人材育成・マネジメント
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やりがい搾取を回避しつつ、アルバイトのやりがいを引き出した店長の話

これは、やりがい搾取でしょうか?

アルバイトリーダーにワン・オペレーションアルバイトを任せる
報酬(時給)の発生しないミーティングに、アルバイトを参加させる
休憩時間中に、普段できない経験をさせようと思い、まかないを作らせる

実は、正解はありません。
いずれもやりがい搾取になるかもしれませんし、ならないかもしれないということです。
やりがいを強く意識させることで、不当に安く働かせることを指す「やりがい搾取」には、法的な規定はなく、さまざまな要因に関係していることもあり、一概には言えません。
それでは、やりがい搾取とは具体的には何なのでしょうか?
このような中、アルバイトがやりがいをもって働くためには、現場マネージャーはどのような工夫をすればいいのでしょうか?

目次

ヘルプ先で「店のきれいさ」に驚いた話

やりがい搾取を回避しつつ、アルバイトのやりがいを引き出すための具体的な工夫

時間の対価としてのお金と、お金以外の報酬は両方とも重要なことがわかるデータ

まとめ

ヘルプ先で「店のきれいさ」に驚いた話

わたしが、ラーメンチェーンの会社に転職してすぐのときのこと。

とある店が「人手が足りず、営業できない」とのことで、1週間固定で、その店にヘルプに行くことになりました。
メニュー以外の店舗運営の細部については、店長に一任するのが会社の方針でした。

「他店の運営方法について知りたい」と思っていたわたしは、その店のいいところを1週間でできるだけ吸収してこようと意気込んでいました。

ヘルプに行き、まず印象的だったのは「店がきれいなこと」でした。

最初に気づいたのは、トイレです。
シフトに入る前、トイレを借りたのですが、まず無臭。照明は落ち着いた明るさで、埃はひとつも落ちていませんでした。
壁には清掃チェック表があり、2時間に1回はだれが清掃したのかがわかるようになっていました。
清掃状況を維持するとともに、利用者に安心感を与えるための工夫でしょう。

また、厨房や冷蔵庫の中まできっちりと清掃、整理整頓されていたのも印象的でした。厨房は油などで汚れやすく、冷蔵庫は食材の出入りが激しいため、整理整頓も崩れやすいものなのです。

 

やりがい搾取を回避しつつ、アルバイトのやりがいを引き出すための具体的な工夫

店がきれいなことには驚きましたが、清掃作業を行っているのは主にアルバイトです。
わたしの所属していた店では、アルバイトや社員が「好意で」時間外に作業することも多かったため、どのように管理しているのかについて興味津々でした。

そこで、シフトが被っていたアルバイトに聞きいてみることにしました。

「店がきれいで驚いたんだけど、どうやってるの?」
「ありがとうございます。ルールがあるので、それに沿ってやってますよ」
「どんなルールなの?」
「店舗ミーティングで決めています。ルールは、基本、全部アルバイトが決めていて、おかしなところだけ店長が直すというイメージです」
「アルバイトで決めているとは、すごいね……店舗ミーティングって時給とか出るの?」
「はい、1時間分だけもらっています。その1時間が終わったら帰る人は帰っていいし、残りたい人は残ります。でも、ミーティングは楽しいので、帰る人はいませんよ」
「そこまできちっとできてるんだね……」
「そうですね、『タダ働き』ではないですし、自分で店を作っている気持ちになれるんです。他にもバイトをしたことがありますが、こんな店は初めてです」

アルバイト管理の秘訣を一言で言えば、「やりがい搾取を回避しつつ、アルバイトのやりがいを引き出す」ということでした。

具体的には時給の発生する「時間」を基準にして、仕事とそれ以外をわけるラインを引いています。そして、そのラインをクリアした後は、できるだけアルバイトの裁量に任せつつ、店長が責任をとる仕組みにしているのです。

アルバイトの裁量に任せるというのも、アルバイトのやる気につながるよう、以下の一例の通り細かな工夫がされていました。
長時間のシフトにならないようにする(体力的な負担を減らす)
会社制度のインセンティブは、ポチ袋に入れて店長が直接渡す(感謝の気持ちを伝える)
アルバイトのスキルレベルが一目でわかるよう表にして掲示する(自発性、向上心の醸成につなげる)

この店舗は、年間予算達成率1位、社員・アルバイト離職率ゼロを達成し、1年後、全60店舗の中で最優秀店舗として表彰されました。

 

時間の対価としてのお金と、お金以外の報酬は両方とも重要なことがわかるデータ

「やりがい搾取を回避しつつ、アルバイトのやりがいを引き出す」ためのポイントは、大きく以下2点です。

・お金(時給)の発生する「時間」を基準としてアルバイトを管理する
・お金以外の報酬を付与する

アルバイトは一般に、「働いた時間」で報酬が決まる時間賃金制を採っている事業主が多い働き方です。
一方で「やりがい搾取」とは、やりがいを強く意識させることで、不当に安く働かせることを指します*1。
勤務時間内であれば、やることが多かったり、指導が厳しかったりしても「不当だ」とは感じにくく、「やりがい搾取」にはつながらないでしょう。

マイナビの主婦(夫)アルバイト調査*2によれば、「アルバイトをしている主婦(夫)は、詰まるところお金のために働いている」ということがわかります。

株式会社マイナビ「主婦(夫)アルバイト調査」2019年5月
https://www.mynavi.jp/news/2019/05/post_20209.html

赤枠「生活費のため」、「自由に使えるお小遣い稼ぎのため」、「貯金をするため」、「ローンのため」は、詰まるところお金の話です。
これらを「最も当てはまる」(一択回答)として回答した人の割合は、合計すると89.3%にも上ります。

お金のために働いている以上、「適正な時給」が支払わなければ不当であり、そのままやりがい搾取につながってしまいます。

だからこそ、働いた時間に対して報酬が決まるアルバイトは、時間を基準に管理するべきであり、これは労働環境における最低ラインの条件と言えるでしょう。

「適正な時給」(=時間を基準としたアルバイト管理)をクリアしたならば、次に重要なのは、いかにお金以外の報酬でやりがいを引き出すかです。

なぜなら、以下の資料*3からわかるように「お金以外の要素を報酬として感じる人が多い」からです。

株式会社マイナビ「主婦(夫)アルバイト調査」2019年5月
https://www.mynavi.jp/news/2019/05/post_20209.html

グラフを見ると、赤枠「給料が上がったとき」にやりがいを感じた(「最も当てはまる」(一択回答))としているのは9.9%に過ぎません。
むしろ、お金以外の要素をやりがいに結び付けているアルバイトの方が多いのです。

これは、簡単に時給を上げるわけにいかない上、その権限も限定的である現場マネージャーにとっては朗報でしょう。

お金は、アルバイトを働かせる上では必要不可欠で、クリアすべき最低ラインの条件ですが、アルバイトのやりがいを引き出すには、それ以外の要素の方が大きいのです。

 

まとめ

繰り返しになりますが、やりがい搾取を回避しつつ、アルバイトのやりがいを引き出すためには、以下2点が重要です。
お金(時給)の発生する「時間」を基準としてアルバイトを管理する
お金以外の報酬を付与する

しかも、やりがいをもって働くことは、スタッフの定着率はもちろん、仕事のパフォーマンス、自発性、健康増進などにおいてポジティブに作用することもわかっています*4。

どこからがやりがい搾取で、どこまでがやりがいをもって働かせることなのか。
100%の答えはありません。

しかし、この記事で紹介した店舗の運営方法は一つのヒントになるはずです。

(*1)
引用)マイナビニュース/やりがい搾取とは?「成長できる仕事」に要注意の理由
https://news.mynavi.jp/article/20190614-841397/

(*2)
引用)株式会社マイナビ「主婦(夫)アルバイト調査」2019年5月
https://www.mynavi.jp/news/2019/05/post_20209.html

(*3)
引用)株式会社マイナビ「主婦(夫)アルバイト調査」2019年5月
https://www.mynavi.jp/news/2019/05/post_20209.html

(*4)
引用)厚生労働省ホームページ「令和元年版 労働経済の分析」P196、P200、P203
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

【著者】
めんおう

専業ライター。
大学卒業後、防衛省、民間企業を経てフリーランスへ転向。インターネット、働き方、英語、取材などを中心に活動。

ブログ:めんおうCOM(https://mennousan.com/
Twitter:https://twitter.com/mennousan

 

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