組織・チーム
/

いまさら聞けないテレワークの基本を解説!メリットと課題を理解してテレワークの導入しよう

コロナ禍を背景に導入が進んだテレワーク。
そのメリットが評価され、ウィズコロナ、アフターコロナの時代にも定着しそうな状況がみえてきました。

ただ、正社員に比べアルバイトのテレワークは実施率が低いのが現状です。
導入すべきか迷っている経営者も多いのではないでしょうか。

そこで、本稿では、テレワークの基本を押さえた上で、取り組み事例を通してアルバイト社員のテレワークが有益であることを示し、労務管理のポイントも併せてご紹介します。

目次

テレワークの特徴と導入状況

アルバイト社員のテレワーク事例

事例にみられるテレワークのメリット

テレワークの課題と労務管理

おわりに

テレワークの特徴と導入状況

そもそもテレワークとはどのような働き方なのでしょうか(以下の図1)。

図1 テレワークの概念図
出典:*1 総務省(2019)「『働く、が変わる』テレワーク~先進事例のご紹介~」 p.2
http://teleworkkakudai.jp/seminar/2019/pdf/tokushima/soumu191211.pdf

図1に示されている3つの形態には、表1のような特徴があります。

表1 テレワークの3形態と特徴

出典:*2厚生労働省(2018)「情報通信技術を利用した事業場外勤務の 適切な導入及び実施のためのガイドライン」 p.1
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/3003011.pdf

このように、テレワークは働く場所を固定化しないことによって柔軟な働き方を可能にし、それによってさまざまな効果をもたらします(下の表2)。

表2 テレワークのメリット

出典:*3 厚生労働省テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf

就業者は柔軟な働き方を求めています。
そのため、テレワークを実施している企業には多くの人材が応募し、その結果、優秀な人材の確保・就労定着につながります。
こうした原理は、正社員だけでなく、アルバイトを対象にした場合も同様に作用します。

では、テレワークを実施している企業はどのくらいあるのでしょうか(下の図2)。

図2 テレワークの実施割合(左図)とテレワークを始めた時期(右図)
出典:*4 東京商工会議所 中小企業のデジタルシフト推進委員会・災害対策委員会(2020)「『テレワークの実施状況に関する緊急アンケート』調査結果」( 2020年6月17日発表) p.3
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1022367

この図は東京の企業を対象にした調査結果です。
「前回調査」と「今回調査」の結果を比べると、わずか2カ月あまりの間に急速に導入が進み、実施している企業は67.3%に上っていることがわかります。

次に実施企業の規模と業種をみてみましょう(下の図3)。

図3 テレワークを実施している企業の規模別割合(左図)と業種別割合(右図)
出典:*4 東京商工会議所 中小企業のデジタルシフト推進委員会・災害対策委員会(2020)「『テレワークの実施状況に関する緊急アンケート』調査結果」( 2020年6月17日発表) p.4
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1022367

企業規模別にみると、企業規模が大きいほど実施割合が高いことがわかりますが、従業員が30人未満の規模であっても45%が既に実施し、さらに14%が実施を検討していることがわかります。

次に業種をみると、サービス業や製造業が高い割合を占めていますが、これはこのアンケート調査に回答した対象企業の多くがサービス業や製造業だったに偏っていたことも一因だと考えられます *4:p.2。

実施割合が一番、低いのは小売業で44.4%。
この小売業は「実施する予定がない」が48.9%で実施割合を上回り、今後、実施割合が高くなるとは予想しにくい状況がみえます。
でも、裏返せば、実施が難しいはずの小売業でもこれだけの企業が実施しているともいえます。

アルバイトを含む非正規雇用労働者は、全労働者の4割弱を占めています *5。
アルバイト社員のテレワーク導入をそろそろ検討すべき時期にきているといえるのではないでしょうか。

 

アルバイト社員のテレワーク事例

ここでは、2例の事例をご紹介したいと思います。
どちらも、アルバイトを含めたすべての社員がテレワークを実施している企業です。

全ての形態を取り入れたA社の場合
まず、1社目は、従業員114名のA社です *6:pp.39-40。
業務内容は、アウトソーシング事業、コールセンター 事業、システム開発事業。
本社は東京にありますが、日本全国に在宅勤務のアルバイトがいます。

テレワーク導入の契機は、2011年の東日本大震災でした。
震災直後、通勤困難なアルバイトが多数いたため、混乱が落ち着くまでと、期限付きで在宅勤務を導入しました。

ところが、それ以降、在宅勤務者が増え、現在、オフィスへは一部の社員が郵便物の受け取りなどに出向くだけです。

そうした実績をもとに、2018年には、東京都のモデル実証事業として、在宅勤務、 モバイル勤務、サテライトオフィス勤務と、表1でみた全ての形態のテレワークを実施しました(下の図4)。


             図4 A社のテレワーク概要図
出典:*6 東京都産業労働局(2019)「都内企業に学ぶ テレワーク実践事例集 2018年度 テレワークの活用促進に向けたモデル実証事業 Vol.2」 p.40
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/hatarakikata/telework/telework_30jirei.pdf

オフィス勤務とテレワークを組み合わせているB社の場合
次にご紹介するのは、筆者の家族が正社員として勤務する東京の企業です。

雇用形態は、正社員が35名、派遣スタッフが3名、アルバイトが5名です。
業種は建築関係で、事業内容は、チェーン展開型店舗の設計・監理業務、申請、改修工事です。

アルバイトの業務は、CADオペレーターのアシスタント業務、店舗設計・デザインの補助業務、一般事務です。

新型コロナの感染予防が契機となり、2020年3月末からすべての社員が暫定的に在宅勤務になりました。
その後、緊急事態宣言が解除されてからは、グループ親会社の意向と社員の要望とを調整し、週3回のテレワークと週2回のオフィス勤務を組み合わせています。

オフィス勤務日は基本的に各社員の希望にそって決めますが、同じ部署の社員は、正社員・アルバイトともに、できるだけ全員、同じ日に勤務するよう調整して、ミーティングや打ち合わせをしています。

報酬は、正社員・アルバイトともに従来どおりの時給ベース。
勤務時間は自己申告制で、始業時刻・終業時刻・休憩時刻を、各社員が所定の勤務表に記録しますが、パソコンの使用時間が部署のメンバー間で確認できるツールも用いています。

 

事例にみられるテレワークのメリット

ここでは、上でみた事例を通してテレワークのメリットを確認してみたいと思います。

それに先立ち、もう一度、表2をみてみましょう。

表2 テレワークのメリット


まず、A社の取り組みを通じて、企業のメリットを確認しましょう *6:pp.39-40。

A社の社員・アルバイトの採用担当者は和歌山県在住で、採用面接はWeb上で行いますが、業務に差支えはありません。
応募者は育児や介護で時間の制約がある人や地方在住の人など、テレワークを活用して働けることにメリットを感じる人が多く、優秀な人材を確保することができています。

採用された全ての社員がテレワークを行うため、事業所は非常にコンパクトで、経費削減にもつながっています。

次にB社の取り組みを通じて、社員にとってのメリットを確認してみましょう。

筆者の家族にとっての最大のメリットは、勤務時間の短縮です。
テレワークが始まるまでは、週5日、毎日、往復3時間を通勤に費やしていました。
その時間が有効活用でき、通勤にともなう疲労低減にもつながったことで、仕事の効率がアップし、残業時間も大幅に短縮できました。
それは、職場全体の生産性アップという企業側のメリットでもあります。

また、家庭には幼い子どもが2人いるため、在宅で育児のサポートができることも大きな魅力です。

アルバイト社員にも同様の家庭環境の人がいて、テレワークになってから仕事に対するモチティべ―ションがアップしたといいます。

 

テレワークの課題と労務管理

これまでみてきたことから、テレワークには多くのメリットがあることがわかりました。
ただし、テレワークには課題もあります。

~テレワークの課題~
まず、テレワークの課題と解決のヒントを概観したいと思います(下の図5)。


図5 テレワークの課題と解決のヒント
出典:*1 総務省(2019)「『働く、が変わる』テレワーク~先進事例のご紹介~」 p.7
http://teleworkkakudai.jp/seminar/2019/pdf/tokushima/soumu191211.pdf

このうち社内コミュニケーションに関しては、B社では主にチャットとメール、電話、オンラインコミュニケーションツールを必要に応じて使い分けています。

コミュニケーションツールだけでなく、勤怠管理用のツールなど、テレワーク用のツールにはさまざまなものがあります。
それらの有効利用も視野に入れるといいでしょう *7。

労務管理のポイント
最後に、どの企業にとっても重要な意味をもつテレワークの労務管理にフォーカスし、そのポイントをみていきましょう。

まず、テレワーク中であっても、以下のような労働基準法関係法令を守らなければなりません *3:p.6。

次に大切なのは、労働時間の把握です。
使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することが義務づけられています。

その際、問題になるのが「中抜け時間」です *3:p.7。
在宅勤務のテレワークでは、労働者が業務から離れる時間が生じやすく、その時間を中抜け時間と呼びます。

中抜け時間は、開始と終了の時間を社員に報告してもらい、休憩時間として扱うことができます。
その際、テレワークであってもフレックスタイム制を活用し、労働者のニーズに応じて、始業時刻を繰り上げたり、終業時刻を繰り下げることもできます *3:p.10。
また、休憩時間ではなく、時間単位の年次有給休暇として取り扱うことも可能です。

最後に、給与形態を時間給から成果物に変更する場合、アルバイトの場合には個人事業主、いわゆるフリーランスとの境界が曖昧になりがちです。
在宅勤務者が労働基準法第9条の「労働者」に該当するかどうか、その判断基準を明確にする必要があります *8

 

おわりに

政府は以前から「働き方改革の切り札」としてテレワークを推進してきました *1:p.2。
これまでみてきたように、テレワークは企業、社員双方に大きなメリットをもたらすからです。

折しも、「パートタイム・有期雇用労働法」が大企業を対象に2020年4月から施行され、中小企業にも2021年から施行されることが決まっています。
この法律では、「正規社員と非正規社員の不合理な待遇差」を全面的に禁止しています。

テレワークが普及しつつある今こそ、アルバイト社員のテレワーク導入を真剣に考えるべき好機だといえるでしょう。

出典・参考
【以下の閲覧日:2020年7月15日】
*1
総務省(2019)「『働く、が変わる』テレワーク~先進事例のご紹介~」
http://teleworkkakudai.jp/seminar/2019/pdf/tokushima/soumu191211.pdf
*2
厚生労働省(2018)「情報通信技術を利用した事業場外勤務の 適切な導入及び実施のためのガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/3003011.pdf
*3
厚生労働省テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf
*4
東京商工会議所 中小企業のデジタルシフト推進委員会・災害対策委員会(2020)「『テレワークの実施状況に関する緊急アンケート』調査結果」( 2020年6月17日発表)
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1022367
*5
政府広報オンライン(2020)「2020年4月1日、パートタイム・有期雇用労働法が施行されました
~いわゆる「同一労働同一賃金」の実現に向けて」(2020年4月28日発表)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202004/2.html
*6
東京都産業労働局(2019)「都内企業に学ぶ テレワーク実践事例集 2018年度 テレワークの活用促進に向けたモデル実証事業 Vol.2」
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/hatarakikata/telework/telework_30jirei.pdf
*7
厚生労働省「テレワーク用ツール<テレワーク総合ポータルサイト」
https://telework.mhlw.go.jp/intro/tool/
*8
厚生労働省「在宅勤務者についての労働者性の判断について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/zaitaku-kinmu/index.html

著者

 

 

横内美保子(よこうち みほこ)博士(文学)。

元大学教授。大学における「ビジネス・ジャパニーズ」クラス、厚生労働省「外国人就労・定着支援研修」、文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」、セイコーエプソンにおける外国人社員研修、ボランティア日本語教室での活動などを通じ、外国人労働者への支援に取り組む。現在、仕事のほとんどがテレワークです。

 

 

あなたにおすすめ記事


アルバイト採用のことなら、マイナビバイトにご相談ください。

0120-887-515

受付時間/平日9:30~18:00

当サイトの記事や画像の無断転載・転用はご遠慮ください。転載・転用についてはお問い合わせください。

掲載料金・求人掲載のお問い合わせ