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アルバイトへのボーナス支給は一切不要?最高裁判決から読み解く同一労働同一賃金

アルバイトを含むパートタイム労働者の待遇実態について

出典:「平成28年パートタイム労働者総合実態調査の概況 事業所調査II 2. 雇用管理の状況」12頁(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keitai/16/dl/jigyousho2-2.pdf
参考:「雇用の構造に関する実態調査(パートタイム労働者総合実態調査)」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/132-23.html

一般的に、アルバイト・パートなどと呼ばれる短時間労働者(パートタイム労働者)の待遇は、正社員に比べると低い傾向にあることが知られています。

上記の表は、平成28年(2016年)厚生労働省が実施した雇用に関する調査において、正社員とパート(アルバイトを含む)の両方を雇用している事業所で、両者にどのような待遇が与えられているかを示したものです。

同表によると、手当や福利厚生などに関する全調査項目において、正社員への実施割合に比べてパートへの実施割合が低くなっています。
賞与(ボーナス)に関しては、正社員に対して支給している事業所が83.7%に上るのに対して、パートに対して支給している事業所は34.9%にとどまっています。

パートの中にも、正社員に近い形で雇用されている人から、純粋な時給制のアルバイトとして採用されている人まで、幅広い働き方が存在するのが実情です。
そのため、純粋な時給制のアルバイトで働く労働者に対してボーナスが支給されている例は、実際にはかなり少ないものと推測されます。

 

アルバイトへのボーナス支給は不要?最高裁の基準とは

2020年10月13日に言い渡された最高裁判決では、医科大学のアルバイト職員が、大学側に対してボーナスの支給を求めた事案について、ボーナス支給を不要とする判断が示されました。

この最高裁判決の結論だけを見て、「アルバイトにはボーナスを一切支給しなくて良い」と一般的に当てはめてしまうのは早計です。

現在では法律上、「同一労働同一賃金」という考え方が採用されており、アルバイトの待遇については、この同一労働同一賃金の考え方に沿って検討する必要があります。

●同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金とは、いわゆる正社員と、短時間・有期雇用労働者の間の、不合理な待遇差を禁止する原則であり、「パートタイム・有期雇用労働法※」8条に規定されています。
※正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

同規定によれば、正社員と短時間・有期雇用労働者の間に待遇差が存在する場合、

・業務の内容や責任の程度(=職務内容)
・職務の内容および配置の変更の範囲(部署移動や転勤など)

などの事情のうち、問題となっている待遇の性質や目的に照らして適切と認められるものを考慮して、待遇差が不合理でないかを判断することになっています。

このことの帰結として、アルバイトなどの非正規社員であったとしても、正社員と比較して上記の要素が同等と評価できる場合には、正社員と同じ待遇を与えなければならないのです。
そして、同一労働同一賃金が賞与(ボーナス)にも適用されることは、同規定に明文で謳われています。

よって、たとえ肩書がアルバイトであったとしても、実質的に見て正社員と同等の働きぶりをしている従業員に対しては、法律上使用者に賞与の支給義務が課される可能性があるので注意が必要です。

●最高裁はなぜアルバイトへのボーナス支給を不要としたか
前掲の最高裁判決では、結論としてアルバイト職員へのボーナス支給を不要としましたが、肩書がアルバイトだからという理由だけでそのように結論付けたわけではありません。

最高裁は、上記の同一労働同一賃金の考え方に準拠して、アルバイト職員の職務内容について細かく認定を行ったうえで判断を下した点が注目されます。
具体的には、最高裁はアルバイト職員の職務内容について、以下の点を指摘しました。

①賞与(ボーナス)を支給する目的
使用者である医科大学が正職員に対してボーナスを支給する目的を、「正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着」と認定しました。

②業務の内容・責任の程度(職務内容)
アルバイト職員の職務内容が「相当に軽易であることがうかがわれる」とする一方で、正職員の業務の多様性や複雑性を指摘し、「両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できない」と結論付けました。

③職務の内容および配置の変更の範囲
正職員には就業規則上、人事異動が命ぜられる可能性があったのに対して、アルバイト職員については原則として配置転換がなかったことを指摘し、「両者の職務の内容および配置の変更の範囲に一定の相違があったことも否定できない」としました。

最高裁は、上記3つの点に加えて登用制度の存在などを指摘したうえで、正職員に対してボーナスを支給する一方で、アルバイト職員に対しては支給しないとする取り扱いを「不合理ではない」と判断したのです。

●最高裁判決への考察
最高裁としては、賞与支給の目的が本来「正社員の確保・定着」にあると述べているため、もとより正社員とアルバイトの間で賞与支給に関して待遇差が生ずることはやむを得ないと考えているようです。

しかし最高裁は、正社員とアルバイト社員の職務内容や、人事異動の有無などについて、詳細な比較を行ったうえで判断を下しています。
この点を考慮すると、より正社員に近い働き方をしているアルバイト社員がいたケースなどでは、正社員と同等または一定割合の賞与を支給すべきと判断する余地を残したと評価すべきでしょう。

つまり今回の最高裁判決は、あくまでも問題になっている事案に対する判断であって、「アルバイトに対しては一切ボーナスを支給しなくて良い」と一般的に結論付けるものではないことに注意する必要があります。

 

ボーナス不支給についてアルバイトから不満が出たらどう対処する?

同一労働同一賃金の考え方が普及していく中で、これまでアルバイトにボーナスを支給してこなかった会社では、ボーナス不支給について不満を主張するアルバイトが発生するかもしれません。

この場合、会社としてはどのように対処すべきなのでしょうか。

●ボーナスの支給要否はアルバイトの職責次第
最高裁判決の論理にも表れている同一労働同一賃金の考え方に従うと、アルバイトにボーナスを支給する必要があるかどうかは、正社員と同等の職責(業務内容・責任・配置転換など)を担っていると評価できるかどうかによって決まります。

アルバイトは一般的に、

・定型的な業務に従事している
・正社員の補助的な役割を担っている

といった傾向があり、この場合はアルバイトにボーナスを一切支給しないとしても、法的には問題がない可能性が高いでしょう。

しかし、正社員並みの総合的・クリエイティブな職責を担っているアルバイトや、人事異動の対象であるアルバイトについては、使用者に一定のボーナス支給義務が生じる可能性があります。

●労務紛争のリスクを最低限に抑えるべき
使用者にとっては、アルバイトなどの労働者からボーナスの支給を求められて紛争に発展した場合、労働審判や訴訟への対応に時間と費用を大きく取られてしまいます。
そのため使用者としては、労務紛争のリスクをできる限り低く抑えなければなりません。

労働者からのクレームを防止するには、労働者に対して、待遇面に関する説明を尽くして納得を得ることが大切です。
ボーナスについても、なぜその金額を支給するのか、あるいはなぜ支給しないのかについて、労働者から質問された場合に論理的に説明できるように準備しておきましょう。

また、正社員並みの働きをしているアルバイトについては、一定のボーナスを最初から支給してしまうのも一つの手段です。

いずれにしても、労働者から待遇面での不満が出ないように、十分な説明と適切な待遇を与えることが重要になるでしょう。

 

 

 

 

阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。専門は不動産・金融法務。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連の記事執筆にも注力している。

https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

 

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