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アルバイトを採用する上で必要なマネジメント能力とは

アルバイトの指導は、簡単そうに見えて、実は難しいものです。はじめてのアルバイト採用ともなると、「何かトラブルになってしまわないだろうか」、「やる気を出してがんばってもらうにはどうすればいいのか」といった不安や疑問が出てきます。
離職を防ぎ、生産性を向上させ、顧客満足度をアップさせるには、どのようなマネジメント能力が必要になってくるのかをご紹介します。

前提のズレがあると相手への指示は難しい

アルバイトに任される仕事は一般的に、達成が困難な難しいタスクということはありません。しかし、難しいことをさせるわけではないからといっても、油断は禁物です。作業自体は難しくないとしても、指示の与え方ひとつで問題が起こることがあるからです。

正社員の場合であれば、採用選考や社員研修を通して組織の考え方や価値観が自然に身に付いていくため、指示を受ける社員の行動も、ある程度予測が立てやすいでしょう。
一方でアルバイトの場合、社員ほどの十分な研修の機会も少なく、考え方や価値観に必ずしも統一感が伴わないことがあります。そのため、アルバイトに指示を出す場合にこそ、高度なマネジメント能力が必要になってくる場合があるのです。

一例を上げると、筆者自身も新入社員研修や心理学のセミナーの際によく使う、あるパズルゲームがあります。
このパズルゲームは、自分と相手との間に目隠しのボードを置き、自分は言葉だけを使って、相手にパズルを組み立てさせるという一見すると単純なものです。自分と相手が持っているそれぞれのパーツの形は同じです。しかし、色は異なっており、お互いにそのことを知りません。

パーツは少し変わった形をしているので、色を使ってパーツを指定しようとすると、自分が意図したものとは異なるパーツを指定してしまうことになります。「自分と相手が持っているパーツは、形も色も同じだ」という勝手な思い込みによって、前提がズレてしまっていることに気がつかないと、このパズルゲームはうまくいきません。自分と相手の違いを認識したうえで、うまく指示を出せるかがポイントになってきます。
言い換えれば、会話の中で「もしかして相手は、同じ形でも見ている色が違うのではないか?」という事実に、いち早く気がつける力も試されていると言って良いでしょう。

このように前提がズレてしまっていると、こちらの指示に対して、相手はこちらの思うように動いてくれません。
アルバイトを動かすために必要なマネジメント能力とは、これほどまでに高度であると言って良いでしょう。

パワハラ、セクハラにならないために

相手との間に認識のズレがあると、コミュニケーションがうまくいきません。特に問題になりやすいのが、パワハラやセクハラになってしまうケースです。

例えば、こちらが厳しく指導したつもりでも、相手がそれをパワハラだと認識してしまえば、それはパワハラになってしまうわけです。
ですので、認識のズレを意識したうえで、こちらが意図したとおりに相手に伝わるようにするというのが、非常に重要です。

それでは、具体的にどのようなケースがパワハラやセクハラに該当するのでしょうか?

まずパワハラについては、以下の6つのタイプに分類されます。*1
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①身体的な攻撃
叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける。丸めたポスターで頭を叩く。

②精神的な攻撃
同僚の目の前で叱責される。他の職員を宛先に含めてメールで罵倒される。必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱る。

③人間関係からの切り離し
1人だけ別室に席をうつされる。強制的に自宅待機を命じられる。送別会に出席させない。

④過大な要求
新人で仕事のやり方もわからないのに、他の人の仕事まで押しつけられて、同僚は、皆先に帰ってしまった。

⑤過小な要求
運転手なのに営業所の草むしりだけを命じられる。事務職なのに倉庫業務だけを命じられる。

⑥個の侵害
交際相手について執拗に問われる。妻に対する悪口を言われる。
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厚生労働省が示しているのは上記の6つですが、これをさらにグループ分けすると、攻撃的態度(①、②)、不適当な要求(④、⑤)、人間関係上の不適当な扱い(③、⑥)という3つに分けることができます。

また、セクハラについても、対価型セクシュアルハラスメントと環境型セクシュアルハラスメントの2つに分類されています。*1
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①対価型セクシュアルハラスメント
経営者から性的な関係を要求されたが、拒否したら、解雇された。

②環境型セクシャルハラスメント
事務所内で上司が腰や胸などを度々触るので、また触られるかもしれないと思うと仕事が手につかず就業意欲が低下している。
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パワハラにしてもセクハラにしても、タイプは示されてはいるものの、その基準は分かりにくく、どこまでやってしまったら引っかかるのかというのは、一概には言えません。過大な要求や過小な要求にしても、どのラインを越えれば過大や過小になるのかは、人によってバラバラです。

あくまで「相手がどう感じるのか」が重要であり、なんらかの基準を作ってそれに当てはめて判定するだけでは、対処しきれません。
パワハラやセクハラだと言われてしまい、トラブルになってしまわないためにも、相手との認識のズレを意識し、こちらの意図がちゃんと伝わるようにすることが大事なのです。

相手にとって、こちらの振舞いや言葉が、どのように見えるのか、どのように聞こえるのか、そして、どのように感じるのかということを意識しましょう。

声のかけ方一つで変わる

パワハラやセクハラも、基準がはっきりせず、どう対処したらいいのかと悩まれる方もいらっしゃると思います。トラブルを回避し、アルバイトの人にがんばってもらうためには、どのように言葉をかければいいのでしょうか?

それには、無理に絶対的な基準に当てはめて考えようとせずに、相手をよく観察し、その相手に合った言葉を使うことが重要です。

筆者は、とあるビジネス心理学系のセミナーで、言葉の使い方一つで、結果が大きく変わるということを経験しました。

4人で一組のグループになり、その中で中心となるメンバーを決めるときのことです。講師が「それでは、そのグループの中で、リーダーをやってくれる人はいませんか?」と聞くと、誰も手が挙がりません。
講師は、その様子を見てしばらく考えて、「じゃあ、誰かそのグループの中で、お世話係をやってくれる人はいませんか?」と言いました。「言い方を変えただけでは・・・」と思われるかも知れませんが、この時はすぐに、一人の参加者が手を挙げてくれました。
相手に合わせて言葉を変えるという小さな努力によって、相手の行動が変わるという大きな結果が生まれたと言って良いでしょう。

「リーダー」と言われると、責任もあるし、やるのが難しそうなイメージが出てしまい、積極的な性格の人でないとやりたがりません。一方、「お世話係」と言われると、みんなのために動くというイメージがあり、あまり難しそうにも感じないため、それほど積極的な性格ではない人でも手が挙がりやすくなります。

講師は、受講生の反応をよく観察したうえで、動いてもらうのに一番適切な言葉を選んだわけです。伝えたいことが同じなら、言葉なんてどれを使っても同じように思えるかもしれませんが、実際は違います。自分が伝えたいように伝えるのではなく、相手に一番合った言葉を選ぶことが重要です。

どんな言葉が相手に合っていそうなのかを知るためには、相手をよく観察することが大事になってきます。

フィードバックやコーチングの重要性

アルバイトに、いきいきと働いてもらうためには、たんに指示を出すというだけでなく、仕事の結果に対して、フィードバックやコーチングをするということも重要です。こちらから一方的に指示を出すだけでは、アルバイトの人は、自分の行動の何が良くて、何が悪かったのかの判断がうまくできません。いいフィードバックやコーチングをすることができれば、アルバイトの人は、どのように行動すればいいのかが明確になり、それだけいい結果も生み出されます。

それでは、具体的にどのような効果が期待できるのかを、データで見ていきましょう。

厚生労働省の「労働経済の分析」という資料によると、フィードバックやコーチングは、ワーク・エンゲイジメントと呼ばれるものを高めるとされています。*2

ワーク・エンゲイジメントとは、バーン・アウト(燃え尽き)と対極にあるもので、仕事への活力、熱意や没頭感などから構成されるものです。このワーク・エンゲイジメントが高まることで、さまざまな効果が期待できます。

まず、離職率を見ると、ワーク・エンゲイジメントが高くなるほど、従業員が定着する割合が高くなっているのが分かります。

引用) 厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」P195
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

また、生産性を見ると、こちらもワーク・エンゲイジメントが高くなるほど、労働生産性が向上していると答えた人の割合が上昇している様子が分かります。


引用) 厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」P198
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

さらに、顧客満足度を見ると、こちらもワーク・エンゲイジメントが高くなるほど、顧客満足度が上昇していると答えた人の割合が高くなっています。


引用) 厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」P202
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

このように、フィードバックやコーチングによって、ワーク・エンゲイジメントが上昇し、離職率の低下、生産性の向上、顧客満足度の上昇という効果が得られます。

それでは、良質なフィードバックやコーチングをするためには、何に気をつければいいのでしょうか?

先ほども述べたように、相手に合った言葉を使うというのも大事ですが、それ以外にも、問題点を指摘する際は、「良い点→悪い点→良い点」というサンドイッチ形式にするのがポイントです。悪い点だけを指摘するという減点方式では、相手のやる気もどんどん低下していってしまいます。

また、悪い点を指摘する際には、「私は◯◯と感じました」というふうに、個人的な印象であることを強調した言い方にするのも大事です。「それがダメなんだよ!」という一般化しすぎた言い方は、決めつけ過ぎているうえに、相手に与える精神的負荷も大きくなります。

「アルバイトを雇って、うまく指導できるだろうか」という気持ちもあるかもしれませんが、大事なことは、相手に応じた対応ができるかどうかです。

そして相手を十分に観察し、その人に一番合っている言葉は何なのかということを、意識されてみてはいかがでしょうか。

 

引用:参照
*1
厚生労働省「あかるい職場応援団」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/pawahara-six-types/

*2
厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」 P190~192
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf

 

黒田貴晴
コミュニケーションの問題や発達障害を専門的に扱う心理カウンセラー、フリーライター。NLPマスタープラクティショナー。職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決をサポートしています。

 

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