セミナー情報
/

大人気のケーキ屋さんなのに、アルバイトがまったく集まらないのはなぜか。

私が昔から住んでいる地域には、洋菓子店は少ない。
が、私はそれほど洋菓子を好まないので、あまり気にしませんでした。

しかし、3年〜4年ほど前にできた、一件のケーキ屋さんの製品が素晴らしく、価値観が変わりました。

ケーキ好きの妻はもちろん、洋菓子音痴の私ですら、感動するケーキの出来栄え。
焼き菓子もおいしく、「この店は流行りそうだね」と、妻と話していました。

実際、見た目は地味で、味も素朴ですが、逆にそれが地域住民だけでなく、遠方からの多くの人に受け入れられたようで、最近では疫病の蔓延をものともせず、連日売り切れの状態となり、なかなか買えない、という状態にすらなっていました。

結果として、店主は生産能力の拡大を決めたようで、店舗を近くの大きな場所に移転し、そこで営業を再開するとともに、店主が製造に専念できるように、売り子のアルバイトの募集を始めたのです。

今までは店主が製造も販売も行っていたので、確かに手が足りていなかったようです。
追加での製造ができないので、営業終了時間を待たず、品切れで店を閉めることもしばしばでした。

売り子がお店に立てれば、販売をしながら製造が可能で、販売の機会損失を防げるでしょう。
それは、お店にとっても、客にとっても良いことです。

 

しかし、残念ながら、求人媒体に募集をのせ、店舗にアルバイト募集の掲示をしても、一向に人が集まらないのだといいます。

いったいなぜ、人気店にも関わらず、アルバイトが集まらないのでしょうか。
店主や妻の知人たちに話を聞いてみると、「お店の思惑」と「アルバイトしたい人」のニーズがマッチしていないことが分かりました。

まず一つは、「忙しくない」こと。
私はそれを聞いて、「忙しい、の間違いでは?」と思ったのだが、そうではありませんでした。

このアルバイトの条件はある意味、緩いです。

1日の労働時間は3時間から4時間、週に入るシフトは2日、土曜日は必ず出てほしい、ということですが、夏や年末年始などはお店が休みなので、長期の休みがあります。

要するに、労働時間が短いのです。

結局、アルバイトとしては楽に見えますが、アルバイトの募集ターゲットである時間が豊富にある専業主婦には物足りず、家計の足しになるほど稼げません。
しかも、土曜日は必ず出る、ということで、家族の理解がないと出られないのです。
その割には稼ぎが少ない。

そしてもう一つは、経営者である「店主」と、近すぎるという点です。
お店の経営者と常に1対1になる状況では、非常に緊張する、という人が多いのだといいます。

いくら人気店でも、自分が働くとなると、条件が合わないところでは働けません。

店主は「ここが好きじゃないと、働いてもらえない。」と言っているそうなのですが、条件が合わなければ、いかにこの店のファンであっても、働き手にはならないのでしょう。

 

この話から引き出せる教訓は何でしょうか。
それは、アルバイト募集の本質は、「条件」だという、身もふたもない事実です。

いくらお店にファンが多く、商品に人気があっても、アルバイトが働いてくれるかどうかは「条件」次第であって、会社の知名度や、カルチャーや、ブランディングは、二次的な問題なのです。

事実、アルバイトに対する調査を見ると、「アルバイトを探した理由」で数が多いのは、
上から「貯金をするため」「自分の生活費のため」「仕事を辞めた」であり、ついで「趣味のため」「時間を有効に使いたい」「家族の生活費のため」と続いています。

 

マイナビキャリアリサーチLAB「非正規雇用に関する求職者・就業者の活動状況調査(2021年11-12月)」p.6
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20220201_22467/

ということは、そもそも、大半の人のアルバイトをする動機が「お金が欲しい」なのに、稼ぎづらい条件を掲げて「お店が好きな人に働いてほしい」というのは、アルバイトの労働マーケットを無視していると言えるのです。

なお、これは、職人的気質の経営者にありがちな話であり、他業種でも全く同じことが起きています。

おそらく、この店主は「ケーキの質」で顧客を数多く集めてきました。
派手な広告も宣伝も使っていません。
だから「商品の質」が高ければ、客は集まると考えている可能性が高いでしょう。

それは、アルバイト募集の施策にも表れています。
お店と求人媒体で少し募集をしただけであり、それは、そもそも「お店の質」が高いので、人が集まるだろうと考えているのです。

しかし、残念ながらアルバイトに応募する人が見ている「お店の質」は、お菓子の質ではなく、お金の条件面での質です。

だから、マーケティング的な思考からすると、「集まらないのは、マーケットを無視しているから」という、至極当たり前の話なのです。
しかし、職人気質の店主は「なぜか集まらない」と思ってしまうのでしょう。

 

マイナビキャリアリサーチLABのアルバイト採用活動に関する企業調査(2021年)によれば、アルバイトの人材不足は、前年度よりも深刻化しているようです。

(引用開始)アルバイトの人材不足と回答した企業は58.8%(前年比:+2.5pt)で、15業種中7業種が前年より人材不足となった。 (引用終了)

 

マイナビキャリアリサーチLAB「アルバイト採用活動に関する企業調査(2021年)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20220112_21418/

特に飲食では全体の6割以上の企業が人手不足であり、前年よりも悪化しています。

これを見ても、「お店のマーケティング」には熱心ですが、「労働条件のマーケティング」にはあまり力を入れていないか、労働者のニーズをとらえきれていない可能性が高いといえるでしょう。

人手は、お店の商品と同じく、マーケットを的確にとらえた募集が必要です。

そういう意味では、アルバイトとお客さん、両者に対して「ニーズは何か?」を真剣に考えていく必要がありそうです。

 

 


【著者プロフィール】

安達裕哉

◯Twitter https://twitter.com/Books_Apps

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(http://tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

あなたにおすすめ記事


アルバイト採用のことなら、マイナビバイトにご相談ください。

0120-887-515

受付時間/平日9:30~18:00

 

マイナビバイトは以下の期間をゴールデンウイーク休暇とさせていただきます。
4月27日(土)~4月30日(火)/5月3日(金)~5月6日(月)
5月1日(水)・2日(木)は営業します。

当サイトの記事や画像の無断転載・転用はご遠慮ください。転載・転用についてはお問い合わせください。

掲載料金・求人掲載のお問い合わせ