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今注目の「ふるさと副業」とは?メリットとデメリットを押さえキャリアを活かし地方に貢献しよう

コロナ下で拡大する副業。
その中でも現在、注目を集めているのが「ふるさと副業」です。
企業・従業員のどちらにもさまざまなメリットをもたらすといわれているふるさと副業とは、どのような働き方なのでしょうか。

目次

コロナ下で拡大する副業

「ふるさと副業」のメリット

 よりよい副業のために

コロナ下で拡大する副業

まず、副業をめぐる現況をみていきましょう。

~国・企業による推進~
企業の副業制度が広がったのは、厚生労働省が2018年に改定した「モデル就業規則」に、
「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」
と明記し、副業を容認したことが契機となりました *1:p.3。
さらに、2020年に閣議決定された「成長戦略実行計画」 にも、経団連の「成長戦略」にも、副業・兼業の推奨が盛り込まれています *2:p.1、*3。

こうした状況を受け、副業を容認する企業が増加しつつあります。
マイナビの「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)」(調査対象:中途採用業務を行った企業の人事担当者)によると、副業を認めている企業は49.6%と約半数を占めています *4。

~副業のメリット~
ここで副業のメリットについてみていきましょう。
まず、副業を認めている企業の導入理由はどのようなものでしょうか。

図1 副業・兼業の導入理由
出典:*4 マイナビ(2020)「働き方、副業・兼業に関するレポート2020」
https://www.mynavi.jp/news/2020/10/post_28795.html

「社員の収入を補填するため」という経済的な理由が第1位を占めますが、「社員のモチベーションを上げるため」「社員にスキルアップしてもらうため」がそれに続きます。

では、社員の方はどうでしょうか。
マイナビが行った「副業に関する意識調査」の結果をみてみましょう(図2)。

図2 社員が副業を始めた理由
出典:*5 マイナビ(2021)「マイナビ転職、『副業に関する意識調査』」
https://www.mynavi.jp/news/2021/01/post_29421.html

図2から、収入に関する理由が上位3位までを占め、副業を通して収入を増やしたいと考えている人が多いことが窺えます。
一方、スキルアップや経験、生きがいやライフワークを副業の理由に挙げた人の割合は20%台に留まります。

ところが、副業経験者が副業で得たい希望月収は平均132,546円なのに対して、実際の月収は平均59,782円で、その差は2倍以上であることが、同調査でわかっています *5。

では、副業をしている人は不満足なのでしょうか。
実はそうともいえないのです(図3)。

図3 副業を実際にやってみて満足しているか(単一選択)
出典:*5 マイナビ(2021)「マイナビ転職、『副業に関する意識調査』」
https://www.mynavi.jp/news/2021/01/post_29421.html

上述のように、収入には希望と実態との大きな乖離があるにもかかわらず、「とても満足」「やや満足」を合わせると65.5%に上っていることから、多くの人が収入以外のことに対して満足していることが窺えます。
では、満足した層はその経験から何を感じたのでしょうか(図4)。

図4 副業に満足している層が副業の経験から感じたこと
出典:*5 マイナビ(2021)「マイナビ転職、『副業に関する意識調査』」
https://www.mynavi.jp/news/2021/01/post_29421.html

副業を経験して満足を得た層には、「やりがいを感じた」「視野が広がった」「人脈が広がった」という肯定的なメリットを挙げた人がそれぞれ30%程度いることがわかります。

最後に、「副業で実現したいことを、転職することによって実現できるか」という質問に対して、「実現できる」と回答した人は全体の約30%で、見込める収入や生計が立てられるかどうかを考えると、現在の仕事を続けながらあくまで副業としてやりたいという回答が目立ちました *5。

こうした状況から、副業を希望する社員は増加傾向にあるとみていいでしょう。

以上のことから、企業は社員が副業することによって、社員の収入補填だけでなくモチベーションやスキルが向上することを期待していることがわかります。
一方、副業を経験した社員の過半数は副業経験に満足し、やりがいや視野・人脈の広がりなど肯定的なメリットを感じている人が一定の割合いることがわかります。
こうしたメリットに合致するのが、現在、注目されている「ふるさと副業」です。

「ふるさと副業」のメリット

「ふるさと副業」とはどのような働き方でしょうか。

~「ふるさと副業」とは~ *6
最近、都市部で働きながら、地方の企業の仕事に取り組む人が増えてきました。
都市部に住む会社員の中には、社会への貢献ややりがいを感じたい、出身地や本業の出張で訪れた地方都市と継続的に関わりたい、これまでの経験やスキルを生かしたいと考える人がいます。
また、コロナ禍で地方移住への注目度が上がり、出身地へのUターンや農業への転向、事業の開業を実現させたいという人が増えてきているという背景もあります。

一方、地方自治体や慢性的な人材不足に悩む地方企業は、特に長期的な事業変革、事業創造分野で経験や知見、スキルをもち、斬新なアイディアを提供してくれる人材を求めています。
そのような人材が本業としてではなく副業として働いてくれれば、人件費の削減にもつながります。

「ふるさと副業」は、都市部の社員と、地方企業や地方自治体がマッチングすることによって、双方が上のような希望を叶えることができる働き方として、期待されています。

さらに、本業の勤務先も、社員が「ふるさと副業」の経験を通して培った経験やナレッジ、人脈を活用することが可能です。

~事例~
ここでは「ふるさと副業」のいくつかの事例をご紹介します。

■出張をベースにした「ふるさと副業」 *7
「ふるさと副業」には、都市部で本業を行いながら、月1回程度、現地に出張してプロジェクト会議やミーティングに参加するというスタイルがあります。

地方企業には、戦略・企画立案といったポジションを求めるところが多く、報酬は月3~5万円程度です。
高い報酬とはいえませんが、現在、副業に興味を持つ都市部の正社員にとっては、報酬が高くなると責任感が増し、参加へのハードルが却って高くなってしまうケースがあります。
そのような場合には、「往復交通費+α」程度の条件が、気軽に参加できる動機付けにもなるので
す。

また、地方企業にとっては、わずかな報酬でも都市部のさまざまな能力を持つ人材を雇用することができますし、コストが低いため複数人採用することも可能です。
こうしたスタイルでは、最初は3~5万円で雇用関係を始め、人材によっては当初より報酬を増やす企業もあります。

都内の大手企業でマーケティングの仕事をしているMさんもそのような働き方をしています。
Mさんは大学進学時に地元を離れ、懸命に働くうちに、いつしか35歳になっていました。
自宅と勤め先を往復する日々の中、故郷を思うことが多くなってきたMさんは移住・Uターンも考えましたが、家庭もあり、東京での生活は充実しています。
それに、入社以来積み上げてきたキャリアを捨てるのも惜しい。

しかし、故郷への思いは募る一方です。
そこで、Mさんは培ってきたマーケティングのスキルを活かして、地元の企業で副業を始めました。現在は月2回、現地に赴き、なくてはならない存在として、同社で活躍しています。

Mさんは都市部での生活を継続しながら、副業を通じて故郷と継続的に関わり、地域貢献できることに満足しています。

■オンラインによる副業 *8
東京都内のコンサルティング会社に勤めるIさんは、本業企業の勤務時間外の平日夜や休日を利用して「ふるさと副業」に取り組んでいます。
業務は、岩手県釜石市のM食品会社がネット販売をする漬物の売り上げを伸ばすこと。
Youtubeを使ったプロモーションを提案するIさんについて、M社の社長は「今まで社内にいなかったノウハウを持つ人材」と評価しています。
Iさんは将来は地元の山口県に戻ってデジタル・IT分野で地域貢献したいと思っていますが、まずは地域を特定しないで副業に挑戦し、経験を積んで今後のキャリアや将来の夢につなげたいと考えています。

 

 よりよい副業のために

以上の事例から、「ふるさと副業」のメリットとポテンシャルの高さが窺えます。
ただ、今後、「ふるさと副業」が広く認知され社会に浸透していくためには、副業に関する懸念材料を解消する必要があります。

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年策定、2020年改定)によると、副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされています *1:p3。
つまり、労働時間外に副業するのは労働者の自由です。
ただし、以下に該当する場合には、企業が副業・兼業を制限する条件になるとしています。

① 労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

以上のことは、副業・兼業に対して企業が抱く印象の第1位、4位、5位、7位と合致します(表1)。

表1 副業・兼業に対する印象 上位7位(副業を認可する企業・不認可の企業)

出典:*4 マイナビ(2020)「働き方、副業・兼業に関するレポート2020」
https://www.mynavi.jp/news/2020/10/post_28795.html

こうした懸念を払拭するためには、労使双方が以下について留意する必要があります *1:p4-8。

① 職務専念義務
② 秘密保持義務
➂ 競業避止義務
④ 誠実義務

また、労働基準法などの法的な規制についても配慮が必要です。
特に就業時間の把握・管理と健康管理への対応は副業をめぐる重要な課題のひとつです。
所定労働時間に関する複雑なルールを理解し遵守するのはもちろんですが、それ以前に、企業は社員が実際に副業にどのくらいの時間をかけているのか正確に把握するのは難しく、社員の自主管理に任せざるを得ないという問題があります。

本業に支障をきたしたり、体調不良になったりしたら、本末転倒です。
トラブルを避けるためには、事前に企業と労働者がよく話し合い、相互理解を深めるとともに、時間管理と健康管理を適切に行い、継続的に副業に取り組める体制を維持することが大切です。

*1
厚生労働省(2020)「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年策定、2020年改定)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf
*2
総理官邸(2020)「成長戦略実行計画」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/ap2020.pdf
*3
一般社団法人 日本経済団体連合会(2020)「新成長戦略」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/108.html
*4
マイナビ(2020)「働き方、副業・兼業に関するレポート2020」
https://www.mynavi.jp/news/2020/10/post_28795.html
*5
マイナビ(2021)「マイナビ転職、『副業に関する意識調査』」
https://www.mynavi.jp/news/2021/01/post_29421.html
*6
マイナビニュース(2020)「『ふるさと副業』で地域貢献 時短勤務や週休3~4日制導入で、能力の生かしどころは地方ヘシフト?」
https://news.mynavi.jp/article/20201023-1432182/
*7
マイナビニュース(2019)「副業は地方で『気軽に』行うもの? 理由を聞いた」
https://news.mynavi.jp/article/20190428-sidebusiness/
*8
読売新聞(2020)「オンライン副業 増加…在宅勤務浸透 空き時間を活用」
https://www.yomiuri.co.jp/life/20201105-OYT8T50112/

 

横内美保子(よこうち みほこ)
博士(文学)。元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。
Webライターとしては、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

Twitter:https://twitter.com/mibogon

 

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