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変わる新卒一括採用、人材確保の新しい在り方は新卒か中途採用か?

日本の場合、企業の新卒採用活動は主に在学中に採用試験を行い内定を出すという、いわゆる新卒一括採用がメインです。

企業にとっては年度ごとに計画的・安定的に正社員を確保できるというメリットがあります。しかし一方で就職活動が長引くことで学生にとっては学業に影響を及ぼすことが懸念され、見直しの必要性が議論されています。

ここで、新卒一括にこだわらず、中途採用という方法もあります。両者のメリットやデメリットは何でしょう。そして、どのような採用の仕方が効率的なのでしょうか。

目次

新卒一括採用の現状

インターンシップの重要性とアルバイト

「計画的中途採用」という考え方

新卒一括採用の現状

マイナビの調査では、企業が新卒採用を行う一番の理由は「事前の計画による定期的な採用」が最も多く、企業としては計画的に人材を確保できるのがメリットのようです(図1)。

入社時期がほぼ全員同じですから、研修や現場配属も計画的に進められるという利点もあるでしょう。

図1 新卒採用と中途採用の理由(マイナビ「2019年度新卒採用就職戦線総括」より)
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2019/10/2020_saiyo_saponet_1_Part1.pdf p11

また、将来のコア人材として新卒を位置付けている他、年齢など人員構成比の適正化のために新卒を採用する、といった意見もあります。

一方で中途採用の社員に求めるものは専門能力や技術、また人手不足を補充する人材としての位置付けです。

新卒採用と中途採用の特徴は、概ねこのように捉えられています(図2)。


図2 新卒採用と中途採用の特徴(マイナビ「新卒採用のメリット」)
https://saponet.mynavi.jp/guide/merit/

ただ、若手に限らず全体的に人手不足の中、新卒採用と中途採用のこうした位置付けについて改めて考えてみる必要がありそうです。

新卒一括採用について政府は現在、見直しを始めています。在学中の就職活動が長引き、学業に影響が出るのを懸念してのことです。一定の経過措置ののち、厳しい制約を設けられる、あるいは廃止に向かう可能性もあります。

そして、卒業後も就職活動を続けている若者の中には、「内定を辞退した」という学生が少なくありません。また「一度は就職したが辞めた」というケースも多く見られます(図3)。

図3 卒業後に就職活動をしている人の在学中内定状況
(「2019年度マイナビ既卒者の就職活動に関する調査」より)
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2019/10/2019%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%93%E6%97%A2%E5%8D%92%E8%80%85%E3%81%AE%E5%B0%B1%E8%81%B7%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB1031-2.pdf p4

そして、在学中に内定を獲得し一度就職したものの、その後再び就職活動を続けている理由はこのようなものです(図4)。

図4 在学中に内定獲得し一度就職した人が就職活動をしている理由
(「2019年度マイナビ既卒者の就職活動に関する調査」より)
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2019/10/2019%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%93%E6%97%A2%E5%8D%92%E8%80%85%E3%81%AE%E5%B0%B1%E8%81%B7%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB1031-2.pdf p2

「配属先への不満」「合わなかったから辞めた」というのだけを見ると、それが単なるワガママなのか最初に入った会社の特徴なのかは話を聞いてみないとわかりません。
しかし業界や業種へのこだわりがあって辞め、就職活動を続けているという場合は、「就職について熟慮している」「働くにあたっての思い入れや意欲がある」ことの表れでもあります。

若者を確保しにくいなか、こうした人材が新卒一括の枠から漏れてしまっているのは勿体無いことでもあります。このような場合、中途で受け入れれば良い人材となるのではないかと思います。20代の「第二新卒」は見逃せないものがあると言えるでしょう。

定着率を懸念することもあるかもしれませんが、離職のリスクは新卒も第二新卒もそう変わりはないと考えて良いでしょう。
また、「就職浪人」という形で留年を選ぶ学生もいます。
今とは時代背景が違うかもしれませんが、筆者は「計画的留年」をした「新卒」でした。
半分は不真面目な理由、半分は真面目な理由での留年です。
不真面目な要素としては、純粋に「4年では卒業できなさそう」だと早めに判断したことです。在学中はアルバイトの方が楽しくて打ち込んでしまい、学業をおろそかにしてしまったためです。
そこで必要単位数から逆算して「4年では足りないが、5年は要らない」と判断し、半年分の休学届を出しました。休学中は学費がかからないからです。
休学中の半年間に何をしていたかというと、単独自転車旅行です。正直、留年は就職活動で不利になるのではないかという懸念もあり、何かインパクトのある事をやろうと考えた結果でした。最初の2か月をバイト漬けにして費用を貯め、残りの4か月で旅をしてきたという形です。
京都の舞鶴港からまず北海道に渡り、ご丁寧に沖縄でUターンして青森まで行って、夜行列車で京都に帰ってきました。走行距離は9555kmです。地球一周が約4万kmと言われますから、今考えればとんでもない距離です。

しかし、スマホもない時代のこの経験は何にも代え難いものがあります。単なる思い出ではなく、何もない河原にテントを張る完全野宿も経験し、そこでサバイバル精神や、多少のトラブルではたじろがない問題解決力、冷静さが身についたように思います。
道中、一度だけ後輪をパンクさせてしまい、携帯用空気入れをどこかで無くしてしまっていたため、「代わりに草を詰めて走ろうか」と考えたこともありました。
結局のところ、そこを買われて就職できたような気がします。特殊な業界ということもあるかもしれませんが。
今となればもう1年くらい留年して、ゆっくり旅をしたかったとまで思います。流石にタイトすぎるスケジュールでした。しかし、そのために親に生活費を出し続けてもらうことに抵抗があり、後期は必死に学校に通ってなんとか卒業しました。
個人的な思い出はここまでにするとして、学生の場合、学んだことを振り返ってきっちりとしたアイデンティティを形成できている第二新卒は魅力的なはずです。
進路を決められなくて卒業後フリーターをしていた、それも良いでしょう。社会経験として無駄なこととは思えません。
現代では、若い段階から「生涯にわたるキャリア形成」を考える学生が少なくありません。
一つの会社で学び、それを活かせない場所と判断するとあっさりと次に行ってしまいます。社内出世というよりも、どこに行っても通用するように自分の「市場価値を高める」ための幅とオリジナリティを獲得するために転々とする若者は珍しくありません。
新卒だからといって離職率が低いという考えは捨てた方が良いでしょう。

かつ、転職の繰り返しというのは、ある程度優秀だからこそできることです。
そのような人材が自社に興味を持ってくれたなら、逃す理由はありません。他社に先んじて確保したいところです。
そして長く定着してくれれば最高ですが、仮に去っていったとしても「人手」以外のものをもたらしてくれる可能性があります。
企業や周囲の社員に大きなプラスの影響を与えてくれることでしょうし、多少なりとも社会人経験があるので、初歩的な研修も必要としないのがまた良いところです。

 

インターンシップの重要性とアルバイト

さて、近年では在学中の「インターンシップ」の経験が主流になりつつあります(図5)。


図5 インターンシップへの参加状況
(「2019年度マイナビ既卒者の就職活動に関する調査」より)
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2019/10/2019%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%93%E6%97%A2%E5%8D%92%E8%80%85%E3%81%AE%E5%B0%B1%E8%81%B7%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB1031-2.pdf p2

内定者の半数以上がインターンシップに参加しています。
インターンシップに参加していることで業界への理解があると感じ、内定を出した企業担当者も多いことでしょう。

ただ、インターンシップについては有効性を考える必要があります。

まずその形式です。
海外から見ると、日本のインターンシップには悪い特徴があるようです。

内閣府の資料によると、グローバル企業50社のインターンはこのような形式を取っています(図6)。


図6 グローバル企業のインターンシップの形式(出典:内閣府ホームページ「日本の新卒採用市場の真の課題は何か?」内閣府資料)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/koyo/160209/item2.pdf p16

 

一方で、日本ではどうでしょうか。
「短期間の社内見学」の色が濃いように思います。会社見学、疑似体験といったところにとどまっているのではないでしょうか。
グローバル企業では夏季休講の間などに、長期で実際の社員として扱うインターンシップを実施しています。これはのちの採用選考に接続するだけでなく、学生自身が今の専攻ややりたいことと現実を照らす良い機会です。そのまま採用に至れば、新人研修の前倒しでもあるという機能を持ちます。

また、インターンシップを就職活動中の学生に限らず、大学低学年の学生にも参加してもらうのも良いでしょう。
就職に関する意思決定が遅い傾向にある中で、早い段階で濃密な職場経験をしてもらうのは悪いことではありません。後になって「イメージと違った」と言われることも防げるでしょうし、経験を元にその後何を学ぶか決めていける時期でもあります。
興味がありそうな学生にはインターンシップをきっかけにアルバイトを始めてもらう、あるいは今いるアルバイトをインターンシップに誘ってみるのも手法です。ただ注意が必要なのは、インターンシップがアルバイトと同じ業務では緊張感も生まれにくい部分があるということです。アルバイトと社員では実際に仕事内容やその責任度合いが違うことも理解してもらうためのインターンシップとなるようにしたいところです。

筆者が放送局でアルバイトをしていた頃、この業界に入りたいと話した所、週末の情報番組のADの仕事を実際にやらせてもらっていた時期があります。
隔週で木曜日から日曜日の放送終了までではありますが、内容はまさに新入社員の仕事そのものでした。数回教えてもらったら、補佐なしです。
時間帯も深夜早朝と長かったですし、社内のあちこちに顔を出しますから、こういった番組がこのように、こんな機材を使って、こんなスケジュールで作られているんだ、とある程度理解することができました。
また、インターンシップは企業風土のアピールにはもってこいの場所でもあります。また、新卒段階では他の企業に入ったものの辞めたとなった時、転職先の候補になる可能性もあるでしょう。
企業にとっても、いずれ採用する可能性のある人材がどのような傾向があるのかを知る良いきっかけにもなります。
なお、筆者には新卒採用の面接の経験がありますが、その時思ったのは「今日不採用の判断を下す学生も、自社の顧客である」ということです。

 

「計画的中途採用」という考え方

今ではとにかく「終身雇用」という概念は若者には存在しません。心の中では望んでいても警戒心が強く、一か所に自分の将来を預けると決めるのには時間がかかります。

また、今は管理職クラスでも転職者が少なくありません。こちらも奪い合いに近くなっているのというのが現状です。

「若い」ということは魅力的ですし、一括採用の方が計画が立てやすい、通年採用にかかる手間と費用が省ける、と考えがちかもしれません。しかし新卒=離職率が低いというわけではない実態を考えると、単なる「数の確保」に走るのではなく、必要に応じてアルバイトやパートタイムなど非正規を活用しながら、中長期的に考えた「段階的中途採用計画」を持っていても良いかもしれません。

また、正社員化を前提としたアルバイトの雇用を考えるのも良いでしょう。

なお筆者が勤めていたTBSホールディングスの会長は、2020年現在、中途入社の人です。
業種が近いということもありますが、新卒を必ずしも経営幹部としなくても良いのです。

巨大企業でも、業界をまたいで経営トップを外部から迎えることが多々あります。そして本当に有能な社員がコア人材になる実力主義を、今の若い人は十分に心得ています。モチベーションの低下にはなりません。

無理に数を揃えて、のちに人材の質の面でマイナスを背負うよりも、その時々で必要になる人材をピンポイントで採用していくのも一つの手段です。
その時に中途採用者を「助っ人」「穴埋め」と考えてはなりません。数合わせの考え方をやめ、副業者兼業者をパートナーとして迎えるのも一つです。若手の人数が少ない今はなおさら、外注できるものと自社で育成すべきものを明確に分ける必要性もあるでしょう。

計画的で柔軟な採用の仕方を考えるのも良いでしょう。

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政を担当、その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。海外でも欧米、アジアなどでの取材にあたる。
Webライターに転向して以降は、各種統計の分析、業界関係者へのヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行なっている。

 

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