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「一時解雇(レイオフ)」とは?人件費抑制方法としての可能性を弁護士が解説

新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が減少する企業が多発しています。

売上が減少した企業としては、人件費を抑制することが財務改善の手段になり得ますが、既存の従業員の人件費をいかにして減らすかは大きな問題です。

この点、諸外国を中心に行われている「一時解雇」という方法が、人件費削減の選択肢として挙げられます。
しかし、日本の労働法下で一時解雇を行うには、法律上高いハードルをクリアしなければならないので注意が必要です。

この記事では、「一時解雇」の概要および日本の解雇規制との関係、さらにコロナ禍におけるその他の人件費抑制方法などについて、弁護士の視点から解説します。

目次

「一時解雇」とは?

日本で一時解雇をすることは困難

一時解雇以外に人件費を抑制する方法は?

まとめ

「一時解雇」とは?

「一時解雇」とは、一般に「再雇用を前提とした一時的な解雇」を意味します。
「レイオフ」と呼ばれることもあります。

主に業績の悪化を理由として人件費削減の必要性が生じた場合に、「業績が回復したら、改めて雇用する」ことを約束して、既存の従業員の一部と雇用契約を打ち切るのが「一時解雇」です。

一時解雇は、海外における人件費削減の主要な方法として用いられています。
ただし、再雇用の条件が厳しく、事実上恒久的な解雇となっているケースが多いようです。

なお海外のケースでは、一時解雇をする従業員とのトラブル防止や生活保障などを目的として、「パッケージ」と呼ばれる退職金が支給されることが一般的となっています。

日本で一時解雇をすることは困難

海外で多用されている「一時解雇」ですが、日本の労働法下では、一時解雇を適法に行うためのハードルはきわめて高くなっています。

そのため、日本では一時解雇はほとんど行われず、後述する休業命令や退職勧奨による合意退職などが代わりに実施されるのが一般的です。

●「解雇権濫用の法理」により、解雇は厳しく制限される
労働契約法16条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は違法・無効となることを定めています。
これを「解雇権濫用の法理」といいます。

解雇権濫用の法理はきわめて厳格に運用されているため、企業が適法で従業員を解雇できるケースは稀です。
特に、経営の悪化を理由とする一時解雇は、いわゆる「整理解雇」に該当し、以下の4要件をすべて満たさなければ違法となります。

人員整理の必要性
整理解雇をしなければ、企業が経営危機に陥ることについて、客観的に高度の蓋然性が要求されます。

解雇回避努力義務の履行
役員報酬の削減・新規採用の抑制・希望退職者の募集・配置転換などにより、整理解雇を回避するための代替手段を十分講じても、なお整理解雇が必要と判断されることが要求されます。

被解雇者選定の合理性
整理解雇される従業員は、能力・実績などの客観的な基準に基づいて選定されなければなりません。

手続きの妥当性
従業員本人や労働組合への説明・協議を通じて、従業員側の納得を得るプロセスを経て整理解雇を実施する必要があります。

このように、一時解雇を適法に行えるケースは非常に限定的であるため、日本では一時解雇が実施されることは少なくなっています。

●どうしても一時解雇をしたい場合の対処法
「再雇用を前提として、一時的に雇用契約を打ち切る」という一時解雇の効果をどうしても発生させたい場合には、従業員との間で、以下の内容を含む合意書を締結する方法が考えられます。

・雇用契約を打ち切ること
・一定の条件を満たした場合に再雇用をすること、およびその条件
・雇用契約の打ち切り等に関して、相互に裁判上または裁判外の請求を行わないこと
など

上記は、法的には「一時解雇」ではなく「合意退職+条件付き再雇用の合意」と整理されます。
この形であれば、解雇権濫用の法理が適用されないので、企業は実質的に一時解雇と同様の効果を得ることが可能です。

ただし、再雇用の条件をどのように設定するかについては難しい検討が必要なうえ、従業員が同意しなければ実現しないことに注意しましょう。

 

一時解雇以外に人件費を抑制する方法は?

一時解雇が難しいとすれば、売上が減少した企業は、別の方法により人件費を抑制する必要があります。

一時解雇以外に考えられる、人権費抑制の主な方法は、以下のとおりです。

●使用者都合で休業を命じ、雇用調整助成金を受給する
もっとも有力と考えられるのは、従業員に対して使用者都合で休業を命じる方法です。

この場合、労働基準法26条に基づき、従業員に対して平均賃金の60%以上の「休業手当」を支払わなければなりません。
(なお、休業の経緯によっては、平均賃金の100%を補償しなければならないケースもあります。民法536条2項参照)

企業が従業員に対して休業手当を支払った場合、最大でその100%が「雇用調整助成金」によって補填されます。

参考:
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

雇用調整助成金を受けながら従業員に休業を命じれば、企業としては、従業員の雇用を維持しつつ、解雇に関するトラブルを避けることができるメリットがあります。

なお、雇用調整助成金の内容は、新型コロナウイルス感染症の流行状況などに応じて毎月アップデートされているので、最新情報を必ずチェックしてください。

●従業員に合意退職してもらう
中長期的に見て、事業規模の縮小がやむを得ないと判断される場合には、従業員と交渉のうえ、合意退職してもらう方法が考えられます。

ただし、従業員側にも合意退職のメリットがなければ、退職に応じてくれる可能性は低いでしょう。
そのため、上乗せ退職金を提示したり、再就職先をあっせんしたりするなど、従業員にとってのメリットを提示することが、合意退職の交渉を成功させるポイントです。

●給与の一方的な減額は原則不可
既存の従業員の給与を減額すれば、人件費を削減できると考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、従業員の給与は、雇用契約上の重要な要素であるため、減額には原則として従業員の同意が必要です。
正当な理由に基づく降格処分を行う場合などを除いて、既存の従業員の給与を減額することは違法となるため注意しましょう。

 

まとめ

現状の日本の労働法下では、一時解雇によって人件費を削減する方法は現実的ではありません。

仮に今後、解雇規制が緩和される方向となった場合には、一時解雇の活用可能性が注目される事態もあり得ます。
しかし、喫緊のコロナ対応という観点からは、一時解雇ではなく、休業命令などの別の方法を検討した方がよいでしょう。

コロナ禍により、企業にとっては厳しい経済状況が続いています。

各種の助成金や融資などを活用して、雇用を維持しながら何とか我慢を続けていれば、コロナ禍が明けた際に事業をV字回復させられる可能性があります。
その一方で、コロナ禍の先行きは不透明であり、いつまで持ちこたえられるかという不安は常に付きまとうでしょう。

企業には難しい判断が迫られていますが、できる限り情報を収集したうえで、状況に応じた最善の判断ができるように努めましょう。

 

阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。専門はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

 

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