アルバイトスタッフの存在は、いまや企業の人材戦略においてなくてはならないものとなっています。企業によっては正社員以上のウェイトを占めているということもあるのではないでしょうか。一方で採用活動の中では、求めるアルバイトスタッフを採用するため、採用選考における考え方や基準の軸の設け方について悩むこともあるかと思います。
そこで今回は、アルバイト採用において各社が取っているスタンスや採用基準について、また、採用選考時に留意しておくべきポイントについて紹介します。
目次
公正な採用選考とは?
まずは、採用活動にあたり担当者が留意すべきポイントについて紹介します。第一に押さえておくべきポイントとして、採用選考は、公正におこなわれる必要があるとされています。
日本国憲法第22条「職業選択の自由」を保証するため、次の2点を選考時の基本的な考え方とするよう定められています。(※1)
・「人を人としてみる」人間尊重の精神、すなわち、応募者の基本的人権を尊重すること
・応募者の適正・能力のみを基準としておこなうこと
これらを言い換えると、「応募者の適正・能力」以外の点を採用基準としてはいけないということです。例えば、家族構成や生活環境などを採用基準に含めてはいけません。
これらの情報については、採用時には極力把握しないことが重要です。というのも、採用基準にしない心算でいたとしても、知ってしまうとついつい気になってしまったり、無意識の内に意思決定に影響を与えた結果、職業差別につながる危険性があるからです。また、実際には採用基準にしていなかったとしても、把握してしまった場合、求職者の方の誤解を招くリスクもあります。
就職差別につながる恐れがある項目
それでは、具体的にどのような項目について避けるべきなのでしょうか。次に、就職差別につながってしまう可能性がある質問・面接項目について解説します。(※1)
本人に責任のない事項
本人に責任のない項目については、採用基準にすることはできません。具体的には次のような内容があります。
・本籍・出生地に関すること
・家族に関すること
・住宅状況に関すること
・生活環境・家庭環境に関すること
これらの項目は本人の意思で変えられるものではないため、採用基準としては相応しくないとされています。家族に関しては、家族構成の他家族の職業や健康状況、地位や学歴・職業、資産など、住宅状況については近隣施設なども含まれます。
本来自由であるべき項目
また、本来は各人が自由に選択できるべき項目について、選考基準とすることも避けるべきとされています。
例えば、次のような内容です。
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観・生活信条などに関すること
・尊敬する人物に関すること
・労働組合・学生運動などの社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
これらは、ひとりひとりが自由に選択することができる内容であるべきです。そのため、これらの項目を理由に採用の可否を判断することはできません。人となりを知るための質問として採用選考時問われることもありますが、無用なトラブルや誤解を避ける意味では極力把握しない方が良いでしょう。
採用選考の方法について
これらの情報を採用基準として利用しないよう、次のような方法は採用選考において取るべきでないとされています。
・身辺調査などの実施
・「全国高等学校統一応募用紙・JIS規格の履歴書(様式例)」に基づかない事項を含んだ応募書類の使用
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
これらの方法で採用基準にできるような有益な情報を得られる可能性は低いですし、求職者の方に不審感を抱かせる可能性すらあります。
どうしても必要な事情がある場合を除き、これらの方法は避けるべきでしょう。
各社のスタンスは?
自社のニーズにマッチする人材を採用するためには、独自の採用基準を持って採用活動を行うことが大切です。実際の採用担当者は、どのような採用基準を持って採用活動に当たっているのでしょうか。こちらは、企業の採用担当者に対しておこなったアンケート結果です。
アルバイト・パートの採用活動においては、「人柄や、社風に合う等の人物重視」と答えた人が30.4%で最も多く、その他の雇用形態に比べても多いという結果となっています。他の雇用形態に比べると、アルバイトやパートのスタッフに対しては専門的なスキルや技能よりも、人間性の部分が重視されている傾向があるようです。
また、「即戦力人材を重視」(29.8%)「人数重視」(23.6%)を選んだ担当者も多く、現場の人材不足解消に向けた戦力になるかどうかもポイントとなっているようです。
採用基準として重要だと考えるポイント
こちらは、雇用決定のポイントとなった点についてのアンケート結果です。この結果から、企業の採用基準について一歩踏み込んだ傾向が見えてきます。
採用時のスタンスとして挙げられた項目は雇用形態により差が見られましたが、こちらの設問ではいずれの雇用形態においても似た傾向が見られました。
まず、最も多く選ばれた項目はすべての雇用形態において「人柄・性格」で、アルバイト・パートの採用で54.0%、新卒採用で55.0%、中途採用では52.9%と、半数を超える担当者が重要であると考えていることがわかりました。「協調性」についてもすべての雇用形態で上位3項目に含まれており、雇用形態に関わらず、採用活動においては人柄や組織内での協調性を重要視されている傾向があるようです。
その他、アルバイト・パートの採用活動においては「対人スキル」「身だしなみ」といったコミュニケーション能力に関わる部分や、「体力・健康」についても重要視されている傾向があります。
まとめ
アルバイトの採用活動においては、多くの企業で人柄や協調性が重視されていることがわかりました。また、コミュニケーション能力や、仕事を遂行するための体力といった部分を見るという担当者も多いようです。採用の際には、最初に述べたように採用基準として避けるべき項目もあります。また、採用活動としてとるべきでないとされている方法もあり、注意が必要です。
アルバイトの採用活動を成功させるためには、自社で求める人材像を明確にした上で、公平な選考に基づいた意思決定を行うことが大変重要であるといえます。
<参考>
※1:厚生労働省「事業主啓発用パンフレット:公正な採用選考をめざして(平成31年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/dl/saiyo-01.pdf
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