごしたことがある」経験は大きなものです。
実際、先輩や自分の同僚も、アルバイトを機に同じ業界に何人かが就職しました。

 

正社員へスムーズに移行できるシステム作り

こうした印象付けもそうですが、さらに大切なのが、「切れ目なく正社員に移行できるシステム」の存在です。
厚生労働省がパートタイム労働者活用の好事例として挙げている企業には、いくつかのヒントがあります。

ひとつは、大手外食チェーン店の仕組みです*2。
この企業では、アルバイト、パートに資格等級制度を設けて、昇格・昇給の対象にしています。
「クルー」としての段階、その上位に「リーダー」の呼称がありますが、クルーとしてランクアップするとに昇給するほか、そこから一定のランクに達すると制服が変わり、食事手当が増額されます。

また、「リーダー」への昇格には、推薦を受けることと筆記試験に合格することが条件です。
そして、スキルアップや時給が上がるというだけでなく、昇格のメリットは正社員への登用にあたっても重要な意味を持っています。

会社側の採用基準を満たした希望者については、正社員への登用制度が設けられていますが、筆記試験、面接を通過し、正社員に登用された場合には、年齢やそれまでの勤続年数、資格等級レベルを考慮した給与水準が定められる仕組みになっています。
それまでに店舗で重ねてきた経験が、仕事内容でも待遇面でも就職先で活きる形です。

また、全国でホテルチェーンを展開している企業では、正社員希望者の事前登録を受け付けています*3。
ここでは、6か月以上パートタイム労働者として勤務すると、正社員転換希望の登録をすることがきます。
正社員になるには、まず契約社員へ転換し1年以上の勤務が必要ですが、正社員への登用にあたっては、それまでの実績が考慮されます。
即戦力を正社員として確保できるメリットがあり、実際、正社員への転換希望者は非常に増えているとのことです。

いずれも、従業員からすると、仕事を経験してから正社員になるかどうかを決定でき、正社員に登用されてからも、他の新入社員と違うところからスタートを切れる、という特徴を持っています。

仕事や会社に対する事前の理解がありますので、早期離職の防止に繋がるとも考えられます。

 

自分たちの働き方も再度見つめよう

ここまで、就職に関する若者の考えなどを紹介してきました。
ただ、もっとも重要なのは「接する社員」であることは言うまでもありません。

特に、現代の若者は、「組織」に対する帰属意識よりも、「人」に対する帰属意識の方が強い傾向にあります。
「ここで働きたい」というのも大切な要素ですが、それ以上に「この人のもとで仕事をしたい」と思わせることが重要になっています。

そのためには、教育役が楽しく働き、楽しく生活していることが大前提で、仕事を教える側が「自分はこの仕事の何が楽しいのか」「なぜこの仕事に興味を持ったのか」「今後どうなりたいのか」を考え直し、明確に説明できることが必要です。

自分たちが学生にしたくなる質問を、自分がされた時にどう答えられるか?

学生と同じ視線で、自分の仕事や会社を見つめ直してみましょう。

 


*1 「大学生アルバイト調査」(株式会社マイナビ、2019年4月)
https://www.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/04/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%93%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E7%94%9F%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%88%E8%AA%BF%E6%9F%BB.pdf p6

*2「パート労働者活躍企業好事例バンク」(厚生労働省)
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/koujirei-bank/list/792

*3「パート労働者活躍企業好事例バンク」(厚生労働省)
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/koujirei-bank/list/1637

 

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政を担当、その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。海外でも欧米、アジアなどでの取材にあたる。Webライターに転向して以降は、各種統計の分析、業界関係者へのヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行なっている。

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