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人手不足の時代に考えたい、シニア求人と中長期の人材戦略

人材確保が厳しいなか、企業ではシニアの採用が進んでいます。
定年の廃止や引き上げ、継続雇用といった方法がありますが、何らかの形で65歳以上でも働き続けられる環境を整えることは必要不可欠と言える状況になってきました。

こうした中、65歳以上の人材の特徴やマネジメントの仕方を知ることと、人材戦略を練り直すことが必要になってくるでしょう。

高年齢者雇用の現状

日本の健康寿命は80.9歳で、世界的に非常に高い水準にあります(図1)。

健康余命の国際比較(出典:「平成30年度 年次経済財政報告」内閣府)
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p02012.pdf p160

そして今後は生産年齢人口の数が減っていきますから、シニア世代の労働力が企業活動にとって重要性を増していきます。
また、行政の観点からも高年齢者の雇用を確保する必要性があり、高年齢者を継続雇用する制度を設けるように、企業の義務付けがなされています(高年齢者雇用安定法、平成16年改正)。

「企業の定年は60歳を下回ってはならない」、とした上で、65歳未満の定年を定めている企業に対しては下のいずれかの措置を取らなければならないというものです。

その措置とは、
①定年の引き上げ ②継続雇用制度の導入 ③定年制の廃止
の3つで、現段階ではほとんどの企業がこの義務を守っています。令和元年の厚生労働省の調査では、31人以上の企業が①〜③のいずれかの措置を取っています*1。

この法改正は、65歳までの雇用を確保する目的がありました。
しかし現在では、66歳以上でも働ける制度のある企業が全体の3割にのぼっています(図2)。

図2 66歳以上も働ける制度がある企業(出典:「令和元年『高年齢者の雇用状況』集計結果」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11703000/000569181.pdf p7

31人〜300人規模の企業で制度を設けている割合が高くなっています。大企業よりも中小企業で高年齢者のニーズがより高い傾向にあることが窺えます。さらに、70歳以上でも働ける制度がある企業の割合は、大企業で23.3%(前年より+3.2ポイント増加)、中小企業では29.6%(前年より3.1ポイント増加)といずれも増えています*2。高年齢者を重要な人手として確保する動きが進んでいると言えるでしょう。

高齢者の雇用に企業が期待すること・心配すること

マイナビが企業の採用担当者を対象に行ったアンケート調査では、65歳以上の人材に期待していることとして「経験やスキル(38.2%)」「技術や知識の伝承(23.0%)」「労働力(22.5%)」が多くなっています(図3)。


図3 人材採用を進める上で各世代に期待・懸念すること(出典:「マイナビ 人材ニーズ調査」2020年)
https://www.mynavi.jp/news/2020/01/post_22307.html

しかし同時に「体力・健康」を懸念する企業も多く、29.3%にのぼっています。
このような特徴をうまく捉えた働き方、マネジメントの仕方が必要とされます。

高年齢者採用の好事例

66歳以上の人材活用について、厚生労働省が表彰している好事例がいくつかあります。このうち、わかりやすい2つのケースを紹介します*3。
ひとつは、福島県の建設関連会社です。この会社の従業員は32人で、うち5人が65歳~69歳、2人が70歳以上で構成されています。最高齢の従業員は81歳です。会社の制度としては65歳を定年としていますが、それ以降は一定の条件を見たせば年齢に関わらず正社員として再雇用しています。また、高年齢者には時短や隔日での勤務など、柔軟な働き方を可能にしています。
特徴的なのは高年齢者の役割を「若手の育成」「技術の継承」の2点であると明確にしていて、実際の現場では若手社員とペアで作業をするなどOJT強化に繋げていることです。

もうひとつは長崎県にある繊維関連会社で、この会社では2019年に定年制を廃止しました。
従業員92人のうち、8人が65歳~69歳、7人が70歳以上という構成で、最高年齢は75歳です。そして65歳以上の従業員は本人が希望する時間帯での勤務を可能にしています。多品種を少量ずつ、という受注が増えたという会社の状況が時短勤務を選択しやすくしています。
また高年齢の従業員は、外国人技能実習生の親代わりとして精神的な拠り所にもなっています。

これらの企業に共通するのは「時短」などの柔軟な働き方ができるということです。
定期的な通院を必要とする従業員は予定が立てやすくなりますし、病気などで欠員があっても対応できるといった形で、高年齢従業員の健康面への配慮も同時にできています。かつ、OJTの重要な担い手にもなっています。まさに先ほどの調査結果にある「経験やスキル」「技術や知識の伝承」「労働力」という、企業が高年齢者に期待する点を満たしながら、同時に「体力や健康」への懸念を最小限にしています。
企業にとっては理想形とも言えるでしょう。

また他の事例も含めて見ると、給与については従来の水準や人事評価を維持して支給するという企業も見られます。何より、無理のない範囲で高年齢ならではの経験を最大限活かせるという働き方は、モチベーションを向上させる大きな要素でもあるでしょう。

ミドル、シニア層の長期育成

年金の受け取り開始を75歳まで後倒しできるようになる見通しになったことで、66歳を超えてもこれまでの会社で働き続けたいという人は今後増えていくと考えられます。

かつ、厚生労働省は将来の労働力供給をこのように推計しています(図4)。

労働力需給の推計(労働参加進展シナリオ)

図4 労働力需給の推計(参照:「人生100年時代を見据えた多様な就労・社会参加の実現に向けて」厚生労働省)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai27/siryou7.pdf p4

男性の場合、2040年には65~69歳の7割、70~74歳の約半数、75歳以上の約2割が働くことで、労働力の需給バランスが取れるというものです。大幅な増加ですが、現在の人口ピラミッドに照らせば、数字の上ではそう違和感はありません。

企業内の年齢構成も大きく変わっていることでしょう。
今とは違い、50代あたりでもまだ「中堅」くらいの感覚になっていてもおかしくはありません。そして、今の感覚であれば50歳前後の従業員に新しく何かを学ばせるというのはあまり考えられないかもしれません。

しかし将来的には50歳前後からでもあと10年20年働く期間があります。
時代に即した新しい知識や技能は常に求められていきますし、10年20年あれば新しいスキルで役立てる人材になり得ます。若い人の割合は減っていきますから「新しいモノは若者任せ」というふうには行かなくなるとも考えられます。
例えば、日本は国際的に見て、IT分野でシニアの活躍割合が低い状態にあります(図5)。
一方で今後も人手不足が解消されそうにない分野です。

図5 IT分野でのシニア層の活躍(出典:「平成30年度 年次経済財政報告」内閣府)
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p02012.pdf p160

ITは一例としても、これからは若い段階では「多能の基礎」、40代50代でも「初めての仕事」があっても良いように思います。「学び直し」が常に必要とされるのにはこのような背景もあるでしょう。
将来、自社を構成する年齢ピラミッドがどのようになるのかを見据えて、中長期的な人材戦略や社内教育について考えておくのが良いでしょう。

 

*1、2 「令和元年『高年齢者の雇用状況』集計結果」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11703000/000569181.pdf p3、p8

*3 「令和元年度高年齢者雇用開発コンテスト 厚生労働大臣表彰受賞企業事例概要」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11703000/000546373.pdf p2、p6

 

【著者】
清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政を担当、その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。海外でも欧米、アジアなどでの取材にあたる。
Webライターに転向して以降は、各種統計の分析や業界関係者へのヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行なっている。

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