新型コロナウイルスの流行によって、体調の変化に注意する人が増えました。
体調の変化の中でも、気になる症状のひとつが「発熱」です。
以前は解熱剤を使って休まずに仕事をしていた方もいるかもしれませんが、今は無理せず休む風潮が広まってきています。
事前に自宅で検温し、発熱に気づけばいいのですが、会社に来た時点で発熱が発覚することもあります。
この場合、職場としてどのように対応したらよいのでしょうか?
そこで今回は、発熱の仕組みや原因を解説し、応募者や社員が職場で発熱した場合に職場はどのような対応をしたらいいのかまとめました。
目次
発熱とは?体の中で何が起こっているのか
「体温を測る」というと、多くの方が脇の下で測る方法をイメージするでしょう。
実はそれ以外にも、口(口腔温)や直腸(直腸温)で測る方法があります。
コロナ禍では、間接的に皮膚の表面で測る方法も広まりました。
ここでは、一般的な方法である脇の下で測る体温(腋窩温)で説明します。
体温には個人差がありますが、発熱には定義があります。
厚生労働省の資料にある「医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準」によると、発熱とは体温が37.5℃以上の場合をいい、38.0℃以上は「高熱」と定義されています。*1
体温は常に一定に保たれているわけではなく、一日の中で多少上下しています。
一般的に、朝は低く、夕方に高めになり、夜寝る前には再び低くなります。
体温の調節は、脳の視床下部で行われています。
例えば感染症にかかりウイルスや細菌が体の中に入ると、視床下部にある体温調整中枢が通常より高い体温に設定されます。
そうすると、寒気を感じて体が震えたり、血管が収縮して手足が冷たくなったりして、体温が上がります。
設定された温度に達すると寒気が治まり、発熱が維持されます。
ウイルスや細菌が体から排除されれば、体温調整中枢で設定された体温は平熱に戻ります。
私たちにとって発熱は不快な症状ですが、発熱することでウイルスや細菌の活動を弱め、免疫活動が活発になるため、体にとっては重要な役割を果たしています。
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発熱はなぜ起こる?発熱の原因となる病気とは
発熱が起こる原因には、さまざまあります。
ここでは、代表的なものを5つ紹介します。
(1)感染症
風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなど、ウイルスや細菌に感染すると発熱します。
発熱の原因の中でも、多くの場合感染症が疑われます。
(2)炎症
体に何かしらの炎症が起きると発熱します。
例えば、事故による怪我ややけどなどで皮膚が炎症を起こすと、発熱の原因となります。
(3)がん
がんそのものによって発熱する場合だけでなく、がんによって免疫力が低下し感染症を引き起こす場合、薬の副作用で発熱する場合などがあります。
(4)自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、自分自身を異物とみなして攻撃してしまう病気です。
通常、私たちの体にある免疫は、外部から異物が侵入してきたときに排除しようと働きます。
しかし、自己免疫疾患の場合は、体は正常でも異常とみなしてしまいます。
自己免疫疾患の原因は不明です。
代表的なものに、関節の変形や痛みを感じる関節リウマチ、だるさや関節炎などを引き起こす全身性エリテマトーデスなどがあります。
(5)熱中症
熱中症は、体温がうまく発散できずに体の中にこもってしまうことが原因で起こります。
気温や湿度が高いとき、体内の水分が少ないときは、体温が発散しづらくなり発熱につながります。
発熱している人が出社することによる問題点
応募者や社員が発熱したまま出社することによって、どのような問題がおきるか見ていきましょう。
(1)完治が遅くなる
発熱は、体に備わっている免疫機能を最大限に高め、異物を排除するために起こります。
本来であれば、安静にしてこの機能を維持すべきですが、出社することで機能が低下し、症状が悪化したり完治が遅くなったりする可能性があります。
例として、インフルエンザの治療が挙げられます。
厚生労働省の「抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドライン」によると、インフルエンザの治療薬である抗インフルエンザウイルス薬は、48時間以降の投与は効果が不十分である可能性があると指摘しています。*2
完治が遅くなれば、職場にとって貴重な労働力を失ってしまうことにもなります。
(2)周囲の人にうつす可能性がある
感染症が原因で発熱している場合には、周囲の人にうつす可能性があります。
感染症は、人と人との接触機会が増えることで広まります。
新型コロナウイルスが流行してから、テレワークやステイホームが定着しましたが、それも接触機会を減らすのに有効なためです。
職場内で感染者が増えると業務が滞ってしまうため、職場内の感染を抑えることは重要です。
発熱しても、「これくらい大丈夫」と我慢してしまったり、休みづらい雰囲気から無理して出社する応募者や社員がいるかもしれません。
しかし、発熱したまま出社しても仕事に集中できず、効率が悪くなります。
さらに、上記2つの問題点があるため、発熱した人は無理せず休んだ方が長期的に見ると会社にとってもメリットが大きいと考えられます。
応募者や社員が職場で発熱した場合の対処法とは
特に感染症が流行している時期は、応募者や社員が職場で発熱した場合、本人はもちろん周囲も動揺してしまいます。
普段から、突然の発熱に備えて準備しておきましょう。
(1)感染予防対策を行う
体温計の他、アルコール消毒液やマスクを準備し、万が一応募者や社員が発熱しても感染を防げるよう対策を行います。
(2)再度体温を測る
気温が高かったり急いで来たりすると一時的に体温が上がることがあります。
これらの可能性を排除するため、再度体温を測ります。
(3)帰宅してもらう
再度体温を測っても高い場合は、すぐ帰宅してもらいます。
本人の体調を早めに回復させるため、さらに他の職員との接触を避けるために必要です。
(4)代替案を検討する
面接への応募者の場合は、解熱し体調が回復してから面接を行うか、オンラインでの面接を検討します。
社員の場合、環境が整っていればテレワークもよいでしょう。
代替案は、あらかじめ検討しておくと、発熱があった場合に慌てずに済みます。
(5)病院の受診を検討する
早めに解熱し、その他症状がなければよいのですが、なかなか解熱しない場合や他にも症状がある場合は病院を受診するよう応募者や社員に伝えましょう。
必ずしも、急いで受診する必要はありません。
食事が摂れ、他に症状がない場合は、一旦自宅で様子をみましょう。
新型コロナウイルスが流行して以降、事前に電話をして来院してもよいか確認が必要な病院がほとんどです。
まずは、病院に電話をして、症状を伝えたうえで指示を仰いでください。
ただし、熱がそれほど高くなくても、水分も摂れない、意識が朦朧とする場合は、夜間であっても受診しましょう。
また、気になるのが「何日休めば出社してもよいか」です。
上記で紹介したとおり、発熱の原因はさまざまで、感染症であっても多くの種類があります。
ウイルスや細菌によって周囲に感染させる期間が異なるため、医師の診察を受けなければはっきりとは分かりません。
最低でも、発熱や他の症状がなくなり、普段と同じレベルまで体調が回復するまでは、出社を控えた方がよいでしょう。
そして大事なことは、発熱したら気兼ねなく休める雰囲気をつくることです。
特に面接の応募者は、「せっかくの機会を台無しにしてしまう」「欠席したら、不合格になってしまう」という焦りから、無理をしてしまう方も多いでしょう。
しかし、無理をすることは本人のためにも職場のためにもなりません。
もし発熱したら、正直に会社に連絡してほしいこと、別日への振り替えやオンライン面接もできることを事前に伝えましょう。
まとめ
突然の発熱は、誰にでも起こる可能性があります。
いざというときに慌てないように、感染予防グッズを準備したり、対応方法をシュミレーションしておくと安心です。
本人のためにも周囲の社員のためにも、気兼ねなく休める雰囲気を作り、誰もが安心して働ける職場を目指しましょう。
【参照サイト】
*1
参考)厚生労働省 「「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について」の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9642&dataType=1&pageNo=1
*2
参考)厚生労働省 「抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/090217keikaku-06.pdf p84
【著者プロフィール】
浅野すずか
フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。
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