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コロナの影響どこまで続く?有効求人倍率の推移と雇用情勢・日本経済の見通し

コロナ・ショックで雇用情勢の悪化が続いています。
有効求人倍率も9か月連続で減少し続け、完全失業率も悪化を続けています。

なかなか先が見えないコロナ禍の状況ですが、雇用や経済はどこまで落ち込むのでしょうか。
そこで本記事では、厳しい現状の分析と合わせ、有効求人倍率や雇用情勢の先行きについて各種数字から解説をしていきます。

 

求人数は前年比で25%の減少

有効求人倍率は、求職者1人あたり何件の求人があるかを示すものです。
厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率は1.03倍でした。
今年に入って9か月連続のマイナスです(図1)。

図1 有効求人倍率の推移(出所「一般職業紹介状況(令和2年9月分)について」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00047.html

また、地域によっては1倍を切っているところもあります*1。
求人数を実数で見ると、さらに厳しさがわかります。

全国のハローワークにある企業からの求人数を示す「有効求人数」は200万9091人で、去年の9月よりも68万6214人の減少、率にして25.5%のマイナスという水準です*2。

業界別に見ると、1年前と比べた有効求人数は唯一増加している建設業でプラス5.9%、大きく減少しているのは生活関連サービス業・娯楽業のマイナス32.9%、宿泊業・飲食サービス業でマイナス32.2%、卸売業・小売業でマイナス28.3%、製造業(マイナス26.7%)、運輸業・郵便業(マイナス25.1%)などです*3。

医療・福祉を除いたほとんどの業種で、求人数は大幅に減少しています。

また、9月の完全失業率は3.0%にまで上昇しました。こちらも悪化が続いています(図2)。


図2 完全失業率の推移(出所「労働力調査(基本集計)2020年9月分」総務省)
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

解雇や非正規の雇い止めにも歯止めがかかっていません。
厚生労働省が把握しているコロナ理由とした解雇や雇い止めは約6万5,000人です*4。
しかし実数はこれよりも多いと考えられます。

 

給料への影響、副業を始める人も

また、今回のコロナウイルスで非正規雇用の多くの人が収入に影響を受けています(図3)。最も多いのは「アルバイト」です。
シフトを減らす調整がしやすいためと考えられます。


図3 新型コロナの収入への影響
(出所「新型コロナウイルスによる非正規雇用への影響調査【就業者篇】」株式会社マイナビ)
https://www.mynavi.jp/news/2020/06/post_23554.html

ただ、収入の変化は業界によって異なることもわかっています(図4、5)。

図4、5非正規で収入が現象した業種と増加した業種
(出所「新型コロナウイルスによる非正規雇用への影響調査【就業者篇】」株式会社マイナビ)
https://www.mynavi.jp/news/2020/06/post_23554.html

大きく落ち込んだのは飲食フード(接客・調理)です。外食利用者の数が減ったことを反映しています。
また、テレワークなどで在宅時間が増えたことで客が増加しているコンビニやスーパーなどの小売業では収入が増加しています。

注目したいのは、「配送・ドライバー」では収入が増えた人もいれば減った人もいるという点です。
通販を利用する人の増加で忙しくなっている反面、いわゆる「BtoB」の取引が減少しているためと考えられます。

そして、副業を始めた人・検討している人の合計が全体では約25%にのぼっています(図6)。


図6 新型コロナウイルスの影響を受けて副業を始めたかどうか
(出所「新型コロナウイルスによる非正規雇用への影響調査【就業者篇】」株式会社マイナビ)
https://www.mynavi.jp/news/2020/06/post_23554.html

実際、筆者の自宅付近にはファストフードやファミレスの集中している場所があり、近辺で宅配の待機をしている配達員の姿が増えました。
職業柄筆者はよくフードデリバリーを利用しますが、これまで見かけなかった配達員の人たちがしばしば自宅を訪れるようになったのも印象的です。

また、非正規雇用に限らず、正社員でテレワークが標準になった会社員でも同様の傾向があります。
通勤時間がなくなったことや1日の業務が早く終わる日があるのを活かして、在宅で副業を始めたい、あるいは新しい資格の勉強を始めるという人も増えています。

なお、副業を始めるにあたって意識したいのは「リモートでできる仕事」です。
上の調査結果を見ても分かるのは、収入が減少しているのは接客など「現場での仕事」です。
なるべく人と接しない働き方が求められる中では、パソコンスキルを高めるのも選択肢のひとつです。

 

コロナ・ショックからの経済回復の糸口はあるのか

景気の動向を見てみましょう。

世界銀行によると2020年の日本のGDP成長率は-6.1%と予測されています(図7)。
これはリーマンショックで大きく落ち込んだ2009年を超える水準です。

図7 日本の実質GDP成長率
(出所「新型コロナウイルスの影響を踏まえた経済産業政策の在り方について」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sokai/pdf/026_02_00.pdf p10

そしてコロナ・ショックからの経済立ち直りには2年はかかるという観測が随所で見られます。
長引く理由はいくつか考えられますが、経済産業省の分析を見てみましょう。

基本的に経済は「ヒト」「モノ」「カネ」の流れが血流であり、これらの流れがストップ=血流がストップすると人体が危機に貧するのと同じだとよく例えられます。

その中で、これまでの「不況」と感染症による経済危機の違いを経済産業省は次のように説明しています(図8)。

図8 経済危機の類型(出所「通商白書2020」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2020/pdf/01-01-01.pdf p21

過去に不況を引き起こした要因として、東日本大震災に代表される災害、リーマンショックのような金融危機、そして今回の感染症の3分類としています。
かつそれぞれの特徴として、災害による経済危機は、生産設備や交通インフラの破壊によって「供給側」が打撃を受け、「売るものが減る=お金が使われなくなる」という構図を示しています。
ただ、これはインフラの回復に伴い経済は回復しています。

そして金融危機の場合は、消費が冷え込んで企業業績が悪化する、「モノは作れるが売れなくなる」という理由でお金の巡りが悪くなります。
資産価値が変化するため、企業も個人も財布の紐を閉めてしまい「需要側」の冷え込みで景気が悪化します。
この場合は、金融システムの回復に伴って企業や個人の投資・消費マインドが上昇すれば経済回復に繋がる、と考えられます。

しかし、感染症の場合、人と人との接触が避けられた結果、モノを作る側、買う側の両方に物理的な障壁が生まれるとしています。
これでは、片方だけが回復したところで経済が大きく回復するとは言い切れません。
結局のところ、人と人との接触あるいは非接触の中での生産・消費活動の中でこれまで同様の経済活動が行われるようにならなければ、回復は難しいということになります。

回復のカギは「感染収束」でしょう。
そのためには治療薬やワクチンが重要な役割を果たしますが、ワクチンの開発は12ヶ月以上かかるというWHOの見通しがあります*5。
また、ワクチンが行き渡るまでにはさらに時間を要すると考えられ、経済回復には年単位の時間が必要という指摘にはこのような背景もあります。

なお、今回のパンデミックの影響については、しばしば「スペイン風邪」がよく例に挙げられます。
被害の大きさが際立つ、歴史的な世界的大流行の事例です。

100年前のことではありますが、スペイン風邪は再流行によって3年間に渡って死者を出し続けました(図9)。

図9 スペイン風邪の死者数((出所「通商白書2020」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2020/pdf/01-01-01.pdf p24

スペイン風邪のパンデミック下でも、休校措置などが取られました。
この時は再流行を繰り返すうちに集団免疫が獲得され、季節性インフルに移行したとされています*6。
しかし今回の新型コロナについてはまだ何の見通しもないまま、再流行の懸念だけが広がっています。

実際、流行の第2波が加速しているとして、フランスでは再びのロックダウン、ドイツも部分的なロックダウンに踏み切っています。

 

経営者は気を緩めず合理化を

現在のところ、経済の回復については「見通しは立っていない」と考えるのが良いでしょう。

よって企業としては使える制度を全て使い、集まるだけの現金を集め、また、雇用に関しては、全体として維持が可能な方向で労使協議をしたいところです。
出口は見えません。長期戦略を立てておく必要があります。

また、「感染症は過去にも存在してきた」のに「対策をできずに倒れた企業は努力不足」という厳しい指摘もあります。

最近は「年が開ければ世の中も変わってくる」という楽観的な声をよく聞きますが、日本でも感染者が大幅に減少しているわけではありません。
また、極力非接触、といった日常が定着していくことは間違いなさそうです。

これを機に、業務のあり方を抜本的に変えるきっかけにすることが求められるでしょう。
長期戦に備えて、労使ともに協力をしていく必要がありそうです。

 

 

*1、2、3「一般職業紹介状況(令和2年9月分)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/000687617.pdf p10、p2、p4

*4「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(10月9日現在集計分)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000681841.pdf p2-3

*5「通商白書2020」経済産業省
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2020/pdf/01-01-01.pdf p23

*6「新型インフルエンザ等対策 過去のパンデミックレビュー」内閣府
https://www.cas.go.jp/jp/influenza/kako_02.html

 

<清水 沙矢香>
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。
Twitter:@M6Sayaka

 

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