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注目されるジョブ型雇用 経験的知見や専門性に強みをもつシニアの生かし方とは

退職後のシニアは、非常に魅力的な人材です。 
豊かなビジネス経験と知見、専門性を兼ね備えているからです。

健康状態や身体機能に関する調査では、現在のシニアは以前の同年齢層の人々に比べてずっと若いというデータがあります *1:p.4、p.11。
退職後の再就職でアルバイトを希望するシニアの割合が高いという調査結果もあります *2:p.26。
なにより深刻な人手不足が今後も続くと予想されています。
シニア人材を積極的に活用しない手はありません。

そこで、注目したいのがジョブ型雇用。
従来のメンバーシップ型雇用とは対照的な採用方法です。
シニアの強みを生かすことができ、柔軟な働き方を可能にするジョブ型雇用。そのあり方や留意点について考えてみましょう。

退職後のシニアの強みとニーズ

まず、退職後のシニア人材の強みとニーズについてみていきましょう。

~若さと労働意欲~
冒頭でお話ししたように、シニア人材の強みは豊富な経験と知見、高度な専門性、スキルです。
ただ、危惧されるのは健康状態と労働意欲。

図1 高齢者の通常歩行速度       

図2 何歳まで働きたいか(就労中の60歳以上)
出典(図1・図2とも):*1 経済産業省(2018)「生涯現役社会に向けた雇用制度改革について」 (2018年10月) p.4
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/002_04_00.pdf

上の図1をみると、高齢者の歩行速度は1997年から2006年の10年間で10歳、若返っていることがわかります。
図2からは、シニア層の就労意欲が高いことも窺えます。
さらに、これらを裏付けるデータもあります(図3)。


図3 潜在的な高齢者就労の可能性(健康状態のみに着目)
出典:*1 経済産業省(2018)「生涯現役社会に向けた雇用制度改革について」 (2018年10月) p.11
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/002_04_00.pdf

図3は、健康状態に着目した高齢者就労の可能性を示しています。
実際には雇用制度や年金制度の影響を受けることが予想されますが、健康状態だけからみれば、高齢者の就労率は今後、大幅に伸びると推計されているのです。

以上のことから、シニア層の若さと労働意欲は問題ないといえるでしょう。

~シニア人材が希望する雇用形態~
では、シニア人材は、どのような雇用形態を望んでいるのでしょうか(図4)。
退職後のシニア層に絞ってみていきましょう。


図4 シニア層が今後、希望する雇用形態
出典(図4・図5):*2 マイナビ(2020)「ミドルシニア/シニア層の非正規雇用就労者実態調査(2020年)」 (2020年7月 株式会社マイナビ 社長室 HRリサーチ部 アルバイトリサーチチーム)p26,43
https://www.mynavi.jp/wp-content/uploads/2020/07/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%93-2020%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%83%9F%E3%83%89%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%81%AE%E9%9D%9E%E6%AD%A3%E8%A6%8F%E9%9B%87%E7%94%A8%E5%B0%B1%E5%8A%B4%E8%80%85%E5%AE%9F%E6%85%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB.pdf

この調査は、非正規で働いている40代から70代の労働者を対象にしています。
図4から、希望者が最も多いのはアルバイト・パートで、定年退職経験者の63.4%が希望していることがわかります。

~シニア人材のアピール・ポイント~
次に、シニア人材が考える自己アピール・ポイントをみてみましょう(図5)。

図5 シニア人材が評価してもらいたいと思っている採用面接時のアピール・ポイント

 

図5の濃いブルーのバーは、調査対象者が採用面接時に評価してもらいたいと思っているアピール・ポイント(複数回答)の結果です。

全体では、「人柄」の割合が最も高く、次いで「環境への適応力」、「職歴」ですが、ここで注目したいのは、定年退職者の認識です。

グラフ下の表に注目しましょう。
この表では、全体と有意差がある項目がピンク(高い場合)とブルー(低い場合)で塗りつぶしてあります。

定年退職経験者の欄をみると、ブルーの項目は「人柄」で39.9%、全体より6.5%低くなっています。
一方、ピンクの項目は「職歴」が31.0%、「専門職種の知識や経験」が25.6%、「業界での知識や経験」が18.6%で、それぞれ全体より 9.8%、10.6%、6.7% 高くなっています。

以上のことから、定年退職経験者は、経験や専門性に自信があり、それらを高く評価してほしいと望んでいることがわかります。

退職後のシニアとジョブ型雇用

これまでお話ししてきたことは、定年退職後のシニア人材がジョブ型雇用と大変、親和性が高いことを示唆しています。

それはなぜでしょうか。

~ジョブ型雇用とは~
ここではジョブ型雇用がどのようなものかみていきたいと思います。
日本式のメンバーシップ型雇用と比較してみましょう(図6)。


図6 メンバーシップ型とジョブ型
出典:*3 経済産業省(2019)産業構造審議会 2050経済社会構造部会 第6回「部会取りまとめ/中間整理案について~ 人財マネジメントを取り巻く環境変化と日立の取組み」(2019年5月20日) p.3
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/006_07_00.pdf

この図が示しているとおり、日本で一般的なメンバーシップ型は「人ありき」です。
職務や勤務地を限定しないで採用し、さまざまな業務やポストを経験させ、長い時間とコストをかけて社員を育てていきます。
雇用の継続と待遇はある程度、保障されますが、専門性が育ちにくいという側面があります。

一方、欧米で主流となっているジョブ型は「仕事ありき」です。
仕事がまずあり、その仕事を遂行するのに必要な能力を備えた人材をそこに据えます。
したがって、属性とは関係なく、雇用の継続や待遇も主に遂行能力に応じて決められます。

~シニアの強みを生かすジョブ型雇用~
もう少し詳しくみてみましょう(図7)。


図7 メンバーシップ型マネジメントとジョブ型マネジメント
出典:*3 経済産業省(2019)産業構造審議会 2050経済社会構造部会 第6回「部会取りまとめ/中間整理案について~ 人財マネジメントを取り巻く環境変化と日立の取組み」(2019年5月20日) p.4
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/006_07_00.pdf

図中の、「就社」(メンバーシップ型)、「就職」(ジョブ型)という言葉が印象的です。

メンバーシップ型では、新卒一括採用、定年制、年功序列が基本ですが、ジョブ型では年齢にかかわらず必要な人材を社外からも迎え入れます。
その際、汎用性の高い能力や専門性を備えていることが重要な意味をもちます。

先ほど、定年退職経験者は経験や専門性に自信があり、その部分を高く評価してほしいと希望しているという調査結果をみました。

以上のことから、年齢にかかわらず遂行能力を備えた人材を求めるジョブ型は、退職後のシニア人材の強みを生かすにあたって、非常に合理的な方策だといえます。

ジョブ型で退職後のシニアを雇用する際の留意点

最後に、ジョブ型で退職後のシニアを雇用する際の留意点を、事例に絡めてみていきます。

~取り組み事例と留意点~
ここでは、ある建築関係の企業の取り組みをご紹介します。
このS社では、他の企業を定年退職したシニアをジョブ型で非正規雇用しています。
仮にAさんとしましょう。

S社はチェーン型店舗の設計を手がけ、新規プロジェクトが次々に立ち上ります。
その度に仕事量が一気に増え、社員の負担が増します。
問題は、直ちに即戦力となる、専門性を備えた人材がすぐにはみつからないことでした。
また、長期的な雇用が維持できるかどうかも微妙でした。

そこで、S社では、定年退職後のシニアに非正規で働いてもらうことを模索しました。

ジョブ型の募集に際しては、仕事内容や応募資格、必要なスキルなどをできるだけ具体的に示すことが必要です。
具体的な条件を掲げて募集をかけ、同時に同業者や心当たりにも声をかけた結果、Aさんという適材を得ることができました。

Aさんは一級建築士の資格をもち、店舗設計に関してはベテランです。
S社は現在、週2回はフレックスタイムで出社、週3回はテレワークという勤務形態になっています。

Aさんは店舗設計は基本的に自宅で行い、週1回、出社して、アルバイトの指導に当たっています。

企業側は、Aさんの豊かな経験と高度な専門性に加え、指導力を発揮して、多忙な正社員では手が回らない、若手アルバイトへの指導にも当たってもらえることにメリットを感じているようです。
Aさんも自分の専門性を生かし、柔軟な働き方ができることに満足しています。

欧米では、ジョブ型雇用に際して「職務記述書」(ジョブディスクリプション)を作り、

仕事内容
必要な資格やスキル
責任の範囲
労働条件
成果目標

を明確にした上で、採用や待遇、評価基準を決めます。

こうした職務記述書はジョブを明確にするために必要で、S社とAさんも職務記述書に準じた雇用契約書を交わしました。

でも、一方で、詳細な職務記述書を作成すると、該当ジョブ以外の職務が排除されるため、なんらかの要因によってジョブがなくなった場合、企業内での配置転換が難しく、雇用の維持も厳しくなります。

こうしたジョブ型本来の取り決めが日本企業になじむのかどうかは別として、規制改革推進会議が2019年5月20日に公表した意見書では、
「個々の労働者と使用者間で、文書による労働条件の確認と合意は欠かせない」
という意見が示されています *4:p.1。

ジョブ型の導入に際しては、こうした政府の動向にも目を向ける必要があるでしょう。

~フリーランスの活用も選択肢のひとつ~
ジョブ型の本質をつきつめていくと、雇用という労働形態にこだわらず、フリーランスと業務委託契約を結ぶという方向性もみえてきます。

2016年、日本における広義のフリーランスは1,064万人で *5:p.5、今後も増加が見込まれています。

フリーランスも退職後のシニア人材の強みである、専門性やスキルを活用するという点ではジョブ型と同じですが、よりピンポイントで、期限を限定して働いてもらうことができます。
また、働き手と企業をマッチングさせるプラットフォーマーと呼ばれる企業があり、そこで募集をかければ、求める専門性を備えた人材を探し出す一助となります。

このように、退職後のシニア人材の強みである専門性やスキルを生かすためには、フリーランスの活用という選択肢も有益ではないでしょうか。

おわりに

退職後のシニア人材は、経験と即戦力という得難い強みをもっています。
この強みを最大限、生かすためには、ジョブ型雇用が有益であることをみてきました。

日本でも今後はジョブ型を推進していこうとする動きがあります*4、 *6。
その先駆けとして有能なシニア人材をジョブ型で雇用し、その可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

エビデンス
【以下の閲覧日:2020年8月12日】
*1
経済産業省(2018)「生涯現役社会に向けた雇用制度改革について」 (2018年10月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/002_04_00.pdf
*2
マイナビ(2020)「ミドルシニア/シニア層の非正規雇用就労者実態調査(2020年)」 (2020年7月 株式会社マイナビ 社長室 HRリサーチ部 アルバイトリサーチチーム)
https://www.mynavi.jp/wp-content/uploads/2020/07/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%93-2020%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%83%9F%E3%83%89%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%81%AE%E9%9D%9E%E6%AD%A3%E8%A6%8F%E9%9B%87%E7%94%A8%E5%B0%B1%E5%8A%B4%E8%80%85%E5%AE%9F%E6%85%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB.pdf
*3
経済産業省(2019)産業構造審議会 2050経済社会構造部会 第6回「部会取りまとめ/中間整理案について~ 人財マネジメントを取り巻く環境変化と日立の取組み」(2019年5月20日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/006_07_00.pdf
*4
内閣府 規制改革推進会議「ジョブ型正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員等)の雇用ルールの明確化に関する意見」(2019年5月20日)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/committee/20190520/190520honkaigi02.pdf
*5
経済産業省経済産業政策局 産業人材政策室(2016)「雇用関係によらない働き方」について (現状と課題)
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/001_03_00.pdf

プロフィール
横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。現在、フリーランスとしてさまざまな組織と業務委託契約を結んでいる。

 

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