面接・採用
/

副業で雇用する社員との間の雇用契約書|労働時間の規制に要注意

新型コロナウイルスの感染拡大も相まって、企業の雇用状況は悪化傾向にあります。
労働者の間では、一つの会社に依存しない働き方を求めて、副業を開始する人も増えているようです。

企業の側としては、本業で会社勤めなどをしている人について、副業を前提としてアルバイトなどで雇い入れることを検討する場合もあるかもしれません。
その際、労働者との間で雇用契約書を締結するにあたっては、労働基準法上の労働時間規制に十分注意する必要があります。

この記事では、副業労働者との間で締結する雇用契約書について、主に労働時間規制との関係で注意すべき点を、弁護士の視点から解説します。

 

労働基準法上の労働時間に関する規制|本業との通算に注意

労働基準法上、「1日あたり8時間、1週間あたり40時間」という労働時間の上限が定められていることは、ご存じの方も多いでしょう(労働基準法32条1項、2項)。
この上限時間を「法定労働時間」といいます。

この時間を超えて労働者を働かせるには、労使協定(いわゆる「36協定」)によって、時間外労働を認める旨を定めておかなければなりません(同法36条1項)。

また、時間外労働に対しては、通常の賃金に対して25%以上を上乗せした割増賃金が発生します(同法37条1項本文)。

以上が、労働時間に関する法律の基本的なルールです。

では、本業・副業のダブルワークのケースでは、労働時間に関する規制はどのように適用されるのでしょうか。

●本業と通算して法定労働時間を超える場合には割増賃金が発生
労働基準法38条1項は、労働時間の計算に関して、以下のとおり定めています。

(時間計算)
第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
2 略
(労働基準法38条)

同規定の意味するところは、
「労働時間規制との関係では、本業と副業の労働時間はトータルで考えなければならない」
ということです。

たとえば、前述のように「1日8時間」という法定労働時間がある中で、ある日、本業で7時間働いたとします。
この日に副業での労働も行う場合、法定労働時間の範囲内では、あと1時間しか働けません。
これを超える時間につき労働者を働かせるには、36協定における労使の合意が必要なうえ、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。

本業で正社員として雇用されている労働者の場合、本業の労働時間だけで法定労働時間の上限近くまで達してしまうケースがほとんどでしょう。
したがって、副業の労働時間は、大部分が残業扱いとなる可能性が高いといえます。

そのため、企業が副業労働者を雇い入れようとする場合には、36協定の内容や割増賃金の支払い義務に照らして、労働条件を事前に十分に検討する必要があるでしょう。

●残業の上限時間は36協定の内容次第|法律上の規制もある
労働者にどれだけの時間外労働をさせることができるかは、36協定の内容により決まります。

たとえば前述のケースで、「時間外労働は1日3時間まで」と副業先の36協定で定められている場合には、本業で働いた同じ日に副業で働けるのは4時間までということになります。

36協定の締結・変更などには労使の合意が必要ですから、その内容を簡単に変更することはできません。

さらに、36協定に基づく時間外労働には、労働基準法36条4項により、原則として
「1か月あたり45時間、1年あたり360時間」
という上限が設けられています。

企業が副業労働者と雇用契約書を締結する場合には、上記の36協定や法律の規定を踏まえて、労働者を何時間まで働かせることが可能かを事前に正しく把握しておくことが必要です。

 

割増賃金を前提として基本給を低めに設定すれば問題ないのでは?

副業労働者を雇うには割増賃金がかかるということであれば、基本給を低くすれば問題は解決するのではないかと考えるかもしれません。
しかし、副業労働者に対して支給する賃金額を調整するために、安易に基本給を下げてしまうことには、以下の点で問題があります。

●基本給が最低賃金を下回ってはならない
労働者に支払う給料については、「最低賃金法」という法律により、都道府県ごとに下限が定められています。
最低賃金に関する規制は基本給ベースで適用されるため、最低賃金を下回る基本給を設定することはできない点に注意が必要です。 

●労働者に対する正当な評価・対価支払いが行われない
割増賃金の支払いにより、実質的には正規と同じ水準の給料が支払われる内容の契約になっていたとしても、労働者の側から見れば、著しく低い基本給で雇われているという事実に変わりはありません。

副業であること、あるいは割増賃金を調整することを理由として基本給を下げた場合、労働者の職責や能力以外の要素によって、他の労働者よりも劣った扱いをすることになります。
これは、労働者に対する正当な評価の観点から問題があるでしょう。

 

「業務委託契約書」であれば労働時間のルールは適用されない?

副業労働者を「雇用」するのではなく、「業務委託」という形にしておけば、労働基準法上の規定が全体的に適用されなくなり、必然的に時間外労働に関する規定も適用対象外となります。

しかし、ただ契約書の名前を「業務委託契約書」と変えただけでは、労働基準法の規制適用を免れることができるわけではありません。

●雇用か業務委託かは実態を見て判断される
「雇用」と「業務委託」の違いは、会社と働く人が「使用・従属」という上下関係にあるか(雇用)、または指揮命令関係に属さず対等な関係であるか(業務委託)という点にあります。

たとえ契約書の内容を「雇用契約書」から「業務委託契約書」に変更したとしても、会社が働く人を指揮命令関係に入れている場合には、実質的に見て「雇用契約書」であると判断される可能性が高いでしょう。

●後から雇用と判断された場合には訴訟などのリスクあり
「業務委託」であるという前提で、会社が時間外労働手当の支払いを行わないでいたとしましょう。
その後、会社が労働者との間で紛争を生じ、契約の性質について「実は雇用だった」とひっくり返された場合には、会社が労働者から高額の未払い残業代などを請求されるおそれがあります。

このように、安易に契約書の名前だけを変えて「業務委託」として取り扱おうとすることは、かえって後の紛争リスクを拡大させるため、避けた方が良いでしょう。

 

本業の勤務状況について報告を求めよう|雇用契約書・就業規則に規定を

すでに解説したように、労働基準法上の労働時間に関する規制は、本業・副業の通算に対して適用されます。

副業先の会社にとって、労働基準法の規定を正しく遵守していくためには、労働者が本業の側で1日何時間働いているのか、本業の休みはいつなのかなど、本業における勤務状況を把握しておくことが重要です。

本業における勤務状況を知るためには、労働者本人の報告によるほかありません。
したがって、雇用契約書や就業規則の中で、本業における勤務状況について労働者が定期的に会社へ報告する義務を定めておくと良いでしょう。

 

まとめ

このように、本業がある労働者を副業として雇用する場合には、労働時間の面から大きな法律上の制約があることがわかります。

副業労働者を雇い入れようとしている企業の方は、通常の労働者とは異なる配慮が必要であることを十分認識しなければなりません。
そのうえで、雇用契約上、労働時間や本業における勤務状況についての規定を調整することが必要です。

働き方が多様化する中、企業が雇い入れる労働者のタイプも、さらに多様化していくことが予想されます。
企業側としては、さまざまなタイプの労働者に対応できるように、一度雇用契約書の内容や方針を見直してみてはいかがでしょうか。

 

弁護士YA
大手法律事務所にて企業法務、金融法務に従事。
退職後、現役弁護士としての活動と並行して、ライター活動を開始。
法律・金融分野を中心として、幅広いジャンルの記事を企業のオウンドメディア等へ寄稿している。

 

 

あなたにおすすめ記事


アルバイト採用のことなら、マイナビバイトにご相談ください。

0120-887-515

受付時間:平日9:30-18:00

求人掲載をご検討の企業様